初心者がVRMMOをやります(仮)
閑話的考察 それぞれの名前の由来について
「皆さんの名前の由来ってなんですか?」
それを口に出したのは、カナリアだった。まぁ、それなりの所帯になったことと、「神社仏閣を愛する会」と仲良くなった事で、話すプレイヤーが増えたことが理由だった。
その日はセバスチャンとアントニーが淹れる紅茶と緑茶を飲みながら、まったりと「カエルム」ギルド本拠地で全員がくつろいでいた。
「そういうカナリアちゃんはー?」
逆に問い返してきたのはエリだった。
「えっとですね。お祖父ちゃんが、私が歌うと『カナリアの鳴き声みたいだ』って言ってたからです」
その言葉に裏があったことも、最近では分かった。「炭鉱の中で飼い殺しされる」という意味で言っていたと。助けるために、民生委員にも祖母の千沙と一緒に掛け合っていたらしい。
「へぇ。確かに声も可愛いよねー」
概観がリアルとほとんど変えていないと言っているためか、あっさりとエリは言う。
「私は名前をそのまま使ってますよ。カーティスという名前は、ファースト、ファミリー共にありますから。ちなみに私はセカンドネームなんですけどね」
カーティスがあっさりと言う。
タカは、名前が「隆之」なので上二文字を、ユウは父親が「タカ」というプレイヤーネームだからというのは、以前聞いてはいたが。
「ディスは色々合わせすぎなんだよ。カナリア君、Discusだと、どんな意味になる?」
ディッチがいきなり英語の授業へと突入し始めた。
「え……えと……」
「時間切れ。円盤、ディスク状のもの。あとは南アメリカアマゾン川に棲む淡水魚のことだ。じゃあ、Discussだと、どんな意味だ?」
円盤の複数形? そんなことを思っているうちに、こちらも時間切れになった。
「『討論する』という意味だ」
ディスカスがさらりと答えを言った。
「父親が代議士でね。嫌味も込めて『Discuss』にしたつもりだったんだが、熱帯魚好きには魚から取ったと思われるし、陸上競技をやってる人間には円盤投げから取ったと思われるしで、否定してなかったら諸説入り乱れたんだ」
「……とすると、お主の出身県は……」
クィーンは途中からディスカスの耳元でささやいていた。
「正解。さすが女帝」
「なるほど! クィーンさんの名前は、リアルで『女帝』と呼ばれているからなのですね!」
カーティスが感心したように叫んでいた。
ディッチは苗字に「溝」を使うからだと己で言い、ユーリは名前をそのまま使ったと説明した。
「我々二組の夫婦はディッチ、ユーリ夫婦の親でね。父親、母親という意味だよ」
「なるほど。トトさんとカカさんも父親、母親という意味でしたか」
カーティスの言葉に続き、マモルたちも己の名前をそのまま使っているとあっさり言った。
「私もですねー。一文字取りましたけどー。決めるのが面倒になったのでー。で、ここまで来て、四名様残ってらっしゃいますけどー?」
「私は、名前につく『庵』という文字と、苗字につく『富』という文字から、『アントニー』にしましたよ」
「俺は、英語のJudgeから……」
「お主の場合はそれだけではないだろうに」
ジャッジの言葉を遮って、クィーンが言う。何か思い当たる節があるらしい。
「お主に審判や判定などという意味が似合うと思うておるのか?」
「俺ほど似合う人間は……」
「大丈夫。そのあたりもずっとネタとして他のゲームから語り継がれているから」
またしてもジャッジは言葉を遮られ、ディスカスに言われていた。
「ジャスティスさんは?」
こういった場合にすぐ話に乗ってくるはずの、ジャスティスがずっと黙っていた。
「ジャス、言っていいか?」
「……勝手にしろ」
ジャッジの言葉にジャスティスが、不貞腐れたように返した。
「ちょっ……ストップ!!」
待ったをかけたのはディッチだった。
「ディッチさん、ここまで盛り上がる前に止めてください」
さらりとジャッジが言い返し、ユウがげらげらと声を立てて笑っていた。
「ジャスの名前の由来は先生の誤変換だからなー。入学したあと先生が受け持ちの生徒の顔と名前を覚えるために、名簿作ったんだよ。それが化学準備室においてあったんだけどさ、ジャスの漢字間違えて『正義』にしてあったんだよ。そっからだな」
「あたしもそれ聞いた! 兄貴はユウ君や他の生徒の漢字も間違えて打ってたんだよねー。でさ、親父に『機械に頼りすぎだ!』って怒られて……」
「レット! おまっ!! 余計なことを!!」
「あとでどんな漢字で書いてたか教えるね」
「楽しみにしてます」
スカーレットの口を塞ぎきれなかった(というよりも、他の面子に遮られた)ディッチが悔しそうにしていた。
「スカーレットさんは?」
カナリアの問いに、そういえばと「神社仏閣を愛する会」と、スカーレットと一緒にするゲームが「TabTapS!」が初めての面子は首を傾げた。
「なんだと思う? カナリアちゃん当ててごらん?」
「……色、ですか?」
「近いけどハズレかな? まぁ、赤は好きだけど」
「スカーレット・オハラかしら?」
「ママンさん、また渋いものを。ハズレですけど」
「大穴狙ってキャプテン・スカーレットかな?」
「パパンさん、さすがにあたしそれ知りませんよ?」
そこまで聞いていたタカが引きつった顔でスカーレットを見ていた。
「……まさかと思うけど……」
「タカさん、ここまで来たんで正解出して!」
期待に満ちた顔でスカーレットがタカを見つめた。
「……俺も君の知識から『キャプテン・スカーレット』かと思っていたけど違うなら、『赤い彗星』かなと……」
「正解! 『赤い彗星』のシャアさんからです!!」
当然、分からないカナリアはこのテンションについていけない。
そのままタカとパパンは「キャプテン・スカーレット」の話を、そしてママンとカカは「スカーレット・オハラ」の話へと突入し、カナリア以外の「カエルム」古参メンバーでで「赤い彗星」が出てくるアニメの話を厚く語っていた。
聞くんじゃなかったとカナリアは少しばかり後悔しつつ、ユーリ、エリと一緒にお茶を楽しんでいた。
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