(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~
続 王女のワガママ・3
「そういうことで、あなたにメイド服を着てもらうことになりました」
そう言ってメリューさんは手をたたく。
……え? 今、メリューさんはなんと言った?
「なんか目を丸くしているようだけれど、何も言わないということは否定しない、ということでいいかしら? こちらも時間が無いのよ。あのメイド長の言い方はとても腹が立って仕方がないけれど、あれでも客だからね。客の言ったことはできる限り従う。それが接客業というものよ」
「だからって、女装をしてまで……!」
「何を言っているんだ、ケイタ。君は卑下しているかもしれないが、存外君の助走姿も悪くないものだと思うぞ? まあ、ケイタがそれでいいというなら否定はしないが」
そういう問題じゃない。
そういう問題ではなくて、もっと何かあるじゃないか。その、女装することで男としてのプライドが崩壊するとかしないとか。そういうことを少しは考えたことがないのだろうか。
「あ、一応言っておくけれどプライドとかそういうの関係ないからね。実際問題、ケイタがいかないとあとは人間以外が残ってしまう結果になる。店では別に私たちが残っていてもいいのだけれど、あのメイド長にケチつけられてミルシア女王陛下がここに来られなくなるのも面倒な話でしょう? 実際、彼女のおかげであの国で仕事ができているわけだし。そう考えると、少しは頑張る必要があるわけだよ。収入も減るからね。減るということは君の給料も減るわけだ。あんまり減ってほしくないだろう? まあ、減ってほしいのならば今回のことも無視してもらって構わないが……」
ほんとうに。
ほんとうに、メリューさんは性格が悪い。
最低で、最悪で、クソッタレで。
俺がそれで否定できないように、理詰めしていく。
「……ほんとうに、メリューさんは性格が悪いですよね」
俺は溜息を吐いて、メリューさんに一歩近付く。
「何を言うかな。頭がいい、と言ってくれないか。そうでもしないとミッションコンプリートできない」
いや、ミッションコンプリート、って……ゲームかなにかじゃないのだから。
でも、きっとそれをメリューさんに言ったとしても結果が変わることは無いのだろうな。
メイド服、か……。
サクラがそれを知ったらどう思うだろう。きっと笑うんだろうな。大声で。指を差して。まだここのことを知られたくないからほかの人に話すことはしないと思うけれど、そうじゃなくてもサクラには知られたくない。
……何てこった、選択肢なんてどこにも存在しないじゃないか……!
そう思うと、俺は心の中で頭を抱えるのだった。
「さあ、二つに一つだよ。メイド服を着て城に向かうか。メイド服を着ることを拒否して、顧客を一つ減らすことになるか。選択すればいい。私は別にどちらでもいいけれど、ケイタのプライドと店の収入、君はどちらを選ぶ?」
――結局、僕には何も選択できる余地が無かった。
僕がもはや敷かれたレールを進むが如く決められたような内容を選択するまで、そう時間はかからなかった。
そう言ってメリューさんは手をたたく。
……え? 今、メリューさんはなんと言った?
「なんか目を丸くしているようだけれど、何も言わないということは否定しない、ということでいいかしら? こちらも時間が無いのよ。あのメイド長の言い方はとても腹が立って仕方がないけれど、あれでも客だからね。客の言ったことはできる限り従う。それが接客業というものよ」
「だからって、女装をしてまで……!」
「何を言っているんだ、ケイタ。君は卑下しているかもしれないが、存外君の助走姿も悪くないものだと思うぞ? まあ、ケイタがそれでいいというなら否定はしないが」
そういう問題じゃない。
そういう問題ではなくて、もっと何かあるじゃないか。その、女装することで男としてのプライドが崩壊するとかしないとか。そういうことを少しは考えたことがないのだろうか。
「あ、一応言っておくけれどプライドとかそういうの関係ないからね。実際問題、ケイタがいかないとあとは人間以外が残ってしまう結果になる。店では別に私たちが残っていてもいいのだけれど、あのメイド長にケチつけられてミルシア女王陛下がここに来られなくなるのも面倒な話でしょう? 実際、彼女のおかげであの国で仕事ができているわけだし。そう考えると、少しは頑張る必要があるわけだよ。収入も減るからね。減るということは君の給料も減るわけだ。あんまり減ってほしくないだろう? まあ、減ってほしいのならば今回のことも無視してもらって構わないが……」
ほんとうに。
ほんとうに、メリューさんは性格が悪い。
最低で、最悪で、クソッタレで。
俺がそれで否定できないように、理詰めしていく。
「……ほんとうに、メリューさんは性格が悪いですよね」
俺は溜息を吐いて、メリューさんに一歩近付く。
「何を言うかな。頭がいい、と言ってくれないか。そうでもしないとミッションコンプリートできない」
いや、ミッションコンプリート、って……ゲームかなにかじゃないのだから。
でも、きっとそれをメリューさんに言ったとしても結果が変わることは無いのだろうな。
メイド服、か……。
サクラがそれを知ったらどう思うだろう。きっと笑うんだろうな。大声で。指を差して。まだここのことを知られたくないからほかの人に話すことはしないと思うけれど、そうじゃなくてもサクラには知られたくない。
……何てこった、選択肢なんてどこにも存在しないじゃないか……!
そう思うと、俺は心の中で頭を抱えるのだった。
「さあ、二つに一つだよ。メイド服を着て城に向かうか。メイド服を着ることを拒否して、顧客を一つ減らすことになるか。選択すればいい。私は別にどちらでもいいけれど、ケイタのプライドと店の収入、君はどちらを選ぶ?」
――結局、僕には何も選択できる余地が無かった。
僕がもはや敷かれたレールを進むが如く決められたような内容を選択するまで、そう時間はかからなかった。
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