初心者がVRMMOをやります(仮)
現実世界にて<リストと決意>
ある意味、美玖の個人情報満載のリストを貰った良平は頭を抱えた。
一弥とりりかの二人から貰えればと思っていたが、それに千沙が付け足している。
「……本腰いれてかからんと、マジヤバいわ」
「良平さん?」
呟きをしっかりとキャッチした悠里が傍にやってきた。
「ほれ、これがリスト」
持ってきてくれたのは悠里だが、一切見ていないのは分かっていた。
「あらまぁ」
一瞥してそれで済ませられる悠里が凄いと思ってしまう。
美玖が苦手なのは鳥、爬虫類、両生類、蝶や蟻を含めた虫全般。大きい犬に吠える犬。それから猫。
今まで「TabTapS!」で様々な動物によくぞ触れていられたものだと思ってしまう。苦手な食べ物は果物(どうやら腹を壊したらしい。千沙の怒りが伝わってくるほどの筆圧だった)に、脂っこいものと牛肉。それから人参、ピーマンなど小さい子供が嫌うもの等々。
そして何より、怒鳴る男。高圧的に接する大人、強引な人間。
「……今までよく生活できたなぁ」
「そのあたりは、お祖母様の話だと、ご近所様のおかげだとか。苦手だと分かるものを近づけないようにしていてくれたんですって」
「いや、強引って意味では保もそうだなって思った」
「……保君は美玖ちゃんに合わせていますから」
苦し紛れすぎる悠里に言に、良平はすさまじく納得した。
「……良平さん」
「何だい、悠里」
「引っ越し、しませんか?」
唐突に出た悠里からの言葉に、リストを落とした。
「ずっと、考えていたんです。良平さんからやりたいことを奪う話なのも分かっているんです」
「古瀬君を引き取りたい。そういうことかな?」
「はい」
言いづらそうにしていた悠里の代わりに、良平は答えを出した。
「いいんじゃないかな。他県に行って再度教職に就けばいいだけだし。それしちゃうと、悠里は友達と遊べなくなるよ?」
一人家の中で待っているというのも大変なはずだ。
それでもいいと、悠里は言う。
「俺らで納得してもさ、それこそ悠里のお祖母さんがOKしなきゃ無理だよ。それに古瀬君はあの方の傍にいたいだろうし。……何より、ね」
禰冝田家の方々が黙ってないんじゃないかなー。そう軽く言うと、悠里は笑い出した。
「すっかり忘れていました。私たちだけの問題じゃないってこと」
「だろうねぇ。ずっとふさぎ込んでたし。それにさぁ……」
あまり言いたくないが、もし、仮に。美玖と保が一緒になったら「お義父さん、お義母さん」と嬉々として保が呼びそうである。
「それくらい、美玖ちゃんが娘になるのなら何ということはないです!」
きりっとして言うあたり、そのあたりの覚悟はとっくに出来ていたようである。
「悠里、悪いけど女帝以外の禰冝田家の方々に根回し頼んでいい? 俺の方で女帝にお願……」
「それくらいお安い御用です! お祖母様のところにも一緒に行きましょう!!」
ここまで嬉しそうな悠里を、ここ数年見ていない。少しばかり美玖に妬いた良平だった。
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