初心者がVRMMOをやります(仮)
認識の違い
そんな中、カナリアはセバスチャンと共に必死になって料理を作っていた。
「カナリア君、どうせならこのゲームでしか食べれない食材で料理してもらえる?」
「ここでしか食べれないもの、ですか?」
カナリアから見れば、ここでしか食べれないものが多すぎた。クィーンやジャッジが色んなものを現実でも食べさせてくれるが、ほとんどがゲームで初めて食べたため、いまいち分からないのだ。
「ラーメン?」
「それどこでも食べれるからね?」
「えっと、固くない麺をゆでたラーメン」
「……普通に売ってるからね」
「パフェ?」
「ファミレス行けば食べれるよ」
「ステーキ?」
「……肉によるかな」
「手作りハンバーグとか、ふわふわのケーキとか?」
「……何だか不憫になってきた」
そう言ってディッチがよしよしと頭を撫でてきた。
「本日は客のところ申し訳ありませんが、ディッチ様。こちらを運んでいただけますか?」
そう言いながらセバスチャンが渡したのはオークゴブリン肉の煮込みである。
「そうそう! こういうの! サンキュ」
ぐつぐつといまだ音をたてている鍋を持ち、ディッチが席へと戻った。
「……食生活の改善を女帝にお願いしますか」
ぼそりとディッチが呟く。
そして、その頼みはクィーンの扇子で一喝されることになる。
「解釈って大事ですね」
そんな愉快な現場を見たジャッジが二人の「話し合い」をそう評した。
「最初から言えっ!」
「だって、ディッチさん俺にそんなこと聞かなかったじゃないですか。カナリア目線では、ほとんどが珍しすぎるんです。ゲーム内の祭でもあれだけはしゃぐカナリアですよ?」
「……そりゃそうなんだがなぁ」
それに、あの場にいたイッセンの同僚たちが全員揃ってカナリアの不憫さに泣き、純粋さに陥落したのだ。
……これ以上ギルドメンバーを増やしたくないディッチは、どうしたものかと頭を悩ませていた。
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