初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

舞踏会クエストの波乱

 二曲ほど踊ったところで、カナリアはジャッジにエスコートされジャスティスのところへ戻った。
 現在、他のメンバーはパートナーを変えて踊っている。
 カナリアも次はジャスティスと踊る手はずになっているのだ。

 ……が。
「Little lady、私と踊ってもらえないかな?」
 にこりと笑って割って入ってきたのはクリスである。
「大丈夫。女帝の許可は取ってある」
「俺が許可しない」
 しばらくクリスとジャッジの攻防が続いていたものの、クリスが耳元で何かを囁くなり、ジャッジが妥協した。
「レッスンの成果を見せてもらえるかな? Lttle lady」
「はい」
 普段通りでいい、クリスにそう言われた気がした。

 カナリアとクリスが踊り始めると、周囲がざわつき始めた。
 仕方あるまい。ジャッジ以外と踊っているのだ。虎視眈々と次のパートナーを狙って声をかけてくるプレイヤーやろーどもがいるはずである。
「カナリアちゃん、ジャッジ君と離れて大丈夫でしょうか?」
 現在イッセンと踊るユーリが呟く。
「……多分、大丈夫じゃない」
 そう思うのには理由わけがある。
 ジャッジの手を離れたことと「カエルム」メンバーから離れたこと。この二点だ。
 すでに虎視眈々と次のパートナーを狙うプレイヤーの多いこと多いこと。カナリア恐るべしである。
 そして、それを不服そうに見る男。シュウだ。

 ブラックリストに入れてしまいたいところだが、カナリアに何かあると悪いと思いそのままにしている。
 己の大概甘いと思ってしまうが、再度笑顔を失うのは嫌なのだ。

 再度カナリアに視線を戻すと、一緒に踊っている男と目が合った。次の瞬間、にやりと笑っている。

 嫌な予感以外してこない。そしてあの笑みはカナリアと会う前のジャッジを彷彿とさせる。
「クリスさんは、ジャッジさんの親のような方らしいですから」
「……病んだ性格の一端はあのおっさんか」
 そんな話もどこかで聞いたっけ。それくらいどうでもいい出来事だった。

 音楽が終わると、クリスがカナリアをエスコートしてバルコニーの方へ行く。

 そのあとを追うようにシュウが動いた。

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