初心者がVRMMOをやります(仮)
悪ノリする人たち
罠だらけだから、行きたくない。そう思いつつも、未知との遭遇という楽しみの前には無力だった。
結局、ディッチもノリノリで準備を始めたのである。
誰よりも、この遠征に反対しているのはイッセンだ。何せ、「可愛い従妹が危険なところに行く」というだけで、かなりの心配性になるのに、今回二人とも行くつもりだというから、なおさらである。
余談ではあるが。ジャッジはカナリアの参加に一切反対をしていない。「一緒にいてヤバかったら、連れて逃げればいい」というお答えが返ってきた。「クリスのやりそうなことは大体わかってるし」と言うあたり、「My dear son」と言われているだけはあると思った。
「んなこと考えているよりも、リリアーヌのこと心配しとけ。『Mademoiselle』ってクリスに呼ばれてるんだぞ」
「? それがどうかしたの?」
「クリスがそういう呼び方するのは、気に入ったやつだけだ。基本黄道とか、聖書関係で呼ぶから」
「……まずいってこと?」
「そういうこった」
なおさら行かせたくない。そう思ったイッセンは悪くないはずだ。
「ありゃ、逃げると追いかけるぞ」
「うわぁぁぁ!! さすがジャッジさんの育ての親! 性格悪すぎ!!」
「どういう意味だ、コラ」
ジャッジに頭をぐりぐりされるが、そんな事よりも可愛い恋人が変なやつに気に入られたことでショックが大きすぎて、痛みも感じなかった。
……が。
それ以上にショックだったのが、リリアーヌとカナリアの新しい衣装だ。
「ねぇ!? なんで!? なんでこんな格好させるのさ!?」
スカーレットがデザインしたというそれは、ドツボにはまりすぎた。
スカーレットがイッセンとジャッジをイメージした色。それを「彼シャツ風ワンピース」でまとわせたらしい。「彼シャツ」なだけあって、マイクロミニ丈だ。カナリアにはフリル、リリアーヌにはファーを裾に飾りとして入れている。
なに、この可愛いの。誰にも見せたくない。それがイッセンの感想だった。
「ちなみに、ユーリさんは裾にレースをあしらったぞ! ……兄貴! なんでユーリさんに着せない!」
「却下だ! 阿呆!! うちのユーリは見世物じゃない!!」
だったら、リリアーヌも着替えさせよう。うん、そうしよう。そう決心した瞬間、ディッチに止められた。
「俺は自己中だからさ、二人が着てる分にはノープロブレムだ! さあ行くぞ!!」
「ちょっ! ディッチさん、ずりっ!」
だが、リリアーヌとカナリアはスカーレットによってあっという間に転移させられていた。さすが兄妹。いいコンビだ。
防御力等はかなり高い服だったことが、唯一の救いだった。
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