ロシアンルーレットで異世界へ行ったら頭脳派の魔法使いになっていた件【三部作】

日比野庵

16-134.やっぱり落書きじゃねぇのかい?

 
 ヒロは二枚の羊皮紙を比べるように視線を移動させた。勿論、その文様は読めなかったが、四隅にのみ記され、真ん中が空いているところなど、で書かれたものであることは明らかだった。

「この隅に書かれたフォーの神殿という文字以外は読めないという訳なんだな?」
「その通りですわ」
「実は文字ではなく唯の模様で、何の意味もないということはないのか?」
「そうだとしたら、わざわざ石板に残して代々ラクシス家に伝える必要はありません。きっと秘密が隠されている筈ですわ」
「ふむ」

 エルテの言う事は筋が通っている。家宝になるということはそれだけの謂われがある筈だ。だが、今の段階では読める古語で書かれたフォーの迷宮しか手掛かりはない。

 ソファに背中を預けて考え込むヒロの横から、ソラリスとリムが羊皮紙を覗き込む。

「あたいは古語は読めねぇんだけどよ。さっきヒロも言ったが、やっぱり落書きじゃねぇのかい? 大して書いてないし、途中で削り取られたようにも見える。とても意味があるようには見えないね」

 ソラリスはヒロが気づいた事と同じ点を指摘した後、両手の平を上にしてお手上げのポーズを取る。もともとこの話には乗り気でなかったソラリスだが、石板の写しをみて、やっぱりガセネタではないのかと疑っているようだ。

 何も分からないかと手詰まり感が漂う中、リムだけは違っていた。

「えと、ちょっと見せて貰ってもいいですか?」

 リムが羊皮紙の片方を手にとってエルテに見せる。

「えぇ、何か有りまして?」
「ありがとうございます」

 エルテに礼をいったリムは、羊皮紙を両手に持って、暫くじっと見つめていた。やがて、羊皮紙をテーブルに戻すと、パタパタと折り紙の要領で何かを折り始めた。

「おい、リム、勝手にそんな事……」
「いえ、大丈夫ですわ。折ったくらいで破れはしませんから」

 ヒロがリムを咎めようとするのをエルテが制した。興味深そうにリムの手元を見つめている。

「エルテ、ヒロから聞いたんだけどよ、フォーの迷宮の地図を持っているんだってな。ちくっと見せて貰えねぇかな」

 ソラリスは、懸命に折り紙をしているリムを見やってから、エルテに視線を戻した。
 

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