学校一のオタクは死神でした。

ノベルバユーザー203842

第50話 ヒーローと射撃とスマホ

*第50話 ヒーローと射撃とスマホ *


「なによ…これ……」

私の目の前に広がる光景…

4人の軍服の男達…

何人もの怯えた軍服の男達…

そして、ニッコリと不吉な笑いを浮かべながら、それを眺める1人の少年…神藤…新…

「貴女、もしかしてこの事知らなくて死神様と一緒にいるわけ?」

「………知らなか…った……」

「ふふふ…こんなことも知らずに死神様の隣にいようだなんて、図々しいですわ。」

ふふん、と笑うエリザベスさん…

確かに私は神藤君のことを知らなかった…

ただ、勉強のできるオタクとしか…



だが…“問題なのはそこでは無かった”…




「…………“ヒー……ロー”…」




私が幼い頃、見覚えがあった…

私を救ってくれた…“ヒーロー”の姿を…

私の…“憧れた”…“ヒーロー”の姿を…

だが、その姿は幼い頃に見たものと“全く同じ”なのだ…

私が見たのはまだ幼い、幼稚園の頃…

神藤君であるはずがない…

私が見た、ヒーローと彼に何か関係があるのだろうか…?

分からない…

ただ…


「…………カッコイイ……」


そう思った…



* * *



「んじゃ、お互いの実力を知れたところで。そろそろ、始めよっか?」


「「「「「ヒッッッッッッ‼︎‼︎‼︎」」」」」


野次を立てていた男達はあからさまに怯えていた…

何しろ、其々の部隊隊長4人を、たった1人であっさりと倒してしまったのだから…

「いや、大丈夫だから…ちゃんと“死なない程度”に気絶させただけだから。…はぁ…分かったよ、分かった…今から、そこにぶっ倒れている4人起こすから…ちょっと待ってろ…」

4人のうちの1人に近づき、顔の真横にしゃがみ込み、人差し指を立て、その人差し指を倒れている奴の眉間に突き立てた…

そして……


「     “起きろ”     」


殺気を一点に集中させ、眉間にぶち当てた。

すると、バッ‼︎と男がバネのように飛び起きた…

「グットモーニーング?
ハロハロ?
お元気?」


「俺は…今まで何を…?」

「気絶してたんだよ?
俺とのgameに負けて。」

俺がそういうと、男はハッとなり、何か悩むように頭を抱え、自分の体を抱きしめながら小刻みに震えた…

そして、一つの“疑問”が浮かぶ…


「俺は………“何をされたんだ”…?」


「ん?殺気を脳に直接ぶち当てただけだぞ?」


即答した。
しばらくの沈黙…


「………は?」


う〜ん…やっぱり、それ言われただけじゃ分からないか…

「え〜っと、人間の感覚にはある程度の限界があるんだよ。
で、俺は君に、その“限界を超えた衝撃”、今回は、“殺気”をぶち当てたというわけ。
オーケー?」


「…………無茶苦茶だ…」

「そうだね。確かに無茶苦茶だ。
でも、それを可能にしたのが俺、“死神”だよ。」

俺がニッと笑うと、それに応えるように男は苦笑した…

「俺の名は、クラッド…β部隊隊長。今日から、指導、よろしくお願いします。」

「おう。任せとけ。
っとはいっても、今日は“普段通りのトレーニングを見せてもらうだけだけどね”?」

「…………は?」

「もっと言えば、俺は今日、お前達に何もしない。
ただ、見学するだけ。」

クラッドはキョトンとしている…

「俺が指導するのは明日からな?
今日は、どっちかと言ったら、俺がお前達に指導を受けるから。」

「…………は?」

さらにキョトンとしている…

う〜ん…一様、頼むか…

「俺に、“鉄砲”の使い方教えて❤︎」

「…………………………………………は?」

「いや、俺使ったことないんだよ。鉄砲。
ほとんど、今俺が背負ってる、デカイ鎌使ってるからさ〜」

「……………………。」

「ん?どったの?」

「…………あの…ひとつお聞きしてもいいっすか…?」

「どうぞ?」


「まさかだとは思うんですけど…今まで“飛び道具無しで”、指名手配犯捕獲してたんすか…?」


「うん?そうだけど?」


即答する。
クラッドは、はは…と苦笑し、ばたりと倒れ、地面に寝転がると…


「ははは…こりゃ勝てるわけねぇわ…」


そう思って当然だ。
何しろ、指名手配犯の中には、軍隊をも手を焼いた程のものもいたのだ。
それを、飛び道具一切使わずに全員を捕獲しているのだ…


はっきり言って、“ありえない”



* * *



訓練所にて、俺は最初にハンドガンの使い方を習った。

「で、ここを利き手でしっかりと握り、トリガーに人差し指をかける。
もう片方の手は添える程度で握る」

「ほうほう」

「最初は衝撃が強いので、両手で使うのが無難です。」

「なるほど?」

「そして、腕をまっすぐに伸ばし狙いをつける。
銃口の先にある、出っ張った部分を使うと狙いやすいです。」

「ほへ〜」

「狙いが定まったら、トリガーを引くと玉が出ます。
結構、衝撃が強いので、しっかり握ってください。」

「オーケー」

「じゃあ、あそこにある的に向かって打って見てください。
最初は真ん中に当たらないと思いますが、慣れれば当たります。」

ふん?なるほど?
とりあえず、打って見るか。

あそこにあると言っても、50メートル程離れた場所にある

狙いを定め、しっかりと握り、トリガーを引いた…


ドゥッンッッッッ‼︎‼︎‼︎


打った瞬間、ビリビリと振動が伝わり、自然と髪の毛が逆立つ…

「ヘェ〜、初めてにしては、なかなか上手いですね。」

「そうなの?」

「いや、的を見てくださいよ。」

すると、クラッドから双眼鏡を渡される

的を見ると、中心の少し下に穴が空いていた。

「ほぉ〜結構、いい感じ?」

「凄いですよ‼︎初めてでこれほどまで正確に当たるとは‼︎」

周りからの声も「惜しい‼︎」「スゲー‼︎」関心の声ばかりであった。

ふん。もうちょいか…

「じゃあ、二発目いっきまーす。」


ドゥッンッッッ‼︎‼︎‼︎


「今度はどうかな〜?………へ?」

「ん?どうしたんだ?クラッド?」

「………………ええっと…………………………………ど真ん中っす………」

「「「「「へ?」」」」」

「え?マジで‼︎
本じゃあもう一発‼︎」

先肌と同じ感じで、もう一度、トリガーを引く…


ドゥッンッッッッッッ‼︎‼︎‼︎


「………………………………………………………。」

「どうだったん‼︎?どうだったん‼︎どこ当たったん‼︎?」

俺は、少し興奮気味で、固まるクラッドに声をかける。

「……………ええっと…穴が…増えてないんですよね…………」

「「「「「は?」」」」」

「ん?じゃあ外れ?」

「…………いや、当たったんすけど…………丁度、“さっきのど真ん中に当たった穴を通過した”みたいで…………」


「「「「「「は?はぁっっ‼︎⁉︎」」」」」」


「おう。超いい感じじゃね?」


「「「「「「……………………。」」」」」」

「ええっと…じゃあ、次はサブマシンガンやってみましょうか…?」

「おう‼︎よろしく頼む‼︎」



* * *



ダガガガガガガガッッ‼︎


「…………ど真ん中……」



* ライフル *



ズッギャンッッッッッ‼︎‼︎


「………………………ど真ん中………」



* アサルトライフル *



ガキュッゥウンッッッ‼︎


「……………………………………ど真ん中…」



* スナイパーライフ *



プシュッ‼︎‼︎


「………………………………………………………………ど真ん中……」

「ふん。なるほど。
とりあえず、全部覚えた。
俺、今日初めて打ったけど、結構いい感じだなw」


「「「「「「「「いい感じ過ぎるわ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」」」」」」」


その場にいる全員にツッこまれた…
何でだろう?

何故ツッこまれたか全く分からないまま、鉄砲の使い方を覚えた、新であった…



* 今朝 *



まだ、日が昇っていないころ…
昨日頼んだ荷物を受け取りに、俺はリズの家の“屋根の上”にいた。

目の上に手を当て、遠くの空を見ていた。

すると、見ていた先がわずかに光る…

「……………………来た…」

自分を目掛けて何かが猛スピードで飛んでくる…

それはあたかも隕石のように飛んできた…

それが、直撃する瞬間、体を右に少し傾け、直撃を回避し、飛んできた“荷物を結び付けられた無刃の鎌”の柄を握り、円を描くように降り、勢を殺す…

そして、勢いが完全に止まった頃、ふと、ズボンのポケットから…

『ウウゥ〜〜〜〜〜〜〜(パトカーのサイレン)‼︎
キキッ(ブレーキの音)‼︎
バカッ(ドアの開く音)‼︎
ガッガッガッガッ(砂利を踏む音)…
「もしもし?」
「着メロかい‼︎⁉︎」』

という音が聞こえてきた…

そんな着メロを流しながら、バイブレーションをしているスマホをとり、電話にでる。

嵐からだ…

『もしもし?マスター?』

「はいはい。繋がってるよ?」

『荷物は無事届きましたか?』

「あ、うん。
バッチリだよ。
いや、すごい精密に狙ったね。」

『ありがとうございます…
それと、一つ聞いてもいいですか…?』

「ん?何?」

『とても言いにくいのですが…

こんな方法で荷物を届けなくても、gateゲートでこちらまで取りに来ればよかったのではないでしょうか…?』


………………………………
………………………………………………………。


「…………一回やって見たかったんだよ…」

『…………。』

日が昇り始め、爽やかな風が吹くイタリアの朝…

日本とイタリアの間で、しばらくの沈黙が訪れた…

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