初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

兄妹のやり取り


 このパーティ編成に、スカーレットが誰よりも文句を言っていた。
「仕方ないだろ。ジャッジとカナリア君を離すのはジャッジの暴走の引き金を引きそうで嫌だし? 向こうにはタンク役のジャスとジャッジが魔法剣に切り替えた時のためにディスがいたほうがいい。とすると、四人は埋まる」
 残る二人はタッグが組める奴がいい。それがディッチの考え方だった。
「ジャスを向こうに入れる理由は? タンクだと前衛まっしぐら。カナリアちゃんが怪我する恐れがあると思うけど? それにカナリアちゃんだって攻撃魔法が使えるんだもの」
「……ゲーム的発想がほとんどないカナリア君が、魔法に属性魔法を付与するってのを考えつくと思うか? それにカナリア君の目の前ではほとんど魔法剣を使っていない。どちらかと言うと銃器ばかりだ。それに、ジャス以外でとなると、お袋はトラップ解除のためにそちらに必要。とすると親父もそっちに行く。その時点で二人セットになっちまう」
「親父は武道家だから、一人でも大丈夫……」
「お袋のトラップ解除、トラップ探索、共にLVがかなり低い。ほとんどが漢探知に漢解除に頼る。それに親父の能力値じゃ、守りきるのが不安」
「……あーーー」
 言わんとしていることが分かったのか、スカーレットも何も言えなくなっていた。
「確かにカナリアちゃんの回復力じゃ心許ないね。最低でも兄貴LVか」
「ま、そういうこった。最悪、ママンさんにも回復に回ってもらうって手もあるが、そうすると、かなり面倒なことになる」
「それでオークゴブか。カナリアちゃんのLV上げも兼ねて」
「そういうこった。限定クエストに行くことを恐れてカナリア君のLV上げが疎かになっていたからな。トールもいないし、少しはそちらに力入れるのも一つの手だろ」
 そう言って二人揃ってカナリアの方をちらりと見ると、ジャッジとなにやら仲良く話している。
「お二人の心配は別のところに回すべきですわ? カナリアさんは既に素材集めのことしか頭にないみたいですもの」
 ユーリの言葉に、ディッチとスカーレットは絶句してしまった。

 ちなみに、本日「カエルム」メンバー全員がクエストに出る、ということはなかった。

 パパンは新しい魔法の開発余念がなく、アントニーはクィーンに付き合い、茶道道具の作成や「深窓の宴」の一部のメンバーから依頼される「修行」を行っている。
 依頼のほとんどがサイレンやサイレンと似た考えの持ち主らしいが。

 あの修行を好んでやりたいと思うとは、Mなのかとも思ってしまうが、どうやらアントニーとクィーンの修行を見事クリアするとMNDなどが上昇するらしい。クリア条件はかなり厳しいが、それに見合ったものだとレンが嬉々として教えてくれた。
 それを聞きつけた「神社仏閣を愛する会」のメンバーも修行を依頼しているらしく、そちら側が多忙だというのだ。
「うちのメンバーは多芸だよな」
「兄貴、それ最初から」
 スカーレットが呆れ顔で返してきた。

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