ロシアンルーレットで異世界へ行ったら頭脳派の魔法使いになっていた件【三部作】

日比野庵

17-146.あたいからクエストの発注だ

 
「ヒロさん、パーティ『アラニス・エマ』確かに登録いたしました。初登録ですので、ランキングはフリー。年間で獲得する報酬額がC1ランク最下位を超えるとランキング入れ替え戦への参加資格が与えられます。入れ替え戦の優勝者はランクアップします。パーティランクは全部で……」
「C1からAまでだったっけ? ちなみに入れ替え戦には何組も参加するのかい?」

 ヒロが口を挟む。ランキングシステムの存在はこの間、ラルルに教えて貰っていたが、入れ替え戦については聞いていなかった。そのときは自分がパーティを組むとは考えていなかったからでもあった。

「はい。去年ですと、フリーから三組参加しました。獲得賞金は正金貨百枚相当ですね。毎年、大学の卒業式の日を締め切りにして、年間ランキングが確定します。残念ですけど、卒業式まであと幾日もありませんから、ヒロさんのパーティは、今年はちょっと難しいかもしれませんね」
「いや、そんなことは考えてないから気にしないでくれ」

 ラルルから組紐を返して貰ったヒロに今度はソラリスが声を掛けた。

「ヒロ、ちょいと組紐を貸しな」

 ソラリスは腰からナイフを抜くと、ヒロから手渡された組み紐を二十センチばかり三本切り取る。残った長い部分をヒロに返し、短い組み紐をリムとエルテに一本ずつ渡す。

 ソラリスは自分用の一本を左の手首に結ぶと、リムにも同じ様にしてやる。エルテも自分で手首に巻き付けた。

「ヒロ、残りはお前のだよ」

 ソラリスの言葉にヒロは素直に従った。三色組紐を左手首に付ける。ヒロの組紐は長さがあったから、ぐるぐるっと三重巻きにした。

「これで、あたいらはヒロおまえのパーティのメンバーだ。よろしく頼むぜ、リーダー」
「よろしくお願いします、ヒロ様」

 ソラリスとリムが挨拶する。よろしくと頷き返すヒロにエルテも微笑みを投げかける。

「ヒロさん、道案内は私が務めさせていただきます。足手纏いにならないよう頑張りますので、よろしくお願いしますわね」

 黒衣の不可触ブラック・アンタッチャブルが足手纏いだなんてとんでもない。足手纏いになるのは俺の方だよ、とヒロは苦笑した。

「ヒロさん、パーティを組まれるということはモンスター討伐か何かですか? 今、フリーのパーティに御紹介出来そうなのは……」

 ラルルが後ろの机から台帳を取ろうと振り向いたのだが、それは叶わなかった。ソラリスが懐から取り出した皮袋をカウンターに置いたからだ。

「ラルル。あたいからクエストの発注だ。あたい達はこれからフォーの迷宮探索に行く。大した用じゃないんだが、万一ということもある。十日経っても戻ってこなかったら、捜索隊を出してくれ。この金で雇える奴でいいが、あのフォーの迷宮は大人数じゃ無理だから、なるべくランクの高い冒険者で頼むぜ」
「え、は、はい。フォーの迷宮ですか。確かに未攻略迷宮ですけど、マナ吸引エナジードレインを別にすれば、そんなに危険なモンスターが出没するという報告は上がって来てないですよ。小悪鬼ゴブリンはよく出るみたいですけど……」
「だから万が一さ。あたいも危ない橋を渡る積もりはねぇさ」
「はい。では、探しておきます。十日ですね」

 ラルルの返事にソラリスは満足そうに頷いた。
 

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