初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

思惑の重なり


 順調に訓練も進んでいき、カナリアたちの拠点にある倉庫にはところ狭しとアイテムが並んでいく。
「カナリア君、リリアーヌ君」
「はい、何でしょう」
「ここの消費アイテムは使い切ると思っている。それから、いつでも携帯に出れるようにしていて欲しい」
「はーい。モンスターの弱点に合わせて武器装備を替えるためですね」
 すぐに気付いたリリアーヌが答えていた。
「そう。それもあるが、特に前線のアイテム消費は激しいとみている。俺のほうでHPとかは確認できたとしても、さすがに所有アイテムまでは把握できない。
 それを確認するのにスマホに入っているグループ通話アプリを利用する。そして枯渇しているところに二人を携帯で指示して向かわせる。
 それくらいしかディッチには出来ない。

「……倉庫、手狭?」
 そんなディッチに恐怖の呟きが聞こえた。
「カ……カナリア君!」
「美玖ちゃん! 今からじゃ間に合わないから!!」
「だって、ここにたくさんのものがあったら素材持ってこれないじゃん。それに、これでも足りないかもしれないんでしょ? だったら広くするべきだと思うの。
 今回限りかもしれないけど、そうなったらお店の倉庫として使ってもいいし」
 だから、素材から離れてくれ! 採取されたらたまったものじゃない! そう怒鳴れればどれ位楽か。言ったところで、カナリアは「素材なかったら何も出来ないですよね?」と返してくる。
「カーティスさんたちと話してくる!」
 ……素材のことになると一気に行動が早くなるカナリアである。
 ディッチたちが止めようとした時には既に、ユニに乗って出かけたあとだった。

 そこへ到着したジャッジたちに顛末を教えれば、全員がため息をついていた。
「カーティスたちに連絡入れとくぞ」
 ディスカスが呆れたように言い、そのまま連絡を取っていた。
『突貫でよければリアル時間の一日で作りますよ』
 連絡を受けたカーティスが機嫌よく言う。そりゃ、どんなものでも依頼だ。
『というよりも、クエストのためにカナリアさんが動いてくれてるのが、我々は嬉しいだけです』
「カナリア君は素材のために欲しいだけだと思うが」
『それでも倉庫が一時的に大きくなれば、貯蓄も増えます。AIの半数を倉庫護衛にしておけば、突貫でも今回は問題ないかと。全滅する可能性が少しでも消えるなら、我々も協力を惜しみません』
 カーティスの言い分はもっともだ。拠点を構える場所なだけあって、今回のクエストは密接に関わっている。それを失念していたのはディッチたちのほうである。
「『カエルム』から『神社仏閣を愛する会』への正式な依頼にしてくれ。ギルドを通して指名クエストにする」
『ははは。そこまでしていただかなくても大丈夫ですよ。ちなみに今、うちのギルドにフェンフェンとラウも来てますから。フェンフェンはゲーム内で建築士です。
 フェンフェンとラウのところもアイテム枯渇問題をどうしようかとうちに来てくれてたところですから、丁度よかったんです。なので、今回は無償で行います』
「恩に着る」
『それはこちらの台詞です。どのようにディッチさんたちにこの話を持っていこうか相談していたところでしたので』
 ナイスタイミング! そうカーティスは言って電話を切った。

 そして、倉庫の番人をどうするかという、別の問題が出来ることになった。

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