初心者がVRMMOをやります(仮)
不安
「……いっくん、りりちゃん」
「美玖ちゃん、どうしたの?」
「……この格好は何?」
夏場になり、カナリアが少しばかり不安定になっていると聞いたイッセンとリリアーヌが用意した服を用意したのだが。
「え? アリスだけど」
さらりとイッセンが答える。
「ウサギと言えばこれだろ!」というのがイッセンとリリアーヌの言い分らしい。
ちなみにユニが着用しているベストは黒兎の毛皮で出来ている。そのため、ぬいぐるみになっても、騎乗タイプになっても破れたりしないというすぐれものだ。勿論アルテミスも、そのベストを着用中である。
「最近美玖を連れてくとき、ユニが『急いで~~』とか言うからさ。つい……」
「『つい』じゃない! 我は毛皮が服である!!」
「美玖ちゃんとのお揃いは嫌と見た」
「そんなわけない!」
「じゃあいいじゃん」
「うむ!」
あっさりとユニが陥落し、ふわふわの服をカナリアが着る羽目になったのだ。
「うふふふ~~。カナリアちゃんは現実でも、ゲーム内でも可愛い服の似合うこと」
手をワキワキしながら言うのは、スカーレットである。
「トトさん! ここに変質者が!」
「急いで隔離!」
「……隔離するなら、晴香の他に、ジャッジ君、ディス君もだね」
ジャッジとディスカスの言葉にトトが返していた。
……とどのつまりは、相も変わらず変質者ホイホイとでもいうべきか。
事件から間もなく一年である。
カナリアは平気そうにゲームにログインしているが、ヘッドギアを見るだけで以前以上に怯えているのをジャッジは知っている。
そして、こうやって皆と和気藹々する時ですら、そのあとの記憶を呼び起こすことも。
「……くぞっ」
勉強がなければカナリアはログインしないだろう。
「ディッチさん」
「どうした? ジャッジ」
「しばらく、ログインさせない」
それがジャッジの導き出した「答え」だった。
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