ロシアンルーレットで異世界へ行ったら頭脳派の魔法使いになっていた件【三部作】

日比野庵

16-139.フォーの迷宮には何かありそうだ

 
「ヒロ、貴方はどう思います? 我々は石板の文字が読めない。ですから、このお嬢リムさんの言うことが本当か否かの判断ができません。貴方の先入観なしの意見を聞かせてください」

 ヒロはシャロームにおやという顔を見せた。エルテに協力している以上、たとえ石板に記されていることが分からなくても、エルテの言うことが正しいという前提で動いていると思っていたからだ。

「その前に君はどう思っているんだ。シャローム。君はエルテに協力しているんだろう? 今更、石板の真偽を疑うような発言をするのは理解できないが」
「だからこそですよ。仰る通り私はこの件でエルテに協力していますし、石板のことも本当だと思っています。けれども、それ故に目が曇ることがある。自分が肩入れしていることは、知らない間についつい贔屓目に見てしまうものですからね。そんなときこそ、他者の冷静な意見を聞きたいのです。自分が間違えない為にもね」
「なるほど」

 ヒロは頷いた。やはりこの男シャロームは優れた人物だ。いかなる時も正しい判断を下せるよう気を配っている。流石は一代で事を成しているだけのことはある。彼は将来大物になるのだろうなと、この時ヒロは感じていた。

「俺も君と同様に石板の文字は読めない。だが、リムの言った内容は本当だと思う。リムが今此処で石板の写しをハートに折って見せた事がその理由さ。普通に考えれば、石板を折ってみようだなんて、まず誰も考えない。写しだったからこそ出来ることだ。折り方だって色々あるだろうに、エルテが代々伝えられてきたという魔法印と同じハートに折って見せ、それがぴたりと文字になった。しかもその文字は、リムが言うところの、当時の王族と神官しか読めない宮廷文字と来ている。つまり、暗号としてみた場合、この石板は二重、三重にロックを掛けていると言える。代々受け継いでいく以上、石板に残すのは当然だとしても、解読されて宝を盗まれる事がないようにと考えたのだろうね。大したものだよ。だから俺は、この石板は本物だと思う」

 ヒロは、リムには嘘をいう理由がないと付け加えると、カップを手にとり、渋い茶を飲む。その視線の先でシャロームが笑みを浮かべていた。

「やはりヒロあなたもそう思いますか。私も同感です」

 シャロームは自分の頭に手をやったが、帽子を被ってないことに気づくと、口元を苦笑いへと変化させた。

「エルテ、リムが今読んだ石板の内容からすると、フォーの迷宮には何かありそうだ。あとはどうやって探索するかだが……」

 ヒロは視線をエルテからソラリスに向けた。
 

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