(ドラゴン)メイド喫茶にようこそ! ~異世界メイド喫茶、ボルケイノの一日~
占いとラッキーアイテム・後編
「野菜、こんなもんでいいのか?」
メリューさんはそう言いながら俺に短冊状になった野菜の山を見せた。正直そんなに必要とはしないのだが、まあ、別に問題ないだろう。何かで再利用すればいいだけの話だ。
それにしても、ほんとうに量が多い。野菜がてんこ盛りに盛られたその皿だったが、不思議と雑念とした様子は見られない。寧ろ綺麗なグラデーションを描いている、と言ってもいい。そのグラデーションが食べる意欲をそそらせるのだ。たぶん、なんとなく。
火を点けてソースを熱しているため、とっくに店内にソースの香りが充満していた。きっとこの香りの源を断ったにしても暫くは仄かにその香りが残るに違いない。
「むにゅう……。いい香り……」
ほうら、気づけば起きてきた。やっぱり料理の匂いにはかなわないのである。そういうものだ。人間ってものは……。いや、ドラゴンだったな、この場合は。
ティアさんは椅子から飛び降りて俺のほうへとてとてと向かってくる。本を持っているが、その本を抱えている姿はやっぱりどこか幼い。メリューさんが姉で、ティアさんが妹――そういわれても遜色ない気がする。
「流石だな、ケイタ。まさかティアをこんな簡単に起こすことになろうとは」
「褒めるならテレビの占いを褒めてくださいよ。あと、ラッキーアイテムにバーニャカウダを指定した占い師も」
「バーニャカウダ……。ああ、そうか。この大量の野菜は、それにつけるためだったか」
そう言ってメリューさんはバーニャカウダのソースを指さす。そうだ、まさにその通り。バーニャカウダのソースに野菜をディップする。とてもうまい。最高だ。
頷いて、俺はソースを見つめる。そろそろいい感じに温まってきたかな。
そして小さな鍋を、鍋敷きの上に置いて――。
「よし、バーニャカウダの出来上がり――だ」
適当に手に持ったニンジンのスティックをバーニャカウダのソースにつけて――それをそのまま口に放り込んだ。
すぐに口の中にアンチョビの塩気が広がり、ちょっとだけ高級な気分になれる。ほんとうに思うのだが、テレビでバーニャカウダを安易にラッキーアイテムにするのはどうかと思うわけだ。実際問題、バーニャカウダは簡単に食べられるものじゃない。だからこそ、そう宣伝しているのかもしれないけれど。テレビってのはそういうものだ。
ああ、美味い。アンチョビの塩味と野菜独自の風味が喧嘩しない程度に混ざり合って、ちょうどいい感じになる。とても素晴らしいと思う。やっぱり食事は幸せになれる。いいことだ。
気づけばティアさんもメリューさんも一緒に、三人でバーニャカウダを食べていた。あんなにたくさんあった野菜スティックも無くなっていたし、アンチョビソースも無くなっていた。
「……ふう、これはなかなか美味かったな。ここのメニューに加えてもいいくらいだ」
「まじか」
どうやらメリューさんにとって、バーニャカウダはだいぶお気に入りの部類に入ったらしい。
「まあ、作るのは君だけどね、ケイタ?」
……まじかよ。
どうやら最後までハッピーとはいかないようだ――そう思って、俺は小さく溜息を吐いた。
メリューさんはそう言いながら俺に短冊状になった野菜の山を見せた。正直そんなに必要とはしないのだが、まあ、別に問題ないだろう。何かで再利用すればいいだけの話だ。
それにしても、ほんとうに量が多い。野菜がてんこ盛りに盛られたその皿だったが、不思議と雑念とした様子は見られない。寧ろ綺麗なグラデーションを描いている、と言ってもいい。そのグラデーションが食べる意欲をそそらせるのだ。たぶん、なんとなく。
火を点けてソースを熱しているため、とっくに店内にソースの香りが充満していた。きっとこの香りの源を断ったにしても暫くは仄かにその香りが残るに違いない。
「むにゅう……。いい香り……」
ほうら、気づけば起きてきた。やっぱり料理の匂いにはかなわないのである。そういうものだ。人間ってものは……。いや、ドラゴンだったな、この場合は。
ティアさんは椅子から飛び降りて俺のほうへとてとてと向かってくる。本を持っているが、その本を抱えている姿はやっぱりどこか幼い。メリューさんが姉で、ティアさんが妹――そういわれても遜色ない気がする。
「流石だな、ケイタ。まさかティアをこんな簡単に起こすことになろうとは」
「褒めるならテレビの占いを褒めてくださいよ。あと、ラッキーアイテムにバーニャカウダを指定した占い師も」
「バーニャカウダ……。ああ、そうか。この大量の野菜は、それにつけるためだったか」
そう言ってメリューさんはバーニャカウダのソースを指さす。そうだ、まさにその通り。バーニャカウダのソースに野菜をディップする。とてもうまい。最高だ。
頷いて、俺はソースを見つめる。そろそろいい感じに温まってきたかな。
そして小さな鍋を、鍋敷きの上に置いて――。
「よし、バーニャカウダの出来上がり――だ」
適当に手に持ったニンジンのスティックをバーニャカウダのソースにつけて――それをそのまま口に放り込んだ。
すぐに口の中にアンチョビの塩気が広がり、ちょっとだけ高級な気分になれる。ほんとうに思うのだが、テレビでバーニャカウダを安易にラッキーアイテムにするのはどうかと思うわけだ。実際問題、バーニャカウダは簡単に食べられるものじゃない。だからこそ、そう宣伝しているのかもしれないけれど。テレビってのはそういうものだ。
ああ、美味い。アンチョビの塩味と野菜独自の風味が喧嘩しない程度に混ざり合って、ちょうどいい感じになる。とても素晴らしいと思う。やっぱり食事は幸せになれる。いいことだ。
気づけばティアさんもメリューさんも一緒に、三人でバーニャカウダを食べていた。あんなにたくさんあった野菜スティックも無くなっていたし、アンチョビソースも無くなっていた。
「……ふう、これはなかなか美味かったな。ここのメニューに加えてもいいくらいだ」
「まじか」
どうやらメリューさんにとって、バーニャカウダはだいぶお気に入りの部類に入ったらしい。
「まあ、作るのは君だけどね、ケイタ?」
……まじかよ。
どうやら最後までハッピーとはいかないようだ――そう思って、俺は小さく溜息を吐いた。
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