転生貴族の異世界冒険録~自重を知らない神々の使徒~
第十話 皇太子との会談
セトの発言にログシアは顔を顰める。
睨みつけるような視線を送るが、セトは全く動じていなかった。セトとしてみたらカインと敵対する方が恐怖でしかない。
「我が領地では何があろうと戦争は行わないと、貴族一同すでに決定しております。皇太子殿下の意向があったとしてもそれは覆らないでしょう」
セトも引く気がなく、真剣な表情でログシアから視線を外さない。
「……わたしの意向であったとしてもか?」
「はい、言葉を覆す気はありませんーー魔族国全体を敵対したとしても」
セトの言葉にログシアは喉を鳴らす。今までセトは皇太子に対して反対意見を通したことはなかった。
しかし絶対に意見を曲げず、視線もはずなさいセトにログシアが折れた。
視線を外し、大きなため息を吐く。
「……セト殿の意見はわかった。戦争を起こしたら隣にいるカイン殿との友誼が壊れるからであろう。それ程に固いのだな」
「いえ、わたしが言いたい事は違います。人族との戦争には反対しません。わたしはーーカイン殿と敵対することは絶対にしないと言っているのです」
「っ!? そこまで……。なぜにそこまでカイン殿に拘る必要があるのだ。貴族の当主とはいえ、まだ子供であろう」
ログシアの言葉に、セトは大きくため息を吐き、一度カインに視線を送ってから、再度ログシアに向き直す。
「カイン殿と敵対した事態で、すでに魔族の――敗北は決まっているからです」
その言葉と同時にログシアは激昂し、拳をテーブルに叩きつけて立ち上がった。
「その子供一人だけで、我が魔帝国が負けると言うのかっ! 言ってみろ、セトよっ!」
「…………はい、その通りです。皇太子殿下」
セトはカインの実力を知っている。いや、カインの全部の力を知っているとは思っていない。
しかし、自分が知っている範囲だけであったとしても、魔王である自分よりも、いや、どの魔族が相手をしても負けないと思っている。
それは以前に、カインから話を聞いていたからだった。
邪神の欠片がこの世界に散らばって封印されていて、その力に飲み込まれた者は強大な力を持つが、制御が出来ず破壊に走る。
魔物であっても人であったとしても……。
人族の国で同じようなことがあれば、カインでも対応できるが、魔族の国で同じようなことがあった場合、カインでは駆けつけることができない。
だからカインは友誼を結んでいるセトだけには、そのことを話して何かあったら呼ぶように言われていた。
流石のセトもその言葉には疑問に残っていたが、カインはセトに対して自分のステータスを明かしたのだ。
――自分のステータスを明かす行為。
それは人族であっても、魔族であっても本当に信頼のおける相手にしかしないのは常識であった。
セトはカインにステータスを明かされた時、内容に驚いたと同時に――――歓喜の涙を流した。
自分はそれ程までにカインに信用されている事が何よりも嬉しかったという現れだった。
しかも、カインの称号は神の使徒であり、亜神でもある。
その神を相手に敵対するなど、愚としか思っていない。
そこまでしてくれたカインに対し、セトは絶対的信仰を持ち、『友』と言ってくれるカインに敵対することなど、絶対にありえなかった。
全く変わらないセトの表情に、ログシアは折れたかのように力なく席に座り込む。
「――それ程のものなのか、カイン殿は……」
セトは何も語らず静かに頷くだけだった。
「妾も人族との戦争に対して反対させてもらうぞ。もし、戦争を起こすつもりならたとえ兄でも――――その座から引きずり下ろすのじゃ」
セトだけではない、リザベートも反対表明をし、しかも皇太子の座を奪うとまで発言したことに、ログシアは驚きの表情をする。
二人の言葉にログシアもカインがただの貴族ではないと察した。
ぎこちない動きでログシアはカインに視線を送る。
「……カイン殿、正直に答えてほしい。もし、もし人族に戦争をしたらどうなる……?」
ログシアの問いにカインは真剣な表情を浮かべ、口を開いた。
「……人族の国、いや、街に一人でも被害が出たら、全員、お帰りになってもらいます。戻っても――国が残っているかはわかりませんが」
カインは少しだけ誇張して答えた。
大量虐殺など、セトもリザベートも許すはずがないし、カインもするつもりもない。
だが、できないわけではない。
ログシアはカインの発言の真意はわからないが、言い切ったことに緊張からか喉を鳴らした。
「……わかった。わたしの意見だけでは通らないが、その言葉は心に留めておく。これから今後のことを話し合う予定だが、カイン殿もこの城に常駐してもらえると助かる。世話はつけるが、リザ、頼んで良いか」
「えぇ、お兄様、喜んで」
緊張したログシアとは反対に、にっこりとしてリザベートは了承した。
各国の魔王が全て揃うのには数日かかるとのことで、カインは国賓として城へと泊まることになった。
セトはこの街にも屋敷があり、そこに泊まるつもりだったので、カインも同行しようとしたが、国賓として訪れていることに断られることになった。
「さすがに皇太子が国賓として招待しているのに、屋敷などへ連れていけませんよ」
断られて少しショックも受けたが、エスフォート王国の代表で訪れている以上、わがままは言えないと同意した。
しかし、案内された部屋には常にリザベートがおり、カインと共にしていた。
流石に客間へ泊まりたいと言い出すことはなかったが、寝る直前まで居座っていることが多かった。
そして数日が経ち、皇太子を含め各国の魔王が勢ぞろいし、会談が開催されることになった。
コメント
ノベルバユーザー333169
魔族なのに魔力弱いの多すぎない?!
ノベルバユーザー303640
これからも頑張ってください!
スザク
そろそろ爆裂魔法作ろうぜ
白猫
三なのにすぐ女性にダマサれてる
ノベルバユーザー270081
最高です