ロシアンルーレットで異世界へ行ったら頭脳派の魔法使いになっていた件【三部作】
16-130.ようこそ、お待ちしていました
――翌日の朝。シャローム商会。
ヒロとリム、そしてソラリスの三人は、シャローム商会二階の応接室に通される。
三人が中央のテーブルを囲むソファに腰を降ろしてしばらくすると、部屋の奥の扉が開いた。
「ようこそ。お待ちしていました」
シャロームの快活な声が響く。シャロームは始めてヒロと会ったときと同じ、体にフィットしたシャツに細身のパンツを履いている。シャロームに続いてエルテが部屋に入ってきた。エルテも一昨日会ったときと同じ、薄紫のコットの上に袖のついた黄色のシュルコを纏っていた。額には魔法具でもある白のサークレットをしている。額にサークレットを着けるのは、冒険者の代理人であることの証だ。彼女があの黒衣の不可触だったと言われても、まず誰も信じないだろう。
「いや、こちらこそ」
シャロームはヒロの答えにニコリとすると、エルテと並ぶように、ヒロの対面のソファに座り、エルテを紹介する。
「改めて紹介いたします。こちらの彼女がアラニスのエルテ。今回の依頼人です」
エルテが軽く会釈をする。ヒロは軽く頷いた後、自分の左に座る仲間を紹介する。
「エルテ、シャローム。こっちの娘がリム、精霊見習いだ。二人とは既に会ったかと思うが」
リムが椅子からぴょんと立ち上がって挨拶する。
「リムです。よろしくお願いします。シャロームさん、エルテさん。またお会いできて光栄です」
「こちらこそ」
エルテがリムに微笑みを投げかける。続いてヒロは、右に座っているソラリスに視線を送る。
「そして、こちらがソラリス。俺に冒険者になるよう勧めてくれたベテラン冒険者だ」
「初めまして、シャロームと申します。『ギフトのソラリス』と対面できるとは光栄です」
「私はエルテ。宜しくお願いしますわ」
「あぁ、よろしくな」
シャロームとエルテがソラリスに握手を求めたが、ソラリスはイヤな顔一つ見せずに応じた。一昨日、彼女は全く乗り気でなかった様子を見せていたのだが、そんな素振りはおくびも見せない。大人の態度だ。ソラリスとリムにはエルテが黒衣の不可触だったと知らせていたのだが、ソラリスはその事は口にしなかった。
コンコンと扉をノックして、女性店員がポットとカップを持って入ってくる。女性店員は、落ち着いた所作で皆にお茶を淹れると、一礼して静かに部屋を出ていった。
ヒロは普通に茶を啜ったが、リムとソラリスは手を付けない。ヒロから、団子虫茶じゃないよと言われてリムがそっと口を付けたが、うっと苦い顔をした。
「では、改めて説明させていただきますわ」
シャロームから目で合図を受けたエルテは、静かに語り出した。
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