老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件
99話 パーティ戦
「ヴァリィ、ソーカいつもレンの魔法を意識してまとめるように立ち回ってー、釣るときは壁に寄せる感じ。そうすれば自分も背後守れるでしょー。レンもそういう動きをしてくれることを考えてそれを助けるように、あと常にバフ、デバフの時間管理と魔法のCTは体に染みつけてね。タロはかわいいねー」
ユキムラによるブートキャンプは絶賛継続中だ。
今戦っているのはアースオーガ、オーガ種の中ではそこまで巨大ではないが、それでも2mは超えている。基本的には近接攻撃にたけているが、膂力を用いた弓攻撃や、あまり得意ではないが一部は魔法も使う。
今の敵のパーティ構成は、両手剣というか石の塊を振り回す戦士、鉄製の剣を使う剣士、大きな両手持ちの斧を振るう戦士、弓使い、魔法使いの5体を相手している。
ヴァリィは敵の攻撃を見事にさばき続けていて理想的なタンクとして機能している。
その隙にソーカが弓や魔法を阻害しつつ確実に敵前衛に手傷を負わせている。
ダメージソースはレンによる魔法攻撃だ。味方への援護、敵への阻害、そして攻撃。
一番負担は大きい。ユキムラはほとんど指示だけを出している。
ユキムラが出たらもう戦闘は終わっていることが全員わかっているので、貴重な実戦での指導を必死に自分の身体に叩き込んでいる。
タロはほんの少しでも綻びそうなときに的確に、その綻びを事前に修正していく。
ユキムラでさえもこれほどのバランサーをVOプレイ時代に見たことがないほどの働きだ。
「レン、バフ切らしすぎ。あとあいつらは地属性なんだから火につなげる魔法使おうね、精神魔法とかはもう少し高度な知能持つ方が効くから。
ヴァリィはすごくよかったよ。壁としてどんどん今後も頑張って。
ソーカはダメージをばらけすぎかな、タゲ管理をしながら最初にこいつを落とすって計画をしっかりと立てて、いち早く敵の数減らしていこう」
みんな死んだ目でユキムラからの指摘を聞いている。
この調子で戦闘ごとに徹底的にダメ押しをされ続ける。
ユキムラに悪意はない。悪意がないから逆につらい。
自分ができていないことに恥じるしかできない。
それでも何度も戦闘を重ねることでパーティーとしての動きができてくると、ユキムラの指示の意味もより明確に理解できるし、それがどれだけ的確な指示だったのか理解できてくる。
ヴァリィがソーカから聞いた話はユキムラを見て、そして尊敬すれば新しい世界が開く。
というまぁ宗教のような話だった。
しかし戦闘において、自分以外の皆の戦いかたが自分自身より高いレベルにいることは間違いなく、それなりの修羅場を超えて手に入れた力が、若い人間にあっさりと超えられるような悔しさもあった。
それでも素直にユキムラのいうことは自分の身体に入ってきた。
そして自分自身が今までの鍛錬をあっさり覆すほどに成長を実感できていた。
そして、その扉を開くのに時間はさほどかからなかった。
現在は37階。数限りない戦闘を繰り返してきて、問題点を指摘され、それを直すことで自分が成長する。それは麻薬のようなものだった。
もっと高くへ行ける。ユキムラの言葉で自分が間違いなく成長できている。
長年の修練と苦難を経て高みへ至ったと勘違いしていた自分をとんでもない高さへと連れてって行ってくれる。ユキムラに信仰にも近い感情が生まれるのは仕方のないことだ。
そういった精神状態がヴァリィをもう一つ高いステージへと連れていくことになる。
これは完全な洗脳に近い方法なのだが、残念ながら皆気がつけない。
ダークエルフのパーティとの戦闘中にその変化は訪れた。
素早い剣士の攻撃を見事に捌き、同時に襲い掛かって来た剣士の胸部を撃ち抜き一撃のもとに絶命させた。まさにその瞬間だった。
感知できない死角からの一撃。倒した敵の遺体が一瞬仲間のダークエルフアサシンの身体を覆い隠し、命を懸けた不意の一撃を生み出したのだ。
流石に他の人間が俯瞰視点で状態を把握していても防げない一撃だった。
タロとユキムラは気がついていたが、ユキムラが微妙なヴァリィの動きの変化を感じ取ってタロに目配せして様子を見た。
ヴァリィは一瞥することもなくその一撃をひらりと避けて、そのアサシンの首筋に一撃を食らわせた。そこから自分の視界に新たな進化がなされたことを知る。
レンやソーカから聞いていた周囲の状態の把握、ヴァリィもこの戦いを通してVOのバトルシステムを手に入れることに成功したのだ。
「ヴァリィも見えるようになったみたいだね。最初は頼りすぎないように気をつけてね」
「ちょ、なんで分かるのよ! ほんと怖いわ……」
ユキムラは途絶えることなく全体への指示とダメ出しを的確に続けている。
その中で能力発現を寸分たがわぬタイミングで指摘してきたユキムラにヴァリィは少し恐怖した。
どれだけ全体を把握しているのだろうか……
ユキムラは状況を見ているんじゃなくて感じていた。
何十年もモニターを通して見える範囲のすべてを把握することを、息を吸うように続けてきた結果。
意識することなく理解出来ているというわけのわからない能力を手に入れている。
味方や敵の動き、配置、行動から予言にも近い予測が勝手に導き出される。あとは現実との僅かなズレに対応していくというプレイスタイル。
「レン、狙うのはそっちじゃなくて隣、そうすれば射線を使って今狙っている方の行動も制限できる」
こんな指示が出せるのもそういった能力の賜物だ。
レンはまだ狙おうと考えただけで行動に移していない、しかしその視線の動きや無意識の予備動作から狙いを把握し、その問題点を指摘する。
こんなことを続けられたらユキムラは神なのか? と勘違いしても仕方がない。
こうしてユキムラの神格化はより高まっていくのであった。
また、この一連の指導を収めた記録はサナダ隊の教本となり、どんどん信者を増やしていくことになる。
ユキムラによるブートキャンプは絶賛継続中だ。
今戦っているのはアースオーガ、オーガ種の中ではそこまで巨大ではないが、それでも2mは超えている。基本的には近接攻撃にたけているが、膂力を用いた弓攻撃や、あまり得意ではないが一部は魔法も使う。
今の敵のパーティ構成は、両手剣というか石の塊を振り回す戦士、鉄製の剣を使う剣士、大きな両手持ちの斧を振るう戦士、弓使い、魔法使いの5体を相手している。
ヴァリィは敵の攻撃を見事にさばき続けていて理想的なタンクとして機能している。
その隙にソーカが弓や魔法を阻害しつつ確実に敵前衛に手傷を負わせている。
ダメージソースはレンによる魔法攻撃だ。味方への援護、敵への阻害、そして攻撃。
一番負担は大きい。ユキムラはほとんど指示だけを出している。
ユキムラが出たらもう戦闘は終わっていることが全員わかっているので、貴重な実戦での指導を必死に自分の身体に叩き込んでいる。
タロはほんの少しでも綻びそうなときに的確に、その綻びを事前に修正していく。
ユキムラでさえもこれほどのバランサーをVOプレイ時代に見たことがないほどの働きだ。
「レン、バフ切らしすぎ。あとあいつらは地属性なんだから火につなげる魔法使おうね、精神魔法とかはもう少し高度な知能持つ方が効くから。
ヴァリィはすごくよかったよ。壁としてどんどん今後も頑張って。
ソーカはダメージをばらけすぎかな、タゲ管理をしながら最初にこいつを落とすって計画をしっかりと立てて、いち早く敵の数減らしていこう」
みんな死んだ目でユキムラからの指摘を聞いている。
この調子で戦闘ごとに徹底的にダメ押しをされ続ける。
ユキムラに悪意はない。悪意がないから逆につらい。
自分ができていないことに恥じるしかできない。
それでも何度も戦闘を重ねることでパーティーとしての動きができてくると、ユキムラの指示の意味もより明確に理解できるし、それがどれだけ的確な指示だったのか理解できてくる。
ヴァリィがソーカから聞いた話はユキムラを見て、そして尊敬すれば新しい世界が開く。
というまぁ宗教のような話だった。
しかし戦闘において、自分以外の皆の戦いかたが自分自身より高いレベルにいることは間違いなく、それなりの修羅場を超えて手に入れた力が、若い人間にあっさりと超えられるような悔しさもあった。
それでも素直にユキムラのいうことは自分の身体に入ってきた。
そして自分自身が今までの鍛錬をあっさり覆すほどに成長を実感できていた。
そして、その扉を開くのに時間はさほどかからなかった。
現在は37階。数限りない戦闘を繰り返してきて、問題点を指摘され、それを直すことで自分が成長する。それは麻薬のようなものだった。
もっと高くへ行ける。ユキムラの言葉で自分が間違いなく成長できている。
長年の修練と苦難を経て高みへ至ったと勘違いしていた自分をとんでもない高さへと連れてって行ってくれる。ユキムラに信仰にも近い感情が生まれるのは仕方のないことだ。
そういった精神状態がヴァリィをもう一つ高いステージへと連れていくことになる。
これは完全な洗脳に近い方法なのだが、残念ながら皆気がつけない。
ダークエルフのパーティとの戦闘中にその変化は訪れた。
素早い剣士の攻撃を見事に捌き、同時に襲い掛かって来た剣士の胸部を撃ち抜き一撃のもとに絶命させた。まさにその瞬間だった。
感知できない死角からの一撃。倒した敵の遺体が一瞬仲間のダークエルフアサシンの身体を覆い隠し、命を懸けた不意の一撃を生み出したのだ。
流石に他の人間が俯瞰視点で状態を把握していても防げない一撃だった。
タロとユキムラは気がついていたが、ユキムラが微妙なヴァリィの動きの変化を感じ取ってタロに目配せして様子を見た。
ヴァリィは一瞥することもなくその一撃をひらりと避けて、そのアサシンの首筋に一撃を食らわせた。そこから自分の視界に新たな進化がなされたことを知る。
レンやソーカから聞いていた周囲の状態の把握、ヴァリィもこの戦いを通してVOのバトルシステムを手に入れることに成功したのだ。
「ヴァリィも見えるようになったみたいだね。最初は頼りすぎないように気をつけてね」
「ちょ、なんで分かるのよ! ほんと怖いわ……」
ユキムラは途絶えることなく全体への指示とダメ出しを的確に続けている。
その中で能力発現を寸分たがわぬタイミングで指摘してきたユキムラにヴァリィは少し恐怖した。
どれだけ全体を把握しているのだろうか……
ユキムラは状況を見ているんじゃなくて感じていた。
何十年もモニターを通して見える範囲のすべてを把握することを、息を吸うように続けてきた結果。
意識することなく理解出来ているというわけのわからない能力を手に入れている。
味方や敵の動き、配置、行動から予言にも近い予測が勝手に導き出される。あとは現実との僅かなズレに対応していくというプレイスタイル。
「レン、狙うのはそっちじゃなくて隣、そうすれば射線を使って今狙っている方の行動も制限できる」
こんな指示が出せるのもそういった能力の賜物だ。
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