老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件
315話 キサラ
「全員装備の確認、回復アイテムのストック管理しっかりねー」
激戦を終えて全員集まって次への備えをする。
たぶんこのダンジョンのボスであった可能性が高いが、まだわからない。
あっさりと戦闘が終わったように思えるが、暴風による継続ダメージや、落雷によるダメージなど、それなりにこちら側も傷ついている。
ほぼ全ての攻撃を完全に回避するタロや完全防御をするユキムラ以外は、ある程度の装備整備が必要となっている。
自己修復効果がある装備がほとんどだが、結構時間がかかりそうなものが多いため、その場に即席鍛冶場を作って白狼隊達が修理していく。
まだこの装備レベルを整備できる人間は白狼隊以外には現れていない。
激戦は皆の精神にも負担を強いていた。
短時間とはいえ確実な命のやり取りを実施した疲労はずしりと心に乗っかっている。
この手の疲労は短時間の休息ではなかなか抜けることはない。
ダンジョンを出て、ゆったりと休息する必要がある。
取り急ぎポーション類を使用したり食事をしたり、表面上の体調はしっかりと整える。
「それでは、皆さん進みましょうか」
ある程度の準備が終了したら進行を開始する。
円形の広場は不思議な事に破壊された石畳も綺麗さっぱり元通り。
目の前の神殿と合わせると一つの芸術作品のようだ。
「実際のラグナの頂上には小さな祠があるだけだが、このラグナは壮大ですね」
「アルテス教の司教以上は修行としてラグナを登り、聖堂で祈りを捧げます。
流石にこっちのラグナ程過酷ではありませんがね」
「聖騎士時代、あのラグナでの修行は過酷極まると思っていましたが、それ以上を体験すると次に登る時は印象が変わるでしょうね」
ケラリス神国側の人間達は思い出話に花を咲かせている。
ユキムラ達も興味深くその話に耳を傾けながら神殿へと侵入していく。
神殿内には荘厳で巨大な柱に支えられた天井部分が遥か上空に見える。
神殿内部に入ると、まるで壁や天井すべてが照明になっているのか、十分な明るさを保っていた。
神殿を進むと台座が見えてくる。
台座の上には美しい装飾を施された宝箱、その少し先には立派な扉が控えている。
「ボスの宝箱っぽいね。どうやらこれでこのダンジョンは攻略できたようだ」
ようやく確定したダンジョン攻略に一同ホッと安堵のため息が出る。
宝物の吟味は帰ってからゆっくりやればいいので、丸ごとアイテムボックスに仕舞ってしまう。
最後の扉に手をかけると、音もなく左右に扉が開いていく。
清潔感のある真っ白な部屋の中央に、男性の像が立っている。
なんというか、ぽっちゃりした優しそうな人物だ。
ユキムラが台座に近づいて手を触れると、淡い光を放ち台座部分の装置が起動し始める。
男性の像にその淡い光が広がっていき、段々とその光が強くなる。
次の瞬間、時間停止が起こる。
【お久しぶりねユキムラ】
久々のアルテス降臨だ。
「アルテス様今日はお一人なんですね」
【ええ、実はそのことで相談もあって来たの……】
「相談ですか?」
【まずはキサラの復活を待ってから、ゆっくりと話します】
台座の上の像は少しづつ血が通い出して石像の肌から人の肌を取り戻していく。
【んーーー。あいたた、変な体勢だったから身体が痛いな……】
手足を伸ばしながら台座から下りてくる神様。素っ裸になるかと思ったが、いつの間にかオーバーオールを着ている。体型とマッチして可愛らしい見た目になっているが、顔だけは無駄にイケメンだ。
【お久しぶりキサラ。早速だけどこれオトハから】
アルテスは何かクリスタルのようなものをキサラへ手渡す。
キサラは迷うこと無くそのクリスタルを握りしめて破壊する。
【アルテス嬢じゃないですか。
……ふむふむ。
オトハさんは相変わらずですね、まだ起きたばっかりなのにこき使う……
それにしても、彼はそこまで力を手に入れているのですか……】
アルテスがユキムラたちに向き直る。キサラは何か考え事をするようなポーズで固まっている。
【それでね、ユキムラたちにお願いっていうのは、少し危険も伴うんだけど、敵の本拠地を探りたいの】
「確かにそれは重要ですね」
【今オトハを中心に、この隔離世界に侵入しようと攻撃してきてる魔人を、こっちの用意した空間に誘い込んで、その動向を追跡する紐付けした後に、ユキムラたちに撃退してもらいたいの】
「なるほど、それで帰還した場所を探るんですね」
【そう。ただ、敵もどんどん強くなってるし、この世界に誘い入れるのも一苦労だし、誘い込んでからも紐付けするには時間が必要なの。
つまり、敵を誘い込んでから一定時間以上戦闘を持続してもらいつつ、さらにその後に撃退をして欲しいっていうやや無茶ぶりになるのよね……】
アルテスは申し訳なさそうにそう告げる。
【補足すると、この紐付けと敵拠点把握を今の段階で終わらせておかないと、君たちが魔神を打ち倒せたとしても確実に逃げられるか、この世界に深刻なダメージを残す結果になるだろう】
キサラがアルテスの説明の補足をしてくれた。
つまり、困難でもこの世界のためには成し遂げなければならない。
そういうクエストなのだ。
「やりましょう。出来る限り努力します」
【ごめんねユキムラ、なんだかんだ貴方には頼ってばかりで……】
「前も言いましたが、私はこの世界が大変気に入ってますし、この世界で出会ったすべてのことが楽しくて仕方ないですから!」
ユキムラは白狼隊を見渡す。皆大切な仲間だ。
時間停止しているケラリスの人々も大切だ。
ユキムラに迷いは無かった。
激戦を終えて全員集まって次への備えをする。
たぶんこのダンジョンのボスであった可能性が高いが、まだわからない。
あっさりと戦闘が終わったように思えるが、暴風による継続ダメージや、落雷によるダメージなど、それなりにこちら側も傷ついている。
ほぼ全ての攻撃を完全に回避するタロや完全防御をするユキムラ以外は、ある程度の装備整備が必要となっている。
自己修復効果がある装備がほとんどだが、結構時間がかかりそうなものが多いため、その場に即席鍛冶場を作って白狼隊達が修理していく。
まだこの装備レベルを整備できる人間は白狼隊以外には現れていない。
激戦は皆の精神にも負担を強いていた。
短時間とはいえ確実な命のやり取りを実施した疲労はずしりと心に乗っかっている。
この手の疲労は短時間の休息ではなかなか抜けることはない。
ダンジョンを出て、ゆったりと休息する必要がある。
取り急ぎポーション類を使用したり食事をしたり、表面上の体調はしっかりと整える。
「それでは、皆さん進みましょうか」
ある程度の準備が終了したら進行を開始する。
円形の広場は不思議な事に破壊された石畳も綺麗さっぱり元通り。
目の前の神殿と合わせると一つの芸術作品のようだ。
「実際のラグナの頂上には小さな祠があるだけだが、このラグナは壮大ですね」
「アルテス教の司教以上は修行としてラグナを登り、聖堂で祈りを捧げます。
流石にこっちのラグナ程過酷ではありませんがね」
「聖騎士時代、あのラグナでの修行は過酷極まると思っていましたが、それ以上を体験すると次に登る時は印象が変わるでしょうね」
ケラリス神国側の人間達は思い出話に花を咲かせている。
ユキムラ達も興味深くその話に耳を傾けながら神殿へと侵入していく。
神殿内には荘厳で巨大な柱に支えられた天井部分が遥か上空に見える。
神殿内部に入ると、まるで壁や天井すべてが照明になっているのか、十分な明るさを保っていた。
神殿を進むと台座が見えてくる。
台座の上には美しい装飾を施された宝箱、その少し先には立派な扉が控えている。
「ボスの宝箱っぽいね。どうやらこれでこのダンジョンは攻略できたようだ」
ようやく確定したダンジョン攻略に一同ホッと安堵のため息が出る。
宝物の吟味は帰ってからゆっくりやればいいので、丸ごとアイテムボックスに仕舞ってしまう。
最後の扉に手をかけると、音もなく左右に扉が開いていく。
清潔感のある真っ白な部屋の中央に、男性の像が立っている。
なんというか、ぽっちゃりした優しそうな人物だ。
ユキムラが台座に近づいて手を触れると、淡い光を放ち台座部分の装置が起動し始める。
男性の像にその淡い光が広がっていき、段々とその光が強くなる。
次の瞬間、時間停止が起こる。
【お久しぶりねユキムラ】
久々のアルテス降臨だ。
「アルテス様今日はお一人なんですね」
【ええ、実はそのことで相談もあって来たの……】
「相談ですか?」
【まずはキサラの復活を待ってから、ゆっくりと話します】
台座の上の像は少しづつ血が通い出して石像の肌から人の肌を取り戻していく。
【んーーー。あいたた、変な体勢だったから身体が痛いな……】
手足を伸ばしながら台座から下りてくる神様。素っ裸になるかと思ったが、いつの間にかオーバーオールを着ている。体型とマッチして可愛らしい見た目になっているが、顔だけは無駄にイケメンだ。
【お久しぶりキサラ。早速だけどこれオトハから】
アルテスは何かクリスタルのようなものをキサラへ手渡す。
キサラは迷うこと無くそのクリスタルを握りしめて破壊する。
【アルテス嬢じゃないですか。
……ふむふむ。
オトハさんは相変わらずですね、まだ起きたばっかりなのにこき使う……
それにしても、彼はそこまで力を手に入れているのですか……】
アルテスがユキムラたちに向き直る。キサラは何か考え事をするようなポーズで固まっている。
【それでね、ユキムラたちにお願いっていうのは、少し危険も伴うんだけど、敵の本拠地を探りたいの】
「確かにそれは重要ですね」
【今オトハを中心に、この隔離世界に侵入しようと攻撃してきてる魔人を、こっちの用意した空間に誘い込んで、その動向を追跡する紐付けした後に、ユキムラたちに撃退してもらいたいの】
「なるほど、それで帰還した場所を探るんですね」
【そう。ただ、敵もどんどん強くなってるし、この世界に誘い入れるのも一苦労だし、誘い込んでからも紐付けするには時間が必要なの。
つまり、敵を誘い込んでから一定時間以上戦闘を持続してもらいつつ、さらにその後に撃退をして欲しいっていうやや無茶ぶりになるのよね……】
アルテスは申し訳なさそうにそう告げる。
【補足すると、この紐付けと敵拠点把握を今の段階で終わらせておかないと、君たちが魔神を打ち倒せたとしても確実に逃げられるか、この世界に深刻なダメージを残す結果になるだろう】
キサラがアルテスの説明の補足をしてくれた。
つまり、困難でもこの世界のためには成し遂げなければならない。
そういうクエストなのだ。
「やりましょう。出来る限り努力します」
【ごめんねユキムラ、なんだかんだ貴方には頼ってばかりで……】
「前も言いましたが、私はこの世界が大変気に入ってますし、この世界で出会ったすべてのことが楽しくて仕方ないですから!」
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