老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件
188話 超越者
治療を終えたソーカとヴァリィがレンとタロと一緒に合流する。
「大丈夫だったソーカ? ごめん、ちょっと気を抜けないから皆もとりあえず自分の身をきっちりと守ってね」
黙って皆頷いて集中して構える。そんなつもりはユキムラにはないのだが、他のみんなからしたらじゃまにならないようにしないといけない。
ユキムラが少し前に出る。無意識にタゲを自分に集中させる動きをしてしまう。
ユキムラでもショーグンは嫌いだった。
レンが唱えるバフがユキムラに重ねられていく。
バフを自分がかけなくていい、それだけでも随分楽になった。
「サンクス」
ユキムラが飛び出す。同時にダーンと銃声が響き火縄兵からの銃撃がユキムラを襲うが狙った場所にはすでにユキムラはいない。
同時に火縄兵は白狼隊の遠距離攻撃でバラバラにされる。
ショーグンからはしっかりと距離を取って取り巻きに邪魔をさせない。
ユキムラ以外のメンバーの方針は決定した。
ユキムラは飛び込むと同時に装備を手甲に換装する。
刀の間合いの更に内側にへばりついて圧倒的な手数で一気に終わらせる。
周囲の取り巻きを他のメンバーが見事な連携で削っていってくれる。
もう一歩飛び込めば懐へ入り込める距離、ユキムラはビタッと動きを止める。
ヒュン
ユキムラの前髪がはらはらと落ちる。そして再び距離を詰めていく。
それを遠くから見ていた他のメンバーは絶句するしか無かった。
あの速度で突っ込んでいって、完全に間合いを見切って一撃を躱し、すぐさまに飛び込む。
人間業じゃない……3人は同じ感想を抱いていた。
そのころユキムラはショーグンの間合いの内側に入って更に人間離れした行動を続けていた。
ショーグンの攻撃は間合いの内部に入られたせいで普段ほど苛烈な攻撃にはなっていないが、それでもユキムラを間合いに引きずり出すために様々な攻撃をユキムラに浴びせ続けている。
ユキムラはごく限られ間合い内部の範囲で細かなステップでその攻撃全てを躱しながら攻撃を叩き込み続けている。ショーグンが焦れて大技を叩き込もうと構えようとすると的確にその一点を崩され逆に大技を叩き込まれる。
超近接戦闘の教科書のような戦い方だ。
見惚れると言うのはまさにこういうことだった。
白狼隊のほかのメンバーもリポップする取り巻きを排除しながらユキムラの動きから目を離せなかった。どの技がどの攻撃から連携するのか、何Frの時間があればどの技を発動できるのか、敵の攻撃のFr数から逆算して技を発動し始めたり、まさにユキムラの40年のプレイヤースキルの集大成と言っていい、しかしそれでも一端なのだった。
「そろそろ全体、全方位へのオーラ攻撃くるから全員距離を開けてね」
久しぶりの通信のような気もするが、まだ戦い始めてから数分しか経っていない、あまりのユキムラの華麗さに時間が経つ速度が濃縮されてしまったように錯覚する。
ユキムラの発言通りショーグンが何かを貯めるようなモーションを取る。
すでにユキムラも全員のラインまで後退している。
【ヴァァッ!!】
強力なオーラが衝撃波のように大地を、空気を振動させる。
しかし、その範囲の中には誰もいない……。
ユキムラは衝撃波が自分の前で消失したことを確認すると、また一気に間合いを詰めるために飛び込んでいく。
相手からしたら屈辱以外の何物でもないほどコントロールされた戦闘だ。
やっと振るうことが出来た一刀の戦刃もユキムラに触れること無く躱され、悪夢のような近接戦闘に引きずり込まれてしまう。
「狼牙!」
ユキムラの掌打が深々とショーグンに突き刺さる。
「虎爪!!」
連続した肘が脇腹に突き刺さる。反撃の一振りは躱される。
「鉄山靠!!!」
背部での強力な体当たり、踏み込む地面に亀裂が入りショーグンの巨体が空中へ僅かに浮くほどの衝撃だ。
「滅殺阿修羅羅刹煌!!!!」
両手から発せられる強力な発剄を全身に受けてショーグンは光となって消えていった……
ショーグンが消滅するとその空間から邪悪な気配が消える。
奥に宝箱とその横にある岩から水が湧き出し小さな水場を形成する。
どうやらボスを倒すと解放されるタイプのセーフゾーンだったようだ。
「はーーーーーー、疲れた……」
さっきまでの戦士が別人のように気の抜けたため息をユキムラがつく。
「し、ししょー!!」
レンがユキムラに飛びついて抱きつく。
「ど、どうしたんだよレン?」
「僕は調子に乗っていました! 自分ができるようになったと勘違いしていました!」
何故か泣き出しているレンにユキムラはわけがわからなかった。
ずいぶんと背が伸びたなぁ、なんて全然関係ないところに感心をする始末だ。
「ユキムラさん、勉強させていただきました。私も改めて謙虚に頑張ります」
「ほんっとユキムラちゃんって化物よね、はぁ、自信なくしそ……」
「ひどいなぁヴァリィ化物だなんて……」
「ワーオン!」
「なー? タロもそう思うだろー?」
「師匠ー! 師匠ー! 一生側でついていきます!!」
「わかった、わかったからレン離れて、近い近い……」
「ちょっとー、レン! いい加減にしなさい! 離れなさい!!」
「師匠の一番は僕なんだー! ずっと側にいるんだー!」
「痛い痛い、近い近い!」
さっきまで生きるか死ぬかの戦闘をしていたとは信じられないほどドタバタ喜劇な白狼隊。
「あらあら、仲がいいわねー。さーてタロキャンプの準備しよっか」
「わん!」
こうして、ようやく白狼隊はゆっくりと休むことが出来たのであった。めでたしめでたし。
「大丈夫だったソーカ? ごめん、ちょっと気を抜けないから皆もとりあえず自分の身をきっちりと守ってね」
黙って皆頷いて集中して構える。そんなつもりはユキムラにはないのだが、他のみんなからしたらじゃまにならないようにしないといけない。
ユキムラが少し前に出る。無意識にタゲを自分に集中させる動きをしてしまう。
ユキムラでもショーグンは嫌いだった。
レンが唱えるバフがユキムラに重ねられていく。
バフを自分がかけなくていい、それだけでも随分楽になった。
「サンクス」
ユキムラが飛び出す。同時にダーンと銃声が響き火縄兵からの銃撃がユキムラを襲うが狙った場所にはすでにユキムラはいない。
同時に火縄兵は白狼隊の遠距離攻撃でバラバラにされる。
ショーグンからはしっかりと距離を取って取り巻きに邪魔をさせない。
ユキムラ以外のメンバーの方針は決定した。
ユキムラは飛び込むと同時に装備を手甲に換装する。
刀の間合いの更に内側にへばりついて圧倒的な手数で一気に終わらせる。
周囲の取り巻きを他のメンバーが見事な連携で削っていってくれる。
もう一歩飛び込めば懐へ入り込める距離、ユキムラはビタッと動きを止める。
ヒュン
ユキムラの前髪がはらはらと落ちる。そして再び距離を詰めていく。
それを遠くから見ていた他のメンバーは絶句するしか無かった。
あの速度で突っ込んでいって、完全に間合いを見切って一撃を躱し、すぐさまに飛び込む。
人間業じゃない……3人は同じ感想を抱いていた。
そのころユキムラはショーグンの間合いの内側に入って更に人間離れした行動を続けていた。
ショーグンの攻撃は間合いの内部に入られたせいで普段ほど苛烈な攻撃にはなっていないが、それでもユキムラを間合いに引きずり出すために様々な攻撃をユキムラに浴びせ続けている。
ユキムラはごく限られ間合い内部の範囲で細かなステップでその攻撃全てを躱しながら攻撃を叩き込み続けている。ショーグンが焦れて大技を叩き込もうと構えようとすると的確にその一点を崩され逆に大技を叩き込まれる。
超近接戦闘の教科書のような戦い方だ。
見惚れると言うのはまさにこういうことだった。
白狼隊のほかのメンバーもリポップする取り巻きを排除しながらユキムラの動きから目を離せなかった。どの技がどの攻撃から連携するのか、何Frの時間があればどの技を発動できるのか、敵の攻撃のFr数から逆算して技を発動し始めたり、まさにユキムラの40年のプレイヤースキルの集大成と言っていい、しかしそれでも一端なのだった。
「そろそろ全体、全方位へのオーラ攻撃くるから全員距離を開けてね」
久しぶりの通信のような気もするが、まだ戦い始めてから数分しか経っていない、あまりのユキムラの華麗さに時間が経つ速度が濃縮されてしまったように錯覚する。
ユキムラの発言通りショーグンが何かを貯めるようなモーションを取る。
すでにユキムラも全員のラインまで後退している。
【ヴァァッ!!】
強力なオーラが衝撃波のように大地を、空気を振動させる。
しかし、その範囲の中には誰もいない……。
ユキムラは衝撃波が自分の前で消失したことを確認すると、また一気に間合いを詰めるために飛び込んでいく。
相手からしたら屈辱以外の何物でもないほどコントロールされた戦闘だ。
やっと振るうことが出来た一刀の戦刃もユキムラに触れること無く躱され、悪夢のような近接戦闘に引きずり込まれてしまう。
「狼牙!」
ユキムラの掌打が深々とショーグンに突き刺さる。
「虎爪!!」
連続した肘が脇腹に突き刺さる。反撃の一振りは躱される。
「鉄山靠!!!」
背部での強力な体当たり、踏み込む地面に亀裂が入りショーグンの巨体が空中へ僅かに浮くほどの衝撃だ。
「滅殺阿修羅羅刹煌!!!!」
両手から発せられる強力な発剄を全身に受けてショーグンは光となって消えていった……
ショーグンが消滅するとその空間から邪悪な気配が消える。
奥に宝箱とその横にある岩から水が湧き出し小さな水場を形成する。
どうやらボスを倒すと解放されるタイプのセーフゾーンだったようだ。
「はーーーーーー、疲れた……」
さっきまでの戦士が別人のように気の抜けたため息をユキムラがつく。
「し、ししょー!!」
レンがユキムラに飛びついて抱きつく。
「ど、どうしたんだよレン?」
「僕は調子に乗っていました! 自分ができるようになったと勘違いしていました!」
何故か泣き出しているレンにユキムラはわけがわからなかった。
ずいぶんと背が伸びたなぁ、なんて全然関係ないところに感心をする始末だ。
「ユキムラさん、勉強させていただきました。私も改めて謙虚に頑張ります」
「ほんっとユキムラちゃんって化物よね、はぁ、自信なくしそ……」
「ひどいなぁヴァリィ化物だなんて……」
「ワーオン!」
「なー? タロもそう思うだろー?」
「師匠ー! 師匠ー! 一生側でついていきます!!」
「わかった、わかったからレン離れて、近い近い……」
「ちょっとー、レン! いい加減にしなさい! 離れなさい!!」
「師匠の一番は僕なんだー! ずっと側にいるんだー!」
「痛い痛い、近い近い!」
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