老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件
48話 豪邸
「この中央の建物が行政の中心となる庁舎となります」
真っ白な壁が眩しい巨大な建造物だ。
どっかでみた神殿にも似た荘厳な雰囲気まで発している。
「師匠の執務室もあるのでいずれ紹介しますが、まだ建築が終わっていませんので、取り敢えず公邸へ向かいましょう。あ、あとギルドの建物はあちらに変更になりました」
白と黒、実際には深い茶色なのだが対象的な力強い建物。
以前のイメージよりも二回りは巨大になっている。
「内部イメージは以前のものと変わっていませんが、今後のこの村の発展を考えるとこれくらいの規模は必要だろうと練り直しました」
「そ、そういえばレンはなんでそんな実情に詳しいのかな?」
「それはそうでしょ、師匠への連絡はすべて僕を通して行われますから、師匠は作成や発明に熱中してると連絡が取れませんからね」
「そ、そうだよね、なんかごめんね」
「いえ、師匠のお手伝いができて幸せですよ僕は。
ただ少しきちんとお話を聞いていただけたらな、って思うだけですよ」
「はい……スミマセン」
どっちが上かわからない会話をしながら中央に位置する庁舎、ギルドを抜ける。
広場のように草原が残っており、そこを円で囲うように道が伸びていく。
噴水があったりして中央広場的な場所なんだろう。
美しく真っ白な石で打たれた道が続いていく。
緑の草原にわざと緩いカーブをつけて敷かれた道が美しい。
その先には赤い屋根が特徴的な家、というかお屋敷と言ったほうが良さそうな建物がある。
馬車は白い道を真っ直ぐにその建物へと進んでいく。
ユキムラは嫌な予感に襲われている。
そして、馬車はその建物の前へと進み、止まる。
「師匠着きましたよここが師匠の「嫌だ!」
レンは首から上だけをギギギギギギと擬音でも立ちそうな感じでユキムラに振り返る。
笑顔が凍りついて怖い、すごく怖い。
「し・しょ・う? これも確認の図面をお渡ししました。
早く降りてください」
「はい」
町の中央の広大な土地に巨大な家。
現実世界で一応額面上は大金持ちだったユキムラだが狭い部屋に引きこもるのが好きな男だ。
正直この見世物みたいな家には不満だらけだがレンの氷の微笑には逆らえない。
「ここが師匠のお部屋です」
通された部屋をみて心底安心した。
昔のまんまでごちゃごちゃしてる。
庭にも各種製造場所がありちょっとした製造ドックみたいになっている。
「出来る限り以前の雰囲気を残しています。
その方が師匠も喜ぶと思いまして」
「ありがとうレン!」
レンを抱っこして頭をワシャワシャとかき乱してあげる、やっぱりレンはレンだった。クシャッとした人懐っこい笑顔が一番似合う。
「ただ師匠、ここはあくまで実務室にしてきちんと食事や睡眠はそれぞれの部屋でとってくださいね」
むしろもうお母さんみたいだ。
「師匠にさらに朗報があります。ついてきてください」
ユキムラはレンに連れられて廊下を歩く、途中お手洗いやらの場所を教えてもらう。
広くて絶対に迷いそうだったけど、レンの提案で最低限のものはコンパクトに纏められていた。
なんか階段を二つほど登った。
「ここです、どうぞ開けてください」
真っ白い両開きの木製の扉を開けると、以前レンと作った脱衣場だ。
「お風呂か!」
そのまま奥の引き戸を開ける。
目の前に空が見える。
3階部分に開けた庭園を作りそこに浴室が作られていた。
目線の方向に逆らって目隠しの作りになっているので風は通って開放感はあるものの、下からはこの浴室が見えない配慮がされています。
ついでに簡易結界も貼られているので外部からの侵入は感知されます。
大騒ぎできるように音声遮断もボタン一つで可能です。
半分は室内、そして屋外へも出られ露天風呂と内風呂がそれぞれ作られている。
「おお、これは凄い!」
「師匠はお風呂が大好きですからね、こだわらせてもらいました」
「これは嬉しいな、ありがとうレン」
レンもユキムラに褒められて本当に嬉しそうに笑っている。
さて、街の中心の豪邸を押し付けられたユキムラこと新村長。
もちろん帰宅したことはすぐに村中に知れ渡り、ユキムラ新村長就任、お帰り祭りが行われるのは当然だ。村総出でユキムラ邸前の広場に祭り会場が設営されていく。
ユキムラは自室の使い勝手を確かめながら幾つか考えていたことを形にしようとしていた。
巨大化した街にびびったものの、やはりこういう時間は好きで仕方なかった。
現存する資材の一覧と備蓄がまとめられた報告書を眺めながら、現状かなりの資源が使用可能になっている現実に満足してひとりニヤニヤしている。
基本的にVOの箱庭要素の一つである拠点発展ミニゲームは、素材を一定数集め次の発展に必要なアイテムを作って、それを使って新しい素材が採取可能になって、の繰り返しだ。
木のピッケル作ると石が取れるようになって石のピッケルを作れば鉄が取れるようになる。
簡単に言えばそういう感じだ。
これがなかなか絶妙で複数の要素を組み合わせるとまた取れるものが増えて、それがあるとまた別のアイテムのキーが開いて、なんてやってると朝になるなんてよくあることだった。
大体の製造レシピを覚えているユキムラは現状の素材からいくつかの道具を作成する。
一度作成すればレシピが作れるので作成スキルを持つ工業部へと回される。
そして量産されていく。
道具は採掘部隊、採取部隊へと迅速に配布され新たな素材が増えていく。
後はもうエンドレスだ。
VOは褒め言葉としての頭がオカシイほどの製造レシピがある。
それを追い求めているだけでも十年くらいは経過するとユキムラは考えている。
ただ、ストーリーを勧めていくと、魔神やら魔王やら出てきて世界に危機が訪れてしまう。
正直ユキムラはここで製造して人生を終えていってもそれはそれで楽しいだろうなぁと考えている。
(ストーリーを進めていくことで沢山のダンジョンもでてくるし、そこで手に入る素材も多いからなぁ……
女神の復活、神の再誕イベントなんかも、まぁやらないわけには行けないんだろうなぁ……
この世界に連れてきてもらった女神にも約束をしたし、出来る限り防備も整えて魔王や魔神に人間が抵抗出来るようになったら進めるか……)
この時のなんとなくの思いつきだったが、これが後の世で、魔王や魔神にとっての悲劇の始まりになることをまだ誰も知る由もなかった。
真っ白な壁が眩しい巨大な建造物だ。
どっかでみた神殿にも似た荘厳な雰囲気まで発している。
「師匠の執務室もあるのでいずれ紹介しますが、まだ建築が終わっていませんので、取り敢えず公邸へ向かいましょう。あ、あとギルドの建物はあちらに変更になりました」
白と黒、実際には深い茶色なのだが対象的な力強い建物。
以前のイメージよりも二回りは巨大になっている。
「内部イメージは以前のものと変わっていませんが、今後のこの村の発展を考えるとこれくらいの規模は必要だろうと練り直しました」
「そ、そういえばレンはなんでそんな実情に詳しいのかな?」
「それはそうでしょ、師匠への連絡はすべて僕を通して行われますから、師匠は作成や発明に熱中してると連絡が取れませんからね」
「そ、そうだよね、なんかごめんね」
「いえ、師匠のお手伝いができて幸せですよ僕は。
ただ少しきちんとお話を聞いていただけたらな、って思うだけですよ」
「はい……スミマセン」
どっちが上かわからない会話をしながら中央に位置する庁舎、ギルドを抜ける。
広場のように草原が残っており、そこを円で囲うように道が伸びていく。
噴水があったりして中央広場的な場所なんだろう。
美しく真っ白な石で打たれた道が続いていく。
緑の草原にわざと緩いカーブをつけて敷かれた道が美しい。
その先には赤い屋根が特徴的な家、というかお屋敷と言ったほうが良さそうな建物がある。
馬車は白い道を真っ直ぐにその建物へと進んでいく。
ユキムラは嫌な予感に襲われている。
そして、馬車はその建物の前へと進み、止まる。
「師匠着きましたよここが師匠の「嫌だ!」
レンは首から上だけをギギギギギギと擬音でも立ちそうな感じでユキムラに振り返る。
笑顔が凍りついて怖い、すごく怖い。
「し・しょ・う? これも確認の図面をお渡ししました。
早く降りてください」
「はい」
町の中央の広大な土地に巨大な家。
現実世界で一応額面上は大金持ちだったユキムラだが狭い部屋に引きこもるのが好きな男だ。
正直この見世物みたいな家には不満だらけだがレンの氷の微笑には逆らえない。
「ここが師匠のお部屋です」
通された部屋をみて心底安心した。
昔のまんまでごちゃごちゃしてる。
庭にも各種製造場所がありちょっとした製造ドックみたいになっている。
「出来る限り以前の雰囲気を残しています。
その方が師匠も喜ぶと思いまして」
「ありがとうレン!」
レンを抱っこして頭をワシャワシャとかき乱してあげる、やっぱりレンはレンだった。クシャッとした人懐っこい笑顔が一番似合う。
「ただ師匠、ここはあくまで実務室にしてきちんと食事や睡眠はそれぞれの部屋でとってくださいね」
むしろもうお母さんみたいだ。
「師匠にさらに朗報があります。ついてきてください」
ユキムラはレンに連れられて廊下を歩く、途中お手洗いやらの場所を教えてもらう。
広くて絶対に迷いそうだったけど、レンの提案で最低限のものはコンパクトに纏められていた。
なんか階段を二つほど登った。
「ここです、どうぞ開けてください」
真っ白い両開きの木製の扉を開けると、以前レンと作った脱衣場だ。
「お風呂か!」
そのまま奥の引き戸を開ける。
目の前に空が見える。
3階部分に開けた庭園を作りそこに浴室が作られていた。
目線の方向に逆らって目隠しの作りになっているので風は通って開放感はあるものの、下からはこの浴室が見えない配慮がされています。
ついでに簡易結界も貼られているので外部からの侵入は感知されます。
大騒ぎできるように音声遮断もボタン一つで可能です。
半分は室内、そして屋外へも出られ露天風呂と内風呂がそれぞれ作られている。
「おお、これは凄い!」
「師匠はお風呂が大好きですからね、こだわらせてもらいました」
「これは嬉しいな、ありがとうレン」
レンもユキムラに褒められて本当に嬉しそうに笑っている。
さて、街の中心の豪邸を押し付けられたユキムラこと新村長。
もちろん帰宅したことはすぐに村中に知れ渡り、ユキムラ新村長就任、お帰り祭りが行われるのは当然だ。村総出でユキムラ邸前の広場に祭り会場が設営されていく。
ユキムラは自室の使い勝手を確かめながら幾つか考えていたことを形にしようとしていた。
巨大化した街にびびったものの、やはりこういう時間は好きで仕方なかった。
現存する資材の一覧と備蓄がまとめられた報告書を眺めながら、現状かなりの資源が使用可能になっている現実に満足してひとりニヤニヤしている。
基本的にVOの箱庭要素の一つである拠点発展ミニゲームは、素材を一定数集め次の発展に必要なアイテムを作って、それを使って新しい素材が採取可能になって、の繰り返しだ。
木のピッケル作ると石が取れるようになって石のピッケルを作れば鉄が取れるようになる。
簡単に言えばそういう感じだ。
これがなかなか絶妙で複数の要素を組み合わせるとまた取れるものが増えて、それがあるとまた別のアイテムのキーが開いて、なんてやってると朝になるなんてよくあることだった。
大体の製造レシピを覚えているユキムラは現状の素材からいくつかの道具を作成する。
一度作成すればレシピが作れるので作成スキルを持つ工業部へと回される。
そして量産されていく。
道具は採掘部隊、採取部隊へと迅速に配布され新たな素材が増えていく。
後はもうエンドレスだ。
VOは褒め言葉としての頭がオカシイほどの製造レシピがある。
それを追い求めているだけでも十年くらいは経過するとユキムラは考えている。
ただ、ストーリーを勧めていくと、魔神やら魔王やら出てきて世界に危機が訪れてしまう。
正直ユキムラはここで製造して人生を終えていってもそれはそれで楽しいだろうなぁと考えている。
(ストーリーを進めていくことで沢山のダンジョンもでてくるし、そこで手に入る素材も多いからなぁ……
女神の復活、神の再誕イベントなんかも、まぁやらないわけには行けないんだろうなぁ……
この世界に連れてきてもらった女神にも約束をしたし、出来る限り防備も整えて魔王や魔神に人間が抵抗出来るようになったら進めるか……)
この時のなんとなくの思いつきだったが、これが後の世で、魔王や魔神にとっての悲劇の始まりになることをまだ誰も知る由もなかった。
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