初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

現実世界にて<美玖とお祖母ちゃん>


 翌日、美玖は祖母の家に行く。いっくんたちは明日来ると言っていた。だからこそ、両親は今日のみと言ったのだろう。
 美玖に近づけさせまいと。

 お盆などは、父の実家へ行く。そちらでもゲームの話はそれなりに出ているが、美玖は「ゲームのできない、不器用者」と思われているらしく、話に混ざれない。そのため、ずっと本を読んでいるのだ。今年からは、講習を入れて、父の実家に行かないようにしようかと考えていた。

「お祖母ちゃん! こんにちはっ!!」
「おや。美玖ちゃん、早かったね」
「うんっ。待ち合わせもあるし」
「そうかい。楽しんでいるようで何よりだよ。少しお祖母ちゃんとお話してからログインでも大丈夫かい?」
「うんっ」
 美玖の元気な笑顔に、祖母である千沙ちさはほっとした。
 やっと笑顔が出てきた。今まで、暗い顔で笑う少女だったのに。悩んだが、「TabTapS!」にしておいてよかった。そんなことを思っていた。
「……でねっ。すっごい方法がありすぎて、迷っちゃうの。でも、初めてフレンドになってくれた方が親切に教えてくれて、しかもAIっていうサポートキャラもすっごい頼もしいの!」
「それは、よかった。フレンドの名前、聞いてもいい?」
「……う~~ん。私は知らなかったけど結構有名な人らしくて、あんまり他の人に名前を漏らさないでって言われちゃった」
 その言葉に千沙は美玖に知られないよう、肩を落とした。
 お盆あたりに、孫たちと――都合上、美玖以外になってしまうが――「TabTapS!」をやろうと思っていた。その時にその人に会ったら、お礼を言いたかったのだ。

 私たちの代わりに、美玖を笑顔にしてくれてありがとう、と。

「今日は八時間みっちり繋ぐの。そしたら、お茶しよ?」
「そうだねぇ。あたしも他のゲームに繋いでいるよ。いっくんとりりちゃんも来てるだろうし」
「そっか。そっちもやりたい気がするけど、月額課金でしょ? 難しいなぁ」
「そう言ってくれるだけで十分だよ。美玖ちゃんは『TabTapS!』を楽しんでおいで」
「うんっ。いつかお祖母ちゃんたちとゲームしたいな」
 そう言って美玖はヘッドギアを付けていく。

 久しぶりに見た孫娘の心からの笑顔に、千沙は涙が出てきそうだった。

コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品