初心者がVRMMOをやります(仮)

神無乃愛

オークゴブリンレイド戦


 すぐにディッチたちと合流し、次の策に入る。
「……そうか。カナリア君はあの風貌を受け入れられなかったか」
「私だって最初にクエストを受けたときはカナリアちゃんと同じ反応でしたわ」
 ユーリが言えば、カカとママンも頷く。
 それぞれが雇われのような形で受注していたらしい。ただ、三人はカナリアのように、表に出なかっただけだという。
「片足ゴブリン、片足オークとかはまだかわいいですもの」
 最悪は顔の一部パーツだけがどちらかという、モノもいる。ただ、初級から中級のプレイヤーが受けるレイドとしては、最高なのだ。

 LVの割りにいい素材と上級錬金術に使える素材が採取できるという、点でだが。

 つまり、ベテラン組で本当にうまみがあるのは、スカーレットのみなのだ。

「きしし。久方ぶりに胆肝がこんなに取れたっ。心臓がもう少し取れるとよかったんだけど」
「すまん。カナリアが怯えるからジャッジが一撃必殺で心臓狙った」
 ディスカスが申し訳なさそうに答えている。
「カナリアちゃんが怯えたのなら仕方ないわね。にしても、何で肉も取ってるの?」
「セバスに頼んで加工してもらう。食材としてある程度認知されれば需要が出る」
 当然のようにジャスティスが説明した。
「……あ~~。需要が出れば初級から中級者が喜んで受けるわよね」
 あまりにものグロさに、素材として用事がなければ二度と引き受けるプレイヤーのいないクエストだ。
 そして、あまりにも放置されるため、時折上級レイドとして依頼がかかる。それも金額をかなり上乗せしたものでないと引き受けるプレイヤーは少ない。


 このクエストを受ける最大の理由は、このクエストを受けた後に解放される他のクエストが多いということだ。
 ただ、上級者が一緒であればその限りではない。

 カナリアがいい例だ。このクエストを受注していなかったが、クエ主を他のメンバーにすることにより、一部クエストを受けている。
 しかし、きちんと受けていないと進めないクエストがあるのも事実。
 それゆえ、今回はカナリアをクエ主にして、サブをディッチで受けている。


「はい、そこ。いつまでもいちゃついていない。レイド戦始まってるよ?」
 ディッチが呆れ顔でジャッジとカナリアに言う。
 ……が、そんな言葉に説得力というものが欠ける。何せ、ディッチもユーリの腰を引き寄せているのだ。
「とりあえず、基本パーティは変えない。ジャッジは最悪魔法剣使って」
「素材は?」
「カナリア君がかなり怯えているんだろ? だったら早く済ませよう。ユーリといちゃつきたいし」
 後半が本音だろ!! 異口同音にメンバーの大半が突っ込み、カカがディッチを遠慮なく叩いた。
「出来る限り素材は残す方向で行きます」
 こちらはカナリアのためというのが大きいだろう。素材として使えると分かれば、カナリアは嬉々として使うはずだ。グロテスクな外見が嫌なら、ジャッジが取りに来ればいいという事か。
 砂糖を吐きそう、と独身組が思う中、レイド戦へと突入した。

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