レジス儚記Ⅰ ~究極の代償《サクリファイス》~
第二章 第三話「転入」
「えー、以上を持ちまして、始業式を終わります。続きましては、今年度から皆さんと一緒に勉強することになった転入生を紹介します――」
入学と入寮の手続きを済ませ、ハリルとルームメイトになった翌朝、陽太とアメリアは全校集会に参加していた。
学校付属の闘技場のようなところで行われており、観客席から少し見上げたところに、全体を見渡せる演壇がある。
そこで陽太たち転入生が紹介される予定なのだ。
さっきまでは校長先生が立っており、貧血で倒れる生徒が勃発していた。
――どこの世界も校長の話は決まって長い。
「では、転入生の皆さん。こちらに」
呼ばれて登壇する陽太とアメリア。
他にも数人の転入生がいて、一緒に壇上へ立った。
全校生徒が集まっている――とはいえ、見渡してもざっと七、八百人ぐらいしかいないのではないだろうか。
小中高一貫にしては思っていたより少ないんだな。
まあ、ハリルから聞いた話によると、この世界での学校というのは、あくまで魔法や武術を学ぶところだそうで、算数や国語を習うことはないそう。
つまり研究や戦闘、それらを生業として生きていくような者以外は、日常生活で必要な下級魔法さえ使うことができるなら通う必要がないということだ。
元の世界では必要性を感じなかったが、それこそ歴史の授業ぐらいあってほしかった。
先頭の子から紹介され、アメリアの番がくる。
といっても特に何をするわけでもなく、名前とクラスを紹介された後、一歩前へ出て一礼するだけだ。
「――アメリア・アイゼンハートさん。中等部一年、魔法クラスです」
一歩前へ出て、ぺこりと一礼するアメリア。
すると下の生徒たちにざわめきが起こった。
――なんだなんだ?
「かわいー!」
「アメリアちゃーん!」
「彼氏いるんですかー!?」
そんな声が飛び交う。
アメリアは恥ずかしいのか真っ赤な顔になり、陽太を潤んだ目で見つめ、助けを求めている様子。
――いきなりモテモテかよ。チッ、うらやましい。
なぜかアメリアに嫉妬する陽太。
そんなことを考えている間に、陽太の番がやってきた。
「――陽太・アイゼンハートくん。小等部四年、武術クラスです」
――あれ? ファミリーネームが……俺いつ養子になったんだろう。
しかも紹介されて初めて知ったのだが、どうやら陽太は武術クラスに転入することになっているようだ。
魔法が使えないことになっているからであろうか。
――なんかいろいろと流れるままに身を任せてるけど、大丈夫かな。
少し心配になる陽太。
天族は良い人たちだけど、天然族だからなあ。
そんなことを考えながら、一歩前へ出て一礼する。
「キャー!」
「かっこいー!!」
「陽太くんだって!」
「要チェックね!」
またそんな声が飛び交う。
――なんじゃこりゃ。
ハリルといい、どうなってんだ。
――みんなして冴えない俺を騙そうって魂胆だな。
まあ、モテ期の一度もなかった残念な陽太、疑心暗鬼になるのも仕方ないことだ。
そんなこんなで全校集会は終わり、それぞれのクラスへと向かう。
陽太は武術クラスの四年生。
教室のドアを開けてみると、中には四十人ぐらいの席があった。
そして多種多様な子供たちが騒いでいる。
ジャイ○ンっぽいドワーフ族から、ケモミミ娘まで。
その中にはルームメイト、ハリルの姿もあった。
そうか、こいつは戦闘種族って言ってたな。
ドラゴンをも倒す竜族だった。
武術クラスにいて当然だ。
すると、陽太を見つけたハリルが駆け寄ってくる。
「どうした陽太、目を点にして」
「いやあ、まるで小学生になった気分だなと思って……」
「いや、普通に小学生だから。つかお前、あのアメリアって人、親戚か!?」
「ああ、姉……みたいなもんかな」
転入生紹介を見ていたようだ。
こいつもアメリアのファンとか言い出すんじゃなかろうか。
こんなイケメン野郎、早速【悪い虫】候補じゃないか。
「やっぱな! ファミリーネーム一緒だからもしやと思ったんだよ! 姉ちゃんかあ! いいなあ……」
「よく気付いたな」
「だって、めちゃめちゃ美人だぜ、アメリアさん。この弟にしてあの姉ありってかんじだな!」
「つかなんで俺までキャーキャー言われてるわけ?」
「そりゃそうだろ! 漆黒の髪に漆黒の瞳、そんなのこの大陸じゃあめったにいないからな! いくら冴えない顔でもな!」
「なるほど……髪色ですか。喜んでいいのやら悪いのやら。むしろ青とかピンクのほうが衝撃的なわけで」
――そういやこっちの世界に来て、黒髪の人を一度も見かけたことがない。
変に目立ちたくはないんだけどな。
でもちょっとモテるのは嬉しいかも。
いやむしろモテまくりたいけど。
ハーレム築いて、ケモ耳とかもふもふしながら、おっぱいに埋もれて生活してみたい。
ぐへへ――
「おい、よだれ垂らしてどうしたんだ……」
「じゅるり」
「てか、アメリアさん今度紹介してな? な?」
「無理」
「は? なんで!?」
「なんでも」
「ケチ! いいよオレから会いに行くもんね!」
「アメリア、可愛いけどめちゃめちゃ天然だよ?」
「あー! やっぱり陽太も可愛いって思ってんだな! だめだぞ姉弟なんだから! きんしんそうか――」
「待て待て! 子供がそんな言葉を言っちゃいかん! てか、知ってちゃいかん! 全く近頃の若者は!」
「いやお前と同い年だけど」
「と、とにかく、アメリアのことは姉ちゃんだけど娘みたく思ってるの! アメリアは俺が守る! 娘はやらん!」
「お前、なんかたまにオヤジくせえこと言うよな……」
――仕方ないじゃないか、子供の気持ちなんて忘れたわ。
そう心の中で呟く陽太。
クラスメイトを見ても、ガキんちょパワー炸裂で暴れてるし。
初日にして、溶け込む自信がなくなっていたのであった。
今日は始業式だったので、クラスでは担任の紹介と明日からの時間割発表などだけで短縮授業。
ちなみに後から聞いた話、魔法クラスは一クラスに二十人ぐらいしかいないそうな。
武術クラスに比べて半分しか生徒がいないらしい。
やはり魔力となると、努力だけでなんとかなるものでもないからだろう。
その日の放課後、ハリルが一緒に遊びに行こうと誘ってくれたが、やることがあるのでと陽太は断った。
そう、陽太には学校に来た目的がある。
元の世界に戻るための情報収集だ。
召喚に応じた人族は、この世界で果たすべき使命を全うすれば帰還できると聞いている。
アメリアを助けるために召喚された陽太。
だが、街を襲うドラゴンを倒したのに帰れなかった。
ということはまだ、アメリアを脅かす抜本的な何かを解決できていないということなんだろう。
昨日のハリルの話では、モンスター全体が狂暴化していると言っていたな。
それも関係しているような気がしてならない。
ハリルの親父さんの返答も待ちながら、他の人にも当たってみようと思う。
あとは陽太が使える魔法のこと。
最上級魔法についてだ。
時属性の最上級魔法はもう使えない。
つまり、召喚理由であるアメリアを脅かす存在、それがドラゴンよりももっと強大なものであった場合、戦う術がないのだ。
最上級以外はどれだけ特訓しても使えないため、武術クラスに入ったことは良かったのかもしれない。
しかし、今さら武術を特訓したところでしれているだろう。
陽太はあくまで、自分が最上級魔法を使う時の、補助的な要素として武術を習うだけでいい、そう考えている。
すなわち、今は他の属性の最上級魔法、それがどういうものかを知ること。
使える能力は授かっているので、おそらく適当にやっても何らかの最上級魔法は使えるのだろう。
だが、使い方だけでなく、その代償についてよく知っておかないと、時属性の二の舞になっては元も子もない。
直接教えてもらえるのが一番だから、魔法クラスに入ったアメリアには、最上級魔法が使える先生を見つけといてもらえるよう頼んである。
今日はまずこの世界のことをもっと知るためにも、図書室で情報収集してみよう、そう陽太は判断した。
入学と入寮の手続きを済ませ、ハリルとルームメイトになった翌朝、陽太とアメリアは全校集会に参加していた。
学校付属の闘技場のようなところで行われており、観客席から少し見上げたところに、全体を見渡せる演壇がある。
そこで陽太たち転入生が紹介される予定なのだ。
さっきまでは校長先生が立っており、貧血で倒れる生徒が勃発していた。
――どこの世界も校長の話は決まって長い。
「では、転入生の皆さん。こちらに」
呼ばれて登壇する陽太とアメリア。
他にも数人の転入生がいて、一緒に壇上へ立った。
全校生徒が集まっている――とはいえ、見渡してもざっと七、八百人ぐらいしかいないのではないだろうか。
小中高一貫にしては思っていたより少ないんだな。
まあ、ハリルから聞いた話によると、この世界での学校というのは、あくまで魔法や武術を学ぶところだそうで、算数や国語を習うことはないそう。
つまり研究や戦闘、それらを生業として生きていくような者以外は、日常生活で必要な下級魔法さえ使うことができるなら通う必要がないということだ。
元の世界では必要性を感じなかったが、それこそ歴史の授業ぐらいあってほしかった。
先頭の子から紹介され、アメリアの番がくる。
といっても特に何をするわけでもなく、名前とクラスを紹介された後、一歩前へ出て一礼するだけだ。
「――アメリア・アイゼンハートさん。中等部一年、魔法クラスです」
一歩前へ出て、ぺこりと一礼するアメリア。
すると下の生徒たちにざわめきが起こった。
――なんだなんだ?
「かわいー!」
「アメリアちゃーん!」
「彼氏いるんですかー!?」
そんな声が飛び交う。
アメリアは恥ずかしいのか真っ赤な顔になり、陽太を潤んだ目で見つめ、助けを求めている様子。
――いきなりモテモテかよ。チッ、うらやましい。
なぜかアメリアに嫉妬する陽太。
そんなことを考えている間に、陽太の番がやってきた。
「――陽太・アイゼンハートくん。小等部四年、武術クラスです」
――あれ? ファミリーネームが……俺いつ養子になったんだろう。
しかも紹介されて初めて知ったのだが、どうやら陽太は武術クラスに転入することになっているようだ。
魔法が使えないことになっているからであろうか。
――なんかいろいろと流れるままに身を任せてるけど、大丈夫かな。
少し心配になる陽太。
天族は良い人たちだけど、天然族だからなあ。
そんなことを考えながら、一歩前へ出て一礼する。
「キャー!」
「かっこいー!!」
「陽太くんだって!」
「要チェックね!」
またそんな声が飛び交う。
――なんじゃこりゃ。
ハリルといい、どうなってんだ。
――みんなして冴えない俺を騙そうって魂胆だな。
まあ、モテ期の一度もなかった残念な陽太、疑心暗鬼になるのも仕方ないことだ。
そんなこんなで全校集会は終わり、それぞれのクラスへと向かう。
陽太は武術クラスの四年生。
教室のドアを開けてみると、中には四十人ぐらいの席があった。
そして多種多様な子供たちが騒いでいる。
ジャイ○ンっぽいドワーフ族から、ケモミミ娘まで。
その中にはルームメイト、ハリルの姿もあった。
そうか、こいつは戦闘種族って言ってたな。
ドラゴンをも倒す竜族だった。
武術クラスにいて当然だ。
すると、陽太を見つけたハリルが駆け寄ってくる。
「どうした陽太、目を点にして」
「いやあ、まるで小学生になった気分だなと思って……」
「いや、普通に小学生だから。つかお前、あのアメリアって人、親戚か!?」
「ああ、姉……みたいなもんかな」
転入生紹介を見ていたようだ。
こいつもアメリアのファンとか言い出すんじゃなかろうか。
こんなイケメン野郎、早速【悪い虫】候補じゃないか。
「やっぱな! ファミリーネーム一緒だからもしやと思ったんだよ! 姉ちゃんかあ! いいなあ……」
「よく気付いたな」
「だって、めちゃめちゃ美人だぜ、アメリアさん。この弟にしてあの姉ありってかんじだな!」
「つかなんで俺までキャーキャー言われてるわけ?」
「そりゃそうだろ! 漆黒の髪に漆黒の瞳、そんなのこの大陸じゃあめったにいないからな! いくら冴えない顔でもな!」
「なるほど……髪色ですか。喜んでいいのやら悪いのやら。むしろ青とかピンクのほうが衝撃的なわけで」
――そういやこっちの世界に来て、黒髪の人を一度も見かけたことがない。
変に目立ちたくはないんだけどな。
でもちょっとモテるのは嬉しいかも。
いやむしろモテまくりたいけど。
ハーレム築いて、ケモ耳とかもふもふしながら、おっぱいに埋もれて生活してみたい。
ぐへへ――
「おい、よだれ垂らしてどうしたんだ……」
「じゅるり」
「てか、アメリアさん今度紹介してな? な?」
「無理」
「は? なんで!?」
「なんでも」
「ケチ! いいよオレから会いに行くもんね!」
「アメリア、可愛いけどめちゃめちゃ天然だよ?」
「あー! やっぱり陽太も可愛いって思ってんだな! だめだぞ姉弟なんだから! きんしんそうか――」
「待て待て! 子供がそんな言葉を言っちゃいかん! てか、知ってちゃいかん! 全く近頃の若者は!」
「いやお前と同い年だけど」
「と、とにかく、アメリアのことは姉ちゃんだけど娘みたく思ってるの! アメリアは俺が守る! 娘はやらん!」
「お前、なんかたまにオヤジくせえこと言うよな……」
――仕方ないじゃないか、子供の気持ちなんて忘れたわ。
そう心の中で呟く陽太。
クラスメイトを見ても、ガキんちょパワー炸裂で暴れてるし。
初日にして、溶け込む自信がなくなっていたのであった。
今日は始業式だったので、クラスでは担任の紹介と明日からの時間割発表などだけで短縮授業。
ちなみに後から聞いた話、魔法クラスは一クラスに二十人ぐらいしかいないそうな。
武術クラスに比べて半分しか生徒がいないらしい。
やはり魔力となると、努力だけでなんとかなるものでもないからだろう。
その日の放課後、ハリルが一緒に遊びに行こうと誘ってくれたが、やることがあるのでと陽太は断った。
そう、陽太には学校に来た目的がある。
元の世界に戻るための情報収集だ。
召喚に応じた人族は、この世界で果たすべき使命を全うすれば帰還できると聞いている。
アメリアを助けるために召喚された陽太。
だが、街を襲うドラゴンを倒したのに帰れなかった。
ということはまだ、アメリアを脅かす抜本的な何かを解決できていないということなんだろう。
昨日のハリルの話では、モンスター全体が狂暴化していると言っていたな。
それも関係しているような気がしてならない。
ハリルの親父さんの返答も待ちながら、他の人にも当たってみようと思う。
あとは陽太が使える魔法のこと。
最上級魔法についてだ。
時属性の最上級魔法はもう使えない。
つまり、召喚理由であるアメリアを脅かす存在、それがドラゴンよりももっと強大なものであった場合、戦う術がないのだ。
最上級以外はどれだけ特訓しても使えないため、武術クラスに入ったことは良かったのかもしれない。
しかし、今さら武術を特訓したところでしれているだろう。
陽太はあくまで、自分が最上級魔法を使う時の、補助的な要素として武術を習うだけでいい、そう考えている。
すなわち、今は他の属性の最上級魔法、それがどういうものかを知ること。
使える能力は授かっているので、おそらく適当にやっても何らかの最上級魔法は使えるのだろう。
だが、使い方だけでなく、その代償についてよく知っておかないと、時属性の二の舞になっては元も子もない。
直接教えてもらえるのが一番だから、魔法クラスに入ったアメリアには、最上級魔法が使える先生を見つけといてもらえるよう頼んである。
今日はまずこの世界のことをもっと知るためにも、図書室で情報収集してみよう、そう陽太は判断した。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
107
-
-
381
-
-
3087
-
-
89
-
-
4
-
-
11128
-
-
159
-
-
1512
-
-
17
コメント