老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件
228話 鵺
「よし、まずはその化物とやらを見に行こう」
ユキムラは村についてちょろっと村長の話を聞いてそう決めてしまう。
それに意義を挟む人間もいない。
「おお、ユキムラ殿!! お頼み申します!!」
村長の家から出ると聞き耳を立てていた村人たちが歓声をもって白狼隊を迎える。
そのまま大歓声に見送られ死の風穴に挟まれた唯一の道を進んでいく。
「確かに深い谷ですね……幅も20mといったところですか、立ち回り考えないと戦いにくいですね……」
「まぁいざとなったら飛んで戦えばいいけど、それにこの底にもダンジョンあるんだよー」
「え、そうなんですか!? どうやって行くんですか?」
「自分の知っている方法は使いの使者に連れてってもらうんだけど……ん? 化物ってあれかな……?」
前方の道に巨大な生物がうずくまって眠っている。
大きさにして5mはあろうか、顔は猫、身体は狸、手足は虎、背には鶏の羽根。
鵺だ。
「あれ? 鵺ってことは……」
ユキムラは一応警戒しながら鵺の前に姿を晒す。
鵺はビクッと身構えるが、ユキムラに攻撃の意思がないことを確かめるとおっかなびっくりウロウロとし始める。
「なんか、様子が違いますね……」
レンも顔をかしげている。
「ばう!」
タロが意思疎通を図るかのように一鳴きする。
その声にピクピクと耳を傾ける鵺、そして……
【君たちは急に襲ったりしないのかニャ?】
「おお! 喋った!!」
【ヒィ!】
猫が警戒するかのように身構える鵺。
「あ、ごめんごめん。大丈夫ちゃんと事情は聞くよ」
【ほ、ホントかニャ? 他の人たちみたいに急に弓で撃ってきたりしないかニャ?】
「ああ、大丈夫! 君は夜叉姫の使いだろ?」
【!! そうにゃ!! なんで知ってるニャ!?】
「いろいろとね、ってことは夜叉姫を助ける人を探しに来てるんだね?」
【おおおお! そうニャ! ということはおにーさん達が助けてくれるのかニャ!?】
ブンブンと振られる尻尾が愛らしい。
振られている蛇は少し気持ち悪そうにしているが。
「レン、さっき言った地下のダンジョンは鵺に連れてってもらうんだよ」
こうして村を脅かす化物退治ミッションは死の風穴ダンジョン、夜叉姫救出ミッションへと変化する。
ユキムラ、レン、ソーカ、ヴァリィは鵺、名前はカナデの背中に乗って死の風穴を降りている。
鶏の羽は広げると見た目以上に巨大になり、羽ばたくこと無く緩やかに風穴を落下している。
タロは楽しそうに空中を蹴りながら着いてきている。
落下しながら詳しい話を聞いていく。
【急に現れた鬼と名乗る魔物が、夜叉姫のいらっしゃる社を襲って夜叉姫を連れて洞窟の奥深くに連れ去ってしまったのニャ。
夜見の国で平和に暮らしていた僕達妖怪は一生懸命助けようとしたんですニャ。
それでも強靭な鬼たちに蹴散らされて……みんな夜叉姫に会いたいのニャ。
それで僕が地上に助けを求めに来たんだけど、みんな話を聞かずに攻撃するから逃げ惑っていたニャ】
そういえばライセツ村でもけが人が出たという話は聞かなかったが、こういうことなのかとユキムラは納得した。
「まぁ、悪いけど見た目はなかなか話を聞こうとは思わないからなぁ……」
【うう……】
慣れると可愛い子でソーカはニマニマしながら背中をなでている。
ヴァリィは尻尾の蛇が気に入ったようで蛇も大人しくヴァリィの膝の上で撫でられている。
レンは興味津々に鵺の生態についての質問をぶつけている。
ユキムラは話が終わるとタロに指示を出して壁面の鉱物採集に余念がない。
どれくらい落下していたか、風穴の底が見えてくる。
マグマの池などのお陰で薄っすらと明るい。ところどころ光っている石などがあって天然の照明の役目を担っていた。それでも薄暗くはあるけれども……
「なるほどね、そしたらー」
ゴソゴソとユキムラがアイテムポーチからアイテムを取り出して合成を始めている。
鵺の背中で作業台を出して合成をした人間はこの世界できっと初めてだろう。
「はーい、みんなーこれつけてみなー」
全員分の眼鏡とタロ用のゴーグルを作成していたようだ。
「おお、昼間のようですね師匠!」
アンダーフレーム構造、フレームはシルバーで知的な印象を与えるメガネを付けたレンはちょっと背伸びしている少年のような可愛さがある。
赤いフレームがソーカにかかると女教師のような知性と強さを感じさせる。
ヴァリィは羽ばたく蝶のようなフレーム、は流石に自重して黒縁の太めのフレーム。大人っぽさと落ち着きが出てよく似合っている。
ユキムラはオーバルの細めのフレーム、少し印象が変わって冷静な雰囲気が強まる。
「ほほう、ユキムラちゃんもレンちゃんも、ほほう……」
新刊はメガネだろうな。
「ゆ、ユキムラさんす、素敵です!」
「ソーカもよく似合っているよ」
二人がいちゃついている横でレンも地味にメガネが気に入っていた。
タロもゴーグルを付けて嬉しそうに空を駆けている。
もちろんただのメガネではない、暗視効果を付与したマジックアイテムだ。
実際には暗視も含めて、暗闇無効、暗示効果無効など様々な効果も付与してある。
【もう着きますニャ。我ら妖怪の里 夜見 ですニャ】
一画に小さな町が形成されている。提灯が下げられ長屋が立ち並ぶ、江戸のような雰囲気の街がそこに広がっていた。
ユキムラは村についてちょろっと村長の話を聞いてそう決めてしまう。
それに意義を挟む人間もいない。
「おお、ユキムラ殿!! お頼み申します!!」
村長の家から出ると聞き耳を立てていた村人たちが歓声をもって白狼隊を迎える。
そのまま大歓声に見送られ死の風穴に挟まれた唯一の道を進んでいく。
「確かに深い谷ですね……幅も20mといったところですか、立ち回り考えないと戦いにくいですね……」
「まぁいざとなったら飛んで戦えばいいけど、それにこの底にもダンジョンあるんだよー」
「え、そうなんですか!? どうやって行くんですか?」
「自分の知っている方法は使いの使者に連れてってもらうんだけど……ん? 化物ってあれかな……?」
前方の道に巨大な生物がうずくまって眠っている。
大きさにして5mはあろうか、顔は猫、身体は狸、手足は虎、背には鶏の羽根。
鵺だ。
「あれ? 鵺ってことは……」
ユキムラは一応警戒しながら鵺の前に姿を晒す。
鵺はビクッと身構えるが、ユキムラに攻撃の意思がないことを確かめるとおっかなびっくりウロウロとし始める。
「なんか、様子が違いますね……」
レンも顔をかしげている。
「ばう!」
タロが意思疎通を図るかのように一鳴きする。
その声にピクピクと耳を傾ける鵺、そして……
【君たちは急に襲ったりしないのかニャ?】
「おお! 喋った!!」
【ヒィ!】
猫が警戒するかのように身構える鵺。
「あ、ごめんごめん。大丈夫ちゃんと事情は聞くよ」
【ほ、ホントかニャ? 他の人たちみたいに急に弓で撃ってきたりしないかニャ?】
「ああ、大丈夫! 君は夜叉姫の使いだろ?」
【!! そうにゃ!! なんで知ってるニャ!?】
「いろいろとね、ってことは夜叉姫を助ける人を探しに来てるんだね?」
【おおおお! そうニャ! ということはおにーさん達が助けてくれるのかニャ!?】
ブンブンと振られる尻尾が愛らしい。
振られている蛇は少し気持ち悪そうにしているが。
「レン、さっき言った地下のダンジョンは鵺に連れてってもらうんだよ」
こうして村を脅かす化物退治ミッションは死の風穴ダンジョン、夜叉姫救出ミッションへと変化する。
ユキムラ、レン、ソーカ、ヴァリィは鵺、名前はカナデの背中に乗って死の風穴を降りている。
鶏の羽は広げると見た目以上に巨大になり、羽ばたくこと無く緩やかに風穴を落下している。
タロは楽しそうに空中を蹴りながら着いてきている。
落下しながら詳しい話を聞いていく。
【急に現れた鬼と名乗る魔物が、夜叉姫のいらっしゃる社を襲って夜叉姫を連れて洞窟の奥深くに連れ去ってしまったのニャ。
夜見の国で平和に暮らしていた僕達妖怪は一生懸命助けようとしたんですニャ。
それでも強靭な鬼たちに蹴散らされて……みんな夜叉姫に会いたいのニャ。
それで僕が地上に助けを求めに来たんだけど、みんな話を聞かずに攻撃するから逃げ惑っていたニャ】
そういえばライセツ村でもけが人が出たという話は聞かなかったが、こういうことなのかとユキムラは納得した。
「まぁ、悪いけど見た目はなかなか話を聞こうとは思わないからなぁ……」
【うう……】
慣れると可愛い子でソーカはニマニマしながら背中をなでている。
ヴァリィは尻尾の蛇が気に入ったようで蛇も大人しくヴァリィの膝の上で撫でられている。
レンは興味津々に鵺の生態についての質問をぶつけている。
ユキムラは話が終わるとタロに指示を出して壁面の鉱物採集に余念がない。
どれくらい落下していたか、風穴の底が見えてくる。
マグマの池などのお陰で薄っすらと明るい。ところどころ光っている石などがあって天然の照明の役目を担っていた。それでも薄暗くはあるけれども……
「なるほどね、そしたらー」
ゴソゴソとユキムラがアイテムポーチからアイテムを取り出して合成を始めている。
鵺の背中で作業台を出して合成をした人間はこの世界できっと初めてだろう。
「はーい、みんなーこれつけてみなー」
全員分の眼鏡とタロ用のゴーグルを作成していたようだ。
「おお、昼間のようですね師匠!」
アンダーフレーム構造、フレームはシルバーで知的な印象を与えるメガネを付けたレンはちょっと背伸びしている少年のような可愛さがある。
赤いフレームがソーカにかかると女教師のような知性と強さを感じさせる。
ヴァリィは羽ばたく蝶のようなフレーム、は流石に自重して黒縁の太めのフレーム。大人っぽさと落ち着きが出てよく似合っている。
ユキムラはオーバルの細めのフレーム、少し印象が変わって冷静な雰囲気が強まる。
「ほほう、ユキムラちゃんもレンちゃんも、ほほう……」
新刊はメガネだろうな。
「ゆ、ユキムラさんす、素敵です!」
「ソーカもよく似合っているよ」
二人がいちゃついている横でレンも地味にメガネが気に入っていた。
タロもゴーグルを付けて嬉しそうに空を駆けている。
もちろんただのメガネではない、暗視効果を付与したマジックアイテムだ。
実際には暗視も含めて、暗闇無効、暗示効果無効など様々な効果も付与してある。
【もう着きますニャ。我ら妖怪の里 夜見 ですニャ】
一画に小さな町が形成されている。提灯が下げられ長屋が立ち並ぶ、江戸のような雰囲気の街がそこに広がっていた。
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