老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件
137話 奥の間
「お疲れ様ー……いてて、結構ボロボロだなー必死だったから」
「知恵熱が出てしまいそうです師匠……」
ユキムラの指示に必死に食らいついて、様々な魔法を行使していたレンはようやく開放されため息をつく。
ユキムラがポンポンと頭を撫でてあげると子犬みたいにレンは喜んでいる。
「ソーカ、左足大丈夫?」
「!? 気が付かれたんですか? ええ、もうだいぶ治っています」
ソーカの左足には大きな打撲痕が出来ていた。
氷龍の体当たりがかすめただけで粉砕骨折をしていた。
すぐにユキムラが回復魔法を飛ばして治していたのだが、ソーカはレンが治療したのかと思っていた。
「ごめんソーカねーちゃん僕気がついてなかった……」
シュンとしてしまうレンにソーカが優しく声をかける。
「レンは自分の役目を一生懸命やったんだから謝る必要はないわ。私も回復魔法は使えるしね」
「そうだよレン、あの状態は気がつけなかったよ。全体を支える作業をしていたんだから謝る必要はない」
「それにしても、最後の方の技は見たことも聞いたこともない凄まじいレベルのものでしたね……」
タロと一緒にサイレスとレックスも合流する。口々に先程の戦いでの白狼隊の活躍を褒めちぎる。
レンはノリノリでレックス達の賛辞にドヤァと胸を張るが、ユキムラは先程の事を思い出して少し赤面してしまう。
「久々に使いましたが、設置に時間がかかるので皆さんの協力があって助かりました」
気恥ずかしさを誤魔化すために話題を変えていく。
「タロもありがとね。お二人も大変だったでしょうに」
「いやー、こんなに血湧き肉躍る戦いに参加できただけでも感謝しても仕切れない。
タロが攻守に渡ってフォローしてくれたのでなんとか生きて終えられたよ、ありがとう」
タロに深々と頭を下げる二名。タロは嬉しそうに尻尾を振っている。
「さて、宝と扉か……奥の人を助けろって言ってたよね」
VOではたまに連続してボス戦がある時があった。
ただ、普通は最初に出たボスが妙に弱かったりと分かり易いフラグがあったりする。
多分大丈夫だろうけど一応用心はして全員の回復は完璧に行っておく。
アンデッド氷龍を倒した報酬である宝の内容は、慣れてきていた二人も顎が外れかけるものだった。
「お、アイスソードだ。コロシテデモウバイトル」
「なんですか師匠それは?」
「ああ、ちょっとしたギャグなんだけどね、武器としてもかなりハイレベルだよ。
魔力を込めて振るうと吹雪が起こせます」
「な、なんですかそれ……」
「オートスキルって奴なんだけど、たぶんフィールドで使うと気象が狂うね」
「また女神から苦情が来そうですね」
「ソーカの言うとおりこれはしまっておこう」
「今女神って……」
適当にごまかした。
それ以外にも様々な宝を手に入れ休憩も十分に取れた。
残るは部屋の奥の扉だけだ。
「さて、何が出るか。開けるよ」
扉の向こうには氷の間が広がっていた。
そして中央に天高くから地面に向かって、巨大な氷の柱がそびえていた。
「師匠! あそこ!」
レンが指差すところにまるで人が貼り付けられているかのように、しかし、その胸には大きな穴。
男性と思われるその人は真っ白な髪、真っ白な肌、そして巨大な胸の穴。
生きてはいないだろう状態で貼り付けられていた……
「これは……? どういうことなんだ……?」
ユキムラが柱に近づいていくと、アイテムボックスから勝手に時の女神クロノスから貰った懐中時計が現れる。
「おおっと!」
突然空中に現れた時計を受け止めようとするが、時計は空中に浮いている。
柱に吊るされた人物から、はらりと一粒の雪の結晶が舞い落ちてくる。
ユキムラ達はそのひと粒の雪に思わず見とれてしまう。
ふわりふわりと落ちてくる美しい結晶。
その白き輝きが懐中時計に触れると、キーーーーーーーーーーーーーンと高い音を発し、周囲を静寂が包む。
「これは……?」
先程まで周囲の氷がピシピシと立てていた音なども全て消えて、耳に痛いほどの無音の世界。
「師匠、これは……?」
「ユキムラさん……」
不安そうな二人。
「ワンワン!」
タロがサイレスとレックスに吠える。二人はまるで凍ってしまったかのように一切の動きを失っていた。
「サイレスさん? レックスさん!?」
思わず駆け寄ろうとするユキムラを謎の声が遮る。
『そのもの達は来訪者の加護を受けていないからな』
「誰だ!?」
レンとソーカが武器に力を込める。
『ありがとう、君たちがクロノスの力を持ってきてくれたのでこうして話すことができる』
ユキムラ達の目の前に、あの貼り付けられた男性がふわりと音もなく舞い降りる。
頭上には今も変わらず貼り付けられた姿は残っている。
『私の最後の力の残り滓がクロノスの力を借りて話しかけているんだよ』
その男性は優しく微笑む。ユキムラでもドキリとしてしまうほど透き通った爽やかな笑みだ。
真っ白な長髪が揺れる。肌も恐ろしいほどに白い。細めな目が瞳の輝きを隠している。
髪と同じく真っ白なローブを羽織っている。浮世離れした人物に見える。
『紹介が遅れたね、私の名前はアイルス。氷と知性の神だ。
まぁ、すでに事切れて2000年は経っているけどね』
「2000年……?」
『ああ、2000年程前に魔神の手先に殺られてしまってね。
外に龍がいただろ?
彼女が守っていてくれたんだが、私の力もとうとう途切れてしまって。
彼女には悪いことをした、あの魔神の力に抵抗し続けてくれていたんだが、私の力が残り少ないとわかると、その最後の生命の炎まで私に……彼女は無事に逝けたかい?』
本当に悲しそうに話すアイルス。
ユキムラは彼女であった龍の最後を説明する。
『そうか……、しかし、まさかここまで非道な手に出るとはな。
魔神に対して静観していたのが間違いだったようだ。
来訪者も呼んだとなれば主も覚悟を決めたのだろう』
アイルスはその細い目を開く。
吸い込まれそうな美しい青い瞳。
そしてとんでもないことを言う。
『今から君に過去へ跳んでもらう』
「知恵熱が出てしまいそうです師匠……」
ユキムラの指示に必死に食らいついて、様々な魔法を行使していたレンはようやく開放されため息をつく。
ユキムラがポンポンと頭を撫でてあげると子犬みたいにレンは喜んでいる。
「ソーカ、左足大丈夫?」
「!? 気が付かれたんですか? ええ、もうだいぶ治っています」
ソーカの左足には大きな打撲痕が出来ていた。
氷龍の体当たりがかすめただけで粉砕骨折をしていた。
すぐにユキムラが回復魔法を飛ばして治していたのだが、ソーカはレンが治療したのかと思っていた。
「ごめんソーカねーちゃん僕気がついてなかった……」
シュンとしてしまうレンにソーカが優しく声をかける。
「レンは自分の役目を一生懸命やったんだから謝る必要はないわ。私も回復魔法は使えるしね」
「そうだよレン、あの状態は気がつけなかったよ。全体を支える作業をしていたんだから謝る必要はない」
「それにしても、最後の方の技は見たことも聞いたこともない凄まじいレベルのものでしたね……」
タロと一緒にサイレスとレックスも合流する。口々に先程の戦いでの白狼隊の活躍を褒めちぎる。
レンはノリノリでレックス達の賛辞にドヤァと胸を張るが、ユキムラは先程の事を思い出して少し赤面してしまう。
「久々に使いましたが、設置に時間がかかるので皆さんの協力があって助かりました」
気恥ずかしさを誤魔化すために話題を変えていく。
「タロもありがとね。お二人も大変だったでしょうに」
「いやー、こんなに血湧き肉躍る戦いに参加できただけでも感謝しても仕切れない。
タロが攻守に渡ってフォローしてくれたのでなんとか生きて終えられたよ、ありがとう」
タロに深々と頭を下げる二名。タロは嬉しそうに尻尾を振っている。
「さて、宝と扉か……奥の人を助けろって言ってたよね」
VOではたまに連続してボス戦がある時があった。
ただ、普通は最初に出たボスが妙に弱かったりと分かり易いフラグがあったりする。
多分大丈夫だろうけど一応用心はして全員の回復は完璧に行っておく。
アンデッド氷龍を倒した報酬である宝の内容は、慣れてきていた二人も顎が外れかけるものだった。
「お、アイスソードだ。コロシテデモウバイトル」
「なんですか師匠それは?」
「ああ、ちょっとしたギャグなんだけどね、武器としてもかなりハイレベルだよ。
魔力を込めて振るうと吹雪が起こせます」
「な、なんですかそれ……」
「オートスキルって奴なんだけど、たぶんフィールドで使うと気象が狂うね」
「また女神から苦情が来そうですね」
「ソーカの言うとおりこれはしまっておこう」
「今女神って……」
適当にごまかした。
それ以外にも様々な宝を手に入れ休憩も十分に取れた。
残るは部屋の奥の扉だけだ。
「さて、何が出るか。開けるよ」
扉の向こうには氷の間が広がっていた。
そして中央に天高くから地面に向かって、巨大な氷の柱がそびえていた。
「師匠! あそこ!」
レンが指差すところにまるで人が貼り付けられているかのように、しかし、その胸には大きな穴。
男性と思われるその人は真っ白な髪、真っ白な肌、そして巨大な胸の穴。
生きてはいないだろう状態で貼り付けられていた……
「これは……? どういうことなんだ……?」
ユキムラが柱に近づいていくと、アイテムボックスから勝手に時の女神クロノスから貰った懐中時計が現れる。
「おおっと!」
突然空中に現れた時計を受け止めようとするが、時計は空中に浮いている。
柱に吊るされた人物から、はらりと一粒の雪の結晶が舞い落ちてくる。
ユキムラ達はそのひと粒の雪に思わず見とれてしまう。
ふわりふわりと落ちてくる美しい結晶。
その白き輝きが懐中時計に触れると、キーーーーーーーーーーーーーンと高い音を発し、周囲を静寂が包む。
「これは……?」
先程まで周囲の氷がピシピシと立てていた音なども全て消えて、耳に痛いほどの無音の世界。
「師匠、これは……?」
「ユキムラさん……」
不安そうな二人。
「ワンワン!」
タロがサイレスとレックスに吠える。二人はまるで凍ってしまったかのように一切の動きを失っていた。
「サイレスさん? レックスさん!?」
思わず駆け寄ろうとするユキムラを謎の声が遮る。
『そのもの達は来訪者の加護を受けていないからな』
「誰だ!?」
レンとソーカが武器に力を込める。
『ありがとう、君たちがクロノスの力を持ってきてくれたのでこうして話すことができる』
ユキムラ達の目の前に、あの貼り付けられた男性がふわりと音もなく舞い降りる。
頭上には今も変わらず貼り付けられた姿は残っている。
『私の最後の力の残り滓がクロノスの力を借りて話しかけているんだよ』
その男性は優しく微笑む。ユキムラでもドキリとしてしまうほど透き通った爽やかな笑みだ。
真っ白な長髪が揺れる。肌も恐ろしいほどに白い。細めな目が瞳の輝きを隠している。
髪と同じく真っ白なローブを羽織っている。浮世離れした人物に見える。
『紹介が遅れたね、私の名前はアイルス。氷と知性の神だ。
まぁ、すでに事切れて2000年は経っているけどね』
「2000年……?」
『ああ、2000年程前に魔神の手先に殺られてしまってね。
外に龍がいただろ?
彼女が守っていてくれたんだが、私の力もとうとう途切れてしまって。
彼女には悪いことをした、あの魔神の力に抵抗し続けてくれていたんだが、私の力が残り少ないとわかると、その最後の生命の炎まで私に……彼女は無事に逝けたかい?』
本当に悲しそうに話すアイルス。
ユキムラは彼女であった龍の最後を説明する。
『そうか……、しかし、まさかここまで非道な手に出るとはな。
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