初心者がVRMMOをやります(仮)
定期クエストの裏側(スタッフ目線)
初の定期クエスト依頼で、ギルドカウンターは少しばかり忙しくなっていた。
しかも、「初心者の町」からはられるものだから、それを受けるために必死になるベテランプレイヤーも続出していた。
値段設定自体が仕事内容に対して悪くない、というのが一点。そして依頼主がカナリアである、ということが一点。ベテランプレイヤーの中には「癒しのウサミミ嬢にいい格好したい!」という邪まな考えを持つ者もおり、人気のクエストとなっていた。
本日も定期クエストがはり出されるということで、そのためだけに「初心者の町」に来ているプレイヤーまでいる。
カウンターの中に入らずに、タブレットのクエスト情報欄を何度も更新しているプレイヤーまでいる。
他の町でも見かける光景だというのは会社で聞いてきたスタッフたちだが、少しばかり引き気味だ。
「今まで『初心者の町』なんて見向きもしなかったくせに」
スタッフの一人、サクラが呟く。
「そう言うなよ。今日はしっかりと休日出勤手当てが出てんだろ?」
「ううん。別の日に休み移動した」
「さて、はり出すか」
「……だね。視線が痛い」
全員がサクラの動きに注目していた。
依頼書をはり出したギルドカウンターにいたプレイヤーが受注しやすいというのは、「TabTapS!」というゲームにおいては都市伝説に近いものがある。
はり出した時点でタブレットから見ることが出来、その場で受注できるからでもある。
……特にここまで人気のクエストはそうだ。
だが、今日も必死にクエストにありつこうとする痛ましいプレイヤーたちがカウンターにいた。
後ろをついてくるプレイヤーに「うざい」と言えればどれくらい楽か。そう思いながら、サクラはクエストボードにカナリアからの依頼をはった。
「どぉりゃぁぁぁぁ!! 今回は俺がいただきだぁぁぁ!!」
「何をぉぉ!? 俺だーー!」
「私がニーニャと戯れるために引き受けるのーー!!」
はった瞬間に弾き飛ばされたサクラを誰も心配していない。
同僚すらも笑っている。
前回は同僚がはって、サクラが笑っていた。その前は主任がはった。ある意味、このクエストをボードにはった時点での通過儀礼となっている。
「癒しのウサミミ嬢の笑顔を見るために!」
「ニーニャを愛でるために!」
「カシミレラにどつかれないために!」
「わんこを可愛がるために!」
「お礼で『安楽椅子』の飯を食うために!」
「絶対受注するんだーーー!!」
どうやらカナリア効果だけではないらしい。
何だか、少しばかり毛色の違う声も入っていたが、知らないふりをしてカウンターに戻った。
そして今回「定期クエスト」を引いたのは、「深窓の宴」のギルメン・レンだった。
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