ロシアンルーレットで異世界へ行ったら頭脳派の魔法使いになっていた件【三部作】
20-175.助っ人
小悪鬼達が距離を詰め、三列目が矢を放たんとしたその時。
――ブシャ。
何かが寸断される音がした。小悪鬼達の最後列あたりで緑の血飛沫が舞う。小悪鬼の隊列が乱れ、キキッと鳴き声が上がる。
(今だ!)
ヒロは、ソラリスに一瞬だけ目線をやると、バリアを解除した。同時に発動させていた炎粒を小悪鬼めがけて投げつける。その名の通り、片手で覆い隠せるほどの小さな炎だ。
ヒロは炎粒を複数同時に発動させることは出来なかったが、連続で発動させては次々と発射することでそれを補った。これだけの数だ。きちんと狙いをつける必要もない。いくつかは外れるものもあったが、半数以上は小悪鬼に命中する。
ヒロの炎粒は小悪鬼の盾を貫き、その身を焦がしていく。キキキィと耳をつんざく小悪鬼の声がホールに響きわたる。
混乱と恐慌が小悪鬼達に襲いかかっていた。小悪鬼達は、隊列など忘れたかのようにバラバラになった。逃げる者もいれば、狂気に満ちた風貌で剣を振りかざす者もいた。
ヒロ達に向かってきた小悪鬼もいたが、もはや統制も何もない。彼らはひとつずつ、ソラリスの剣の錆となっていく。
(このまま押し切れるか)
ヒロがそう思った時、恐怖に駆られた小悪鬼が手当たり次第に矢を放ってきた。狙いも禄につけていないが、狙って避けられる数ではない。そのいくつかは確実にヒロ達に中る。だが炎魔法で攻撃中のヒロにバリアを張る時間は残されていなかった。
「リーの平安」
ヒロの背後からエルテの透き通った声が響いた。彼女はその手をタクトの様に振った。と、その白い指先から風の弾丸が飛び出し、小悪鬼の矢を迎撃する。一呼吸、二呼吸の間に小悪鬼の矢は全て打ち落とされた。
「炎線斬!」
  ピンチを凌いだヒロは炎粒による攻撃を止め、炎線斬を発動させた。乱戦に成りつつあるこの状況で、炎粒による遠隔攻撃は同士討ちになる恐れがある。それに小悪鬼達の背後で突如起こった混乱の正体も見極める必要があった。ならば、攻撃先をある程度コントロールできる炎線斬の方が適している。
ヒロの指先から炎のブレードが伸び、小悪鬼達を襲う。その炎は小悪鬼の盾を両断し、幾体かの小悪鬼の手足を貫いた。
小悪鬼は、まるでこの世の終わりかのような声を上げ、ヒロが放つ炎の刃を避けようと逃げまどう。
「ソラリス!」
ヒロの言葉を待つまでもなく、ソラリスはダッシュしていた。赤毛の剣士はヒロの意図を瞬時に理解した。ヒロの炎線斬から逃げる小悪鬼を一匹ずつ始末する。ヒロの炎魔法に恐れおののく小悪鬼には、ソラリスの剣など目に入らない。易々とカラスマルの餌食となった。
ヒロが最後に残った小悪鬼を炎線斬で両断すると、その先に二つの人影があった。
「ロンボク!」
「ミカキーノ!」
ヒロとソラリスがほぼ同時に声をあげた。
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