初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

ディッチには分からない現象

 ふらりと戻ってきたジャッジを締めあげて、この話を聞いたディッチは脱力した。

 ある意味「カナリア君、また君か! いい加減クリスの関係者はカエルムうちに絡むな」と言いたい気分だ。
「そのお話からすると、他の方の家族は元に戻らないんですか?」
 そもそも、他の連中がモンスターを「家族」と見做していないはずだ。
「某育成ゲームだと、苦難を乗り越えれば再度仲良くなる。別のゲームだと、現状暴れているやつらを討伐すると、二度とどのモンスターもテイム……美玖の言うところの『家族』にはなれない。それどころかプレイヤーの姿が見えただけで、バーサク化して襲ってくる」
「……むぅ」
「美玖ちゃんには関係ない話だと思うよ」
「喫茶店で暴れて、お客さん怪我しても?」
「……しばらくお店に出すのやめようよ。大丈夫な人たち向けに開放してさ」
 暴れることにより、カナリアが責任を負うことになるかもしれないし、ニーニャたちも傷つく。そう説明すればカナリアはしょんぼりとしながらも諦めてくれた。
「問題は、素材採取どうするかだよな」
 うんうん、全員が頷いた。

 捕獲出来ない、討伐クエ以外受けられない、捕獲でしか手に入らないアイテムが。そんな書き込みであふれるスレッド。その中にはカエルムに対する批判まであったりする。
「己で考えぬ阿呆どもが」
 いつの間にいた!? という突っ込みはまたしても入ってしまうが、そこにいたのはクィーンとアントニーだ。
「信頼関係がマイナスだからこそ、襲われるのであろうよ。しばらくはマイナスから少しでも上方修正すればよいだけではないか」
「……そう簡単に言いますけどね」
 クリスの関係者が組んだプログラムということで、簡単なゲームのようにあげられるわけがない。
「セバスチャン」
「クィーン様、如何なさいました?」
「しばらく倉庫の在庫を使用してモンスター用の飯を重点的に作れ」
「既にやらせてますよ」
 それでもバーサク状態となったモンスターには効かない。
「料理教室でもやるとするかの」
 どうしてそうなる!? ディッチの突っ込みはまるっと無視された。

 後日何とか聞き出したものの、「食はすべての基本なり」それだけだった。


 結局、一部そこまで騎獣等を手ひどく扱っていなかったプレイヤーは、その拙い手料理で何とか元に戻ったらしい。
 ディッチには分からない現象だった。

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