初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

受験へ向けて

そんなこんなで過ごすうちに、あっという間に四月になった。
 普通に通っていれば、高校三年である。つまりは受験だ。

 カナリアも他のプレイヤーに倣い、寺子屋での授業を開始した。
「……えっと?」
「ここは時間以外現実リアルと同じ空間だ! 今日は化学の実験と行こうじゃないか!!」
 ぽかんとするカナリアの肩を、誰かが叩いた。
「気にしないほうがいいよ~~。受験に出てくる実験関係はほとんどここで溝……じゃなくてディッチ先生やるから」
 溝内、とディッチを言いかけたことにより、カナリアは櫻井高校の生徒だと思った。
「あたしら今年受験なんだ~~。学年主任の先生がさ、ここで面倒見てくれるって噂が出てさ、始めたの」
「……そ、そう」
 ドクン、心臓が嫌な音をたてた。

 怖い。あのこと、、、、を知っている人かもしれない。
「ねぇ、名前聞いていい? あたしはルルー、でこっちが……」
「シェスカ。よろしく」
 声をかけてきてくれた二人がカナリアに自己紹介をした。
「……カナリア、です」
「え!? あの有名な職人プレイヤーのカナリアさん!? わぁ~~ここで見れると思わなかった~~」
 きゃいきゃいと二人がはしゃいだため、カナリアは注目を浴びることになった。
「そこ! 静かに。授業中だよ?」
「すみませ~~ん」
 悪びれもせずに、二人が謝っていた。
「そこの三人、次また騒いだら、講師特権のテレポートで教室から追い出すぞ。
 いっそ追い出してくれないかな、と不謹慎なことを思ったカナリアだった。


「……まぁ、どっかであったと思うぞ」
 本日は喫茶店、はなくギルド本拠地にてそんな会話がなされた。
「問題は同じ学年の、あることないこと言いふらす姦し集団だったってことだ」
 ここにいるのはクィーン、アントニー、ディッにジャッジ、そしてジャスティスだ。ディスカスとスカーレットはクエストに出かけ、イッセンとリリアーヌはカナリアと一緒にいる。
「そうお主が相談してくるということは、そやつらに知られるとまずいということか?」
「……高確率で」

 そらもう、姦し集団にはかなり手を焼いた。
気づくと「異性と少し話した」という程度の問題が「付き合った」そして話さなくなれば「別れた。別れるスパンが早い」という悪評になっていくのだ。

「なんとも面妖な童子わらしこじゃの」
 聞き終えたクィーンまでもがため息をつきながら言う。わざと悪意のある噂を流すという、、があるという少女たち。いずれその悪意が己に返っていくだろうが、それを待ってやる優しさは要らんと、クィーンが続けた。

 相談する相手を間違った。ディッチはそう後悔した。

 クィーンはすでにる気である。この人に心をへし折られたら立ち直れないんじゃないかなと思うのである。
「……お手柔らかにお願いしますよ。ゲームが停止処分受けてしまえば、困るのはカナリアさんですから」
 その阻止の仕方もどうなのよ、そう思うディッチだった。

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