初心者がVRMMOをやります(仮)
現実世界にて<密談>
トールはそれから間もなくしてアカウント停止をくらった。
それは他ゲームにも伝わり、何一つゲームが出来ない状況へと変わっていく。
そのあたりの状況を昌代は逐一報告を受けていた。
「親も愚かよの」
子供の顔色を伺っているというのが滑稽である。遺産をあてにした生活をしていたせいだろう。
T.S.カンパニーの倒産した余波でトールもある程度の負債を抱えたようだが、知ったことではない
さて、残るはもう一人の子供だがそちらは他の連中が色々と下したいらしく「女帝は大人しくしていてください」と宣言された。
その間昌代はクリストファーと話し合い、今後のことを決定させてもらう。
一人の少年が周一郎に近づいた。
「かなりでかいメンテナンス入るんだろ? 俺もそのあとから『TabTapS!』やろうと思ってんだけどさ、パーティ組むための布陣考えるために『Word On Line』やらないか?」
その言葉の裏にある意思に周一郎は気付かない。
ゲーム内でそれなりに有名な人物がいたとしても、周一郎にとって「どうでもいいこと」だったのだ。
一人茶室で昌代は座っていた。
「お待たせいたしました」
流暢な日本語で入ってきた男、クリストファー=ジャッジである。
「して、そちらの代表者は?」
「そのままセラフィムは登用しようと思っております。今一人は、ミカエルあたりを考えております」
「左様か。それならばこちらに出向している男をするわけにはいかぬな。
我が甥孫とあと二人、適当な人物を出す」
「……よろしいので?」
「お主含めて三人になっておるではないか。それであらばこちらも三人にする必要があるからの」
昌代からしてみればその程度の修正だ。
「さて、話は終わりじゃ。あとはのんびりとアップデートとやらを楽しむとするかの」
己のすべきことはポケットマネーから設立基金を出すこと。そう昌代は割り切っている。
「あなたはシステムに関わらないのですか?」
「素人が首を突っ込んでも仕方あるまい。プレイヤーの動きをフィードバックさせるくらいはしたほうが楽しいかも知れぬがの」
「ミカエルはそのつもりのようです。出来れば野々宮の名前を持つ者を面子に入れてほしいと」
「無理であろうの。あ奴は手一杯じゃ」
「そうですか。筆頭株主の意見を伝えます」
部屋を出るクリストファーに、昌代は「面白くする手伝いならするぞ」とだけ声をかけた。
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