レジス儚記Ⅰ ~究極の代償《サクリファイス》~
第二章 第五話「丘」
「それじゃあ俺の知ってる最上級魔法を教えるぞ」
「うん」
「言っとくけど、俺に使えてもルナに使えるかはわからないからな」
「わかってるの。それはお互いさまなの。早く早く」
「この手首の魔法は【星霜の途絶】、なんと時属性最上級魔法だ!」
「やっぱり……時属性だったの……」
「やっぱり? ルナは時属性魔法、どこまで使えるんだ?」
「……まだ初級なの。そもそも中級以上の時属性魔法を使える先生がいないから覚えられないの」
「そうか。最上級魔法というのは、その属性を下級から上級まで全て習得した上でしか使えないらしいから、使いたければ時属性の魔法を全部極めなきゃならんぞ」
「わかったの。頑張るの」
「……ちなみに時属性魔法、最上級以外はどんなのがあるんだ?」
「時属性は重力を操る関係の魔法がメインなの。あれ? 陽たんは全部極めたんでしょ?」
「お、おう。確認だ、確認」
「身体を軽くして素早く動けるようにしたり、逆に相手の身体を重くして動けなくしたり。上級だと魔法を跳ね返すシールドを張ったり、お空を飛んだり」
「初級はどこまで?」
「身体を軽くするところまでなの」
「え、じゃあ俺らが落ちてくる時、身体を軽くしてくれればあんな水魔法使わなくてもよかったんじゃないか?」
「……」
「ルナってもしかしてあんまり頭良くな――」
「ルナは天才魔法使いなの!」
ポカポカと陽太を殴るルナディ。
「オホン。で、だ。この魔法は……【星霜の途絶】は、時間をストップできる魔法なのである」
「時を止める魔法なの……?」
「そうだ。俺はこの魔法で時を止めて、ドラゴンを倒したんだぞ」
「空間転移する魔法じゃないの?」
「違うよ? なんだよそのガッカリな表情は!」
「……ううん、なんでもないの。それでもいいから教えてなの」
「とにかく今から一番大事な事を教えるぞ。実はなこの最上級魔法、代償がヤバいんだ」
「何なの?」
「なんと、若返りだ!!」
「……」
「……」
「……どこがヤバいの?」
「えっと、そうだよな……それだけ聞いたら女性が喜ぶただのアンチエイジングだよな。ん? 待てよ、これってディスペルさえ使えれば、歳とっては若返りを繰り返すことで、不老不死になれちゃうんじゃね?」
「不老不死……もしかして陽たん、魔女なの?」
「は? なにそれ? てか俺は男だから、それを言うなら魔男じゃね?」
「噂によると、この世で時属性の最上級魔法を使える人はいない……ただ一人を除いて」
「ただ一人……?」
「うん、それは幽世で何百年も生きている魔女ただ一人だけって噂だったの」
「かくりよ? ってなに?」
「ルナたちが生きているこの世界が現世、裏の世界が幽世。昔お母さんが聞かせてくれたお伽噺」
「そうなのか。そんな魔女がいるなら会ってみたいな」
「とにかく、ルナにもその使い方を教えて?」
「ああ、発動条件はな、両手を翳して今から言う星霜の詩歌を唱えるんだ――」
こうして陽太はルナに詩歌を教えてやった。
時属性を極めていないのでまだ使うことはできないが、いずれルナもその魔女の一人となるのであろう。
勝手にこんなことをしてよかったのだろうか。
まあでも、命を助けてもらったんだ。
それぐらいの礼には値するだろ。
「でも、あんまり長時間使うなよ、鼻クソになっちまうからな」
「うん。使うのは一瞬だけでいいの。紋章さえ手に入れば――」
「どうゆうことだ?」
「あっ……ううん、なんでもないの」
「ルナ、なんか隠してないか?」
「……じゃ、今度はルナの番なの。水属性最上級魔法なの」
――話逸らしたなこいつ。あとで絶対聞き出してやるからな。
「陽たんは水属性、どこまで使えるの?」
「全部ばっちりだ!」
グーサインを見せつける陽太。
本当は全然使えないが、条件はクリアしているから。
「すごいの! ここじゃ危険だから、広いとこに行くの」
そう言ったルナディの後ろについて、昨日の丘まで移動する陽太。
不時着した例の丘だ。
その間にルナディのことを聞いた。
彼女は【精霊族】という種族らしい。
確かによく見ると、長くはないが耳の先が尖っている。
小説とかによく出てくるエルフみたいなもんだろう。
エルフって言ったらもっとナイスバディで色っぽいイメージだが。
ルナディはぺったんこのロリっ子だ。
「どうしたの?」
「や、可愛いワンピースだな」
「えへへ、お母さんに作ってもらったの」
うむ、可愛い。
娘のように愛でたくなる感じだが。
やはり世界は広い。
「じゃあ、ここでやるの」
昨日ルナディの魔法で出来た湖のほとりに立つ二人。
「水属性最上級魔法というのは、正確には水霊と契約できる魔法のことなの」
「水霊?」
「うん。どの水霊と契約できるかはその術者の魔力によって違うけれど、だいたいどれも効果は同じ、洪水が起きる感じの魔法を使えるようになるの。一日一回だけその精霊の力を借りることができるの。ルナの場合はセイレーンと契約して【水妖の一涙】を放てるようになったの」
「なるほど。して、その代償は? 契約するのに何か代償がいるんだろ?」
「代償は……二度と泳げなくなるの」
「え、それだけ?」
「それだけ」
「なんだ、別に大して不自由じゃなさそうじゃん」
「でも自分で放った【水妖の一涙】でさえ溺れるの。水の中では力が入らなくなるの」
「あ、なるほど……顔が濡れて力が出ないというパン星人みたいなやつか」
「使いどころが難しいの」
「とりあえず泳げる奴と一緒にいる時しか使えなさそうだな」
しかし泳げないとなると、女湯の夢はここで断絶される訳だ。
アニメでよくある、温泉やプールでのキャッキャウフフ回を捨てることになるが、いいのか?
非常に名残惜しくなってきた。
いや、致し方ないか……今、力を手に入れないで強敵が来て死んだら、絶対後悔するだろうし。
そもそも温泉があるのかもわからない。
そんなことで悩んでいる場合ではないな。
「契約する……?」
「……ああ。も、も、もちろん」
「うん」
「言っとくけど、俺に使えてもルナに使えるかはわからないからな」
「わかってるの。それはお互いさまなの。早く早く」
「この手首の魔法は【星霜の途絶】、なんと時属性最上級魔法だ!」
「やっぱり……時属性だったの……」
「やっぱり? ルナは時属性魔法、どこまで使えるんだ?」
「……まだ初級なの。そもそも中級以上の時属性魔法を使える先生がいないから覚えられないの」
「そうか。最上級魔法というのは、その属性を下級から上級まで全て習得した上でしか使えないらしいから、使いたければ時属性の魔法を全部極めなきゃならんぞ」
「わかったの。頑張るの」
「……ちなみに時属性魔法、最上級以外はどんなのがあるんだ?」
「時属性は重力を操る関係の魔法がメインなの。あれ? 陽たんは全部極めたんでしょ?」
「お、おう。確認だ、確認」
「身体を軽くして素早く動けるようにしたり、逆に相手の身体を重くして動けなくしたり。上級だと魔法を跳ね返すシールドを張ったり、お空を飛んだり」
「初級はどこまで?」
「身体を軽くするところまでなの」
「え、じゃあ俺らが落ちてくる時、身体を軽くしてくれればあんな水魔法使わなくてもよかったんじゃないか?」
「……」
「ルナってもしかしてあんまり頭良くな――」
「ルナは天才魔法使いなの!」
ポカポカと陽太を殴るルナディ。
「オホン。で、だ。この魔法は……【星霜の途絶】は、時間をストップできる魔法なのである」
「時を止める魔法なの……?」
「そうだ。俺はこの魔法で時を止めて、ドラゴンを倒したんだぞ」
「空間転移する魔法じゃないの?」
「違うよ? なんだよそのガッカリな表情は!」
「……ううん、なんでもないの。それでもいいから教えてなの」
「とにかく今から一番大事な事を教えるぞ。実はなこの最上級魔法、代償がヤバいんだ」
「何なの?」
「なんと、若返りだ!!」
「……」
「……」
「……どこがヤバいの?」
「えっと、そうだよな……それだけ聞いたら女性が喜ぶただのアンチエイジングだよな。ん? 待てよ、これってディスペルさえ使えれば、歳とっては若返りを繰り返すことで、不老不死になれちゃうんじゃね?」
「不老不死……もしかして陽たん、魔女なの?」
「は? なにそれ? てか俺は男だから、それを言うなら魔男じゃね?」
「噂によると、この世で時属性の最上級魔法を使える人はいない……ただ一人を除いて」
「ただ一人……?」
「うん、それは幽世で何百年も生きている魔女ただ一人だけって噂だったの」
「かくりよ? ってなに?」
「ルナたちが生きているこの世界が現世、裏の世界が幽世。昔お母さんが聞かせてくれたお伽噺」
「そうなのか。そんな魔女がいるなら会ってみたいな」
「とにかく、ルナにもその使い方を教えて?」
「ああ、発動条件はな、両手を翳して今から言う星霜の詩歌を唱えるんだ――」
こうして陽太はルナに詩歌を教えてやった。
時属性を極めていないのでまだ使うことはできないが、いずれルナもその魔女の一人となるのであろう。
勝手にこんなことをしてよかったのだろうか。
まあでも、命を助けてもらったんだ。
それぐらいの礼には値するだろ。
「でも、あんまり長時間使うなよ、鼻クソになっちまうからな」
「うん。使うのは一瞬だけでいいの。紋章さえ手に入れば――」
「どうゆうことだ?」
「あっ……ううん、なんでもないの」
「ルナ、なんか隠してないか?」
「……じゃ、今度はルナの番なの。水属性最上級魔法なの」
――話逸らしたなこいつ。あとで絶対聞き出してやるからな。
「陽たんは水属性、どこまで使えるの?」
「全部ばっちりだ!」
グーサインを見せつける陽太。
本当は全然使えないが、条件はクリアしているから。
「すごいの! ここじゃ危険だから、広いとこに行くの」
そう言ったルナディの後ろについて、昨日の丘まで移動する陽太。
不時着した例の丘だ。
その間にルナディのことを聞いた。
彼女は【精霊族】という種族らしい。
確かによく見ると、長くはないが耳の先が尖っている。
小説とかによく出てくるエルフみたいなもんだろう。
エルフって言ったらもっとナイスバディで色っぽいイメージだが。
ルナディはぺったんこのロリっ子だ。
「どうしたの?」
「や、可愛いワンピースだな」
「えへへ、お母さんに作ってもらったの」
うむ、可愛い。
娘のように愛でたくなる感じだが。
やはり世界は広い。
「じゃあ、ここでやるの」
昨日ルナディの魔法で出来た湖のほとりに立つ二人。
「水属性最上級魔法というのは、正確には水霊と契約できる魔法のことなの」
「水霊?」
「うん。どの水霊と契約できるかはその術者の魔力によって違うけれど、だいたいどれも効果は同じ、洪水が起きる感じの魔法を使えるようになるの。一日一回だけその精霊の力を借りることができるの。ルナの場合はセイレーンと契約して【水妖の一涙】を放てるようになったの」
「なるほど。して、その代償は? 契約するのに何か代償がいるんだろ?」
「代償は……二度と泳げなくなるの」
「え、それだけ?」
「それだけ」
「なんだ、別に大して不自由じゃなさそうじゃん」
「でも自分で放った【水妖の一涙】でさえ溺れるの。水の中では力が入らなくなるの」
「あ、なるほど……顔が濡れて力が出ないというパン星人みたいなやつか」
「使いどころが難しいの」
「とりあえず泳げる奴と一緒にいる時しか使えなさそうだな」
しかし泳げないとなると、女湯の夢はここで断絶される訳だ。
アニメでよくある、温泉やプールでのキャッキャウフフ回を捨てることになるが、いいのか?
非常に名残惜しくなってきた。
いや、致し方ないか……今、力を手に入れないで強敵が来て死んだら、絶対後悔するだろうし。
そもそも温泉があるのかもわからない。
そんなことで悩んでいる場合ではないな。
「契約する……?」
「……ああ。も、も、もちろん」
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