初心者がVRMMOをやります(仮)
三人の怪談(誤字にあらず)
かこん、鹿威しが鳴り響く中、クィーンは一人で茶を点てていた。
だいぶましな茶筅も出来上がり、このゲームを辞する時期が近づいている。
「失礼いたします」
そう言って入って来たのはアントニーとクリスである。
「どうも、外の世界が賑やかになりそうですな」
アントニーがぼかして言う。外の世界とは、現実世界のことだ。
「放っておくわけにもいかぬな」
この三人が顔を合わせるのは、ゲームで中のみ。こうやって会談が持たれることもある。
「さて、諒庵殿」
「クィーン殿、いかがなさいました」
「お主のところに鼠は出ておらぬか?」
「今のところは。それよりもクリス殿のところのほうが大変でございましょう」
「私はあまり気にしておりませんよ。あの程度の小物。Mydear sonの父親の方が悪辣でしたし」
楽しそうにクリスが言う。
「制裁を加えたところであやつらは己の非を認めぬからな」
「そもそも悪いと思っていないのが救えません」
「Little ladyを見ていればどちらに非があったかなど分かるものですが」
現在、「TabTapS!」への誹謗中傷がどこからともなく出ている。出所は簡単にたどることが出来、ほとんどがトールこと、徹志のところだ。己がレッドカードを食らい、アカウント停止になったことへの逆恨みである。
馬鹿馬鹿しいとクィーンは思う。それに対して、アントニーやクリスも同意している。
「もっと制裁を加えるのは楽じゃがな」
それをしたことにより、隠れていない面々が危険にあうのは間違いだ。
「カナリアちゃんが言っていたとおりですな」
「Little ladyは人を見る目があるのだな」
苦悩するクィーンを、楽しそうにアントニーとクリスがからかう。
「女帝、あなたを『優しい』と真っ先に評価するのは、Little ladyくらいなものでしょうね」
「我の教育成果ではないな。あの者の母方祖父母の教育の賜物であろうの」
直接会って話をすれば、尚更それが浮き彫りになった。世間知らずところはあるが、礼儀作法などの躾があの環境で行き届いていたのは、全て母方祖母がそばにいたからだ。
「あまりLittle ladyの親権関係に時間をかけないでくださいよ。あまり進まない場合は私も名乗り出ようと思ってますよ」
それをしてしまえば、ジャッジがカナリアを連れて逃げてしまいそうである。
「ただでさえカナリアの親権問題は難航しておる。クリス殿にまでしゃしゃり出られては、進まぬ」
カナリアの希望は、クィーンと一緒に暮らすこと。今お世話になっている人達と連絡が取れなくならないようにすること。それだけなのだ。
それを叶えることは、禰宜田の家と近くなることを意味する。あの魑魅魍魎の家に近づけたくない、そうクィーンは思ってしまうのだ。
「カナリアちゃんはかなりの天然さんですから、禰宜田の方々は可愛がるような気がするんですが。特に長老……」
「あれとは関わらせとうないわ」
誰のことを言っているか分かってしまったクィーンは、思わず遮った。
絶対に嫌だ。あやつらと関わらせてはカナリアが穢れてしまう。
もし、この場にジャッジがいたら「砂○け婆様、あんたといても同じ」と言っただろう。
つまりは同属嫌悪と呼ばれるものである。
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