初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

つかの間の休息


 角の素材はなくても、解体をする三人に攻撃が全くいかないことはすぐに分かった。

 他のメンバーも心おきなく戦えるというものである。

 ついでに「シラタマル」も出てくることが分かり、それらはカナリアたちが解体の合間で狩っている。
「この調子だと、明日で五十本は楽に越えます!」
 六日目のレイドが終わると、カーティスが喜んで報告をしてきた。
「お役に立ててよかったです」
「解体専門と討伐専門に分けたのがよかったようです。それに巨大一角兎の皮を使った防具を使えば、攻撃されないことも分かりました。昨年のものでいいのかは、来年確認することにして、だいぶ楽になります!」
 兎コスを作って少しばかり余った毛皮は、またカナリアが譲り受けている。

 女性用のピアスを作り、エリやスカーレットにも渡した。男性向けに何を作ろうか、考えている。

 何かを作っているときに、カナリアのウサミミがピクピクと動いていることを、未だにカナリアだけが知らなかった。
「カナリアちゃんー。楽しいー?」
「はいっ」
 エリの言葉にも、嘘偽りなく答えられる。「カエルム」の仲間がいることと、一週間も同じ人達とレイドを攻略しているというのが、人見知りをするカナリアでも気楽に接することが出来る理由だ。
「ミ・レディ。お茶の用意が出来ました」
「セバスチャン、ありがとう」
「いえ。本日はクィーン様のリクエストもあり、和風で仕上げました」
 いつの間に和風料理も出来るようになった!? と聞きたいのは、カナリアだけではないはずだ。
「主食は梅干入りのおにぎりと、ノボリザケのおにぎりです」
 ノボリザケは鮭のようなモンスターで、解体すれば「ノボリザケの切り身」と「ノボリザケの卵」が手に入る。……が、それを狩った記憶は全くない。
「ノボリザケの切り身は、カーティス様に譲っていただきました。おにぎりを作ると伝えましたら、それはもう、嬉々として」
 セバスチャンもかなりなじんでいる。
「それから、トーフを使った味噌汁です。そしてこちらが肉料理。修行をしている『深窓の宴』の方々には、精進料理を作らせていただきました」
 いつの間にやら、あちらの料理まで作っている。
「ほんっとうに俺、こっちでよかったっす」
 涙を流しそうな勢いで食べているのは、レンだ。サイレンは黙々と食べている。
 VRの中で肉を食べようとするなら、そのモンスターを狩らなくてはいけない。「残酷だ」と言って食べない人もいるが、カナリアは皮革でアクセサリーを作ったときにある種の覚悟を決めたのだ。
 食べれるものは食べる。使えるものは使う。いつの間にか、カナリアのポリシーとなっている。

 そんなわけで、今日もカナリアはVRの中でも美味しくご飯をいただいている。たくさんの人と食べるのがこんなにも楽しく、美味しく感じることを実感していた。

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