日常日記
朝市にて
今日は、荷物を減らそうと思っていた。
だって……交通費がない!
昨日色々と準備をしていたので、一睡もしていない。
朝市だから朝の8時からあるのだ。
低血圧と言うか、睡眠導入剤を飲むようになってから朝が起きられない。
いや、最初は軽いものからだったが、飲んでも眠れない……それ以上に、音に敏感になってしまって、薬を飲んでも眠れない日々が続く。
酷い頭痛と目が冴えて悶々とする。
目の下のくまがパンダになる。
七時半。
もう少し前に出るつもりだったが、着替えにタブレットなどに出遅れた。
その上、玄関で荷物を落としてしまい、慌ててばらまいた荷物をまとめ、出発する。
タクシーだとワンメーターからツーメーターだが、歩くと20分。
でも、日傘もささず早足で進んでいった。
荷物は減らしたので進むのは早い。
で、到着すると、何とか8時前。
しかし、オーナーが来ていない。
もう一人の人も来るかどうか曖昧だったので、一応市の関係者に挨拶をして、テントを組み立てようとすると、手伝ってくれた。
ホッとする。
日差しはすでにギラギラしていて、汗かきの私は、ぼたぼたと汗が滴り落ちていた。
汗を拭きながら、持って来たものを綺麗に並べて行きつつ、道を歩く人に挨拶をして行く。
「おはようございます」
隣のテントは前回までみかんの詰め放題だったが、もう季節が違うので、あまりお客は来ていないらしい。
と、
「おはよう。お姉ちゃんのこの可愛いぬいぐるみはいくらぞね?」
「あ、おはようございます。こっちの大きい子が100円で、キーホルダーは50円です」
「安いねぇ?何で?」
「いえ、UFOキャッチャーで友人がとったのを引き受けてるんですよ」
「それでも安いねぇ」
ぬいぐるみの顔が見えるようにしつつ、
「そうなんですよ。いかがですか?」
「じゃぁもらおうかねぇ」
「ありがとうございます!どの子がいいですか?」
「そうやねぇ……」
と熊のぬいぐるみを三つ買ってくれたおばあちゃんは、お金を払ってくれると、
「悪いんやけど、お姉ちゃん。ぬいぐるみ置いといてもらえるかねぇ?他の人のテントに行くつもりやったのに荷物になるけん」
「えぇ。大丈夫です。お預かりします」
と預かり、わかるように籠の中に置いておく。
しばらくして戻って荷物を受け取り、ニコニコと帰っていった。
あぁよかった。
そして、今度もおばあちゃん。
でもお会いしている顔だったので、確か常連さんだ。
「おはようございます。いらっしゃいませ」
「お姉ちゃん、久しぶりやねぇ。また可愛い子がおるねぇ。うちは、動物が可愛いんよ。で、前にお姉ちゃんのお店にきたけんねぇ、おるかなぁと思って」
「わぁ。ありがとうございます。新しい子もいるんですよ」
「本当やねぇ。それに、うちは、セーラームーンとかも大好きだったんよ」
「あっ!」
表に周り、立てていたクリアファイルのセットを見せる。
「実は、これ、解ります?」
「あっ!」
「これ四種類あるんですが、全部揃っているのです。それと、限定メモ帳も付いてます」
「ちょうだい!幾ら?千円くらい?」
「いえいえ、常連さんですし、300円でいいです」
「そんなんでええんかね」
いいも何も、小さいクリアファイルだったのでもったいなくて使えずにしまいこんでいたので、逆に欲しいと言われる方がありがたい。
「じゃぁ、これとこれと、これも買うわ」
と、900円分購入してくれた。
いつもなら売れないのに、こんなに買ってもらえるとは!
しかも、
「ちょっと知り合いがお店出す言うけん、見にいこう思うんよ。預かっとってくれん?」
「えぇ、良いですよ。分かるように置いておきますね」
「ありがとう。じゃぁいってこうわい」
「行ってらっしゃい」
オーナーが来ていないのにもうこんなに売れた!
嬉しくなり、お隣に行くと、四種類の柑橘のジュースが生ビールとかが入っているプラスチックのカップに半分が100円、一杯が200円と書いていた。
「何があるんですか?」
「はれひめと紅マドンナ、温州みかん、不知火……デコポンやね」
「……えっと、甘いのをお願いします」
と言うことで、はれひめになった。
飲んでみると、本当に甘く、これぞオレンジジュース!の味。
テントに戻り飲みながら、あ、と思い出す。
「着物を仕立て直しているお店で詰め放題!綺麗な端切れ無いかなぁ。友禅はないだろうけど大島とか欲しいなぁ」
とそわそわしているとオーナーが到着。
オーナーは自分のお店が忙しく抜けられなかったそうで、その上早めに戻る。
「おはようございます。どう?売れた?」
「はい。千円くらいです」
「凄いじゃないの」
私のしているフリマは友人や家族のいらないものを売って、売れた額は友人たちに渡す。
それに、売れなかったら寄付する。
出店料は半分もらう。
つまりは赤字が多い。
千円売れても出店料はこの朝市は前払い。
一年間で3000円。
でも、一回いくらと割ってみると、かなり出店料が抑えられる。
時々自分の作ったものも置いておく。それが売れると利益になる。
そして、オーナーは準備しながら、
「お店は見ておくから、見に行きたいところ行ってらっしゃい」
「本当ですか?ありがとうございます」
言いながらいそいそと出かける。
詰め放題のお店である。
「おはようございます〜!今日も詰め放題してますか?」
「あぁ、前のお姉ちゃんか」
「実は、前回譲ってもらった布で色々作っているんです。今回も素敵な布があったらと思って」
「はい、見てみて。大島も少しはあるはず」
「えっと、大島は……」
柄が多く、今回は迷う。
「これが大島で、これが紬」
「これは絞りですよね」
「あぁ、ここにもあった」
と出してもらいながら詰めて行く。
しかし、時間が迫っているのと、焦りもあって入らない。
「あぁ、この柄もはっきりしていて欲しいです。詰められるかなぁ」
「ひとまわり大きい袋あげるけん、詰めてお帰りや」
「えぇ?良いんですか?ありがとうございます!」
大きい袋にぎっしり持って、ホクホクと帰って行った。
「お帰り。凄いわね」
「そうなんです。嬉しいです」
すると、先ほどのおばあちゃんが戻って来て、
「お姉ちゃん。知り合いのお店でこれ買うて来たわい」
「わぁ。素敵ですね。飾るんですよね」
「そうそう。で、お揃いの布でコースター」
「可愛いですね」
とハンドメイドの作品を見る。
「お姉ちゃんのお店のものをもろて帰ろうと思ったんやけど、これは?」
「あぁ、これは懸賞で当たった、あのキャラクターのぬいぐるみです。CMにも出てますよね」
「これもえぇなぁ。それに、これは?」
私の今回数少ないハンドメイド作品である。
「あ、これは……」
「これももらおうわい。で、さっき選ばんかったこの子も」
と帰りは、1150円買ってくれた。
「ありがとうございます」
「こちらこそありがとう。宝物が増えたわ」
と言いながら帰って行くおばあちゃんに頭を下げた。
それからもいくつか売れて、3000円弱売れた。
その頃には、オーナーは仕事に戻ると言って帰っていき、自分はどうしようと思っていたら、
二軒隣のテントの方が袋を持って来てくれた。
「これ、余りで悪いけど食べてえや」
「ありがとうございます。えっとこれは?」
中身を見ると、こぶし大のサザエが四つ。
慌ててオーナーに電話をかけると、
「貴方がお食べなさいな」
「でも、オーナーが買いに行っているテントですよ?」
「良いの良いの。刹那さんは今日はいいことだらけね」
電話の向こうで、オーナーが笑っている。
「本当ですね。ありがとうございます。じゃぁいただきます」
片付けて帰ったら、慣れない手つきで料理して、サザエの炊き込みご飯を作った。
そしてお隣から桃を貰っていたので、冷やしてデザートに。
食べて一言。
「うーん!今日はラッキーデー!」
今日はゆっくり眠れるなぁと嬉しくなった。
だって……交通費がない!
昨日色々と準備をしていたので、一睡もしていない。
朝市だから朝の8時からあるのだ。
低血圧と言うか、睡眠導入剤を飲むようになってから朝が起きられない。
いや、最初は軽いものからだったが、飲んでも眠れない……それ以上に、音に敏感になってしまって、薬を飲んでも眠れない日々が続く。
酷い頭痛と目が冴えて悶々とする。
目の下のくまがパンダになる。
七時半。
もう少し前に出るつもりだったが、着替えにタブレットなどに出遅れた。
その上、玄関で荷物を落としてしまい、慌ててばらまいた荷物をまとめ、出発する。
タクシーだとワンメーターからツーメーターだが、歩くと20分。
でも、日傘もささず早足で進んでいった。
荷物は減らしたので進むのは早い。
で、到着すると、何とか8時前。
しかし、オーナーが来ていない。
もう一人の人も来るかどうか曖昧だったので、一応市の関係者に挨拶をして、テントを組み立てようとすると、手伝ってくれた。
ホッとする。
日差しはすでにギラギラしていて、汗かきの私は、ぼたぼたと汗が滴り落ちていた。
汗を拭きながら、持って来たものを綺麗に並べて行きつつ、道を歩く人に挨拶をして行く。
「おはようございます」
隣のテントは前回までみかんの詰め放題だったが、もう季節が違うので、あまりお客は来ていないらしい。
と、
「おはよう。お姉ちゃんのこの可愛いぬいぐるみはいくらぞね?」
「あ、おはようございます。こっちの大きい子が100円で、キーホルダーは50円です」
「安いねぇ?何で?」
「いえ、UFOキャッチャーで友人がとったのを引き受けてるんですよ」
「それでも安いねぇ」
ぬいぐるみの顔が見えるようにしつつ、
「そうなんですよ。いかがですか?」
「じゃぁもらおうかねぇ」
「ありがとうございます!どの子がいいですか?」
「そうやねぇ……」
と熊のぬいぐるみを三つ買ってくれたおばあちゃんは、お金を払ってくれると、
「悪いんやけど、お姉ちゃん。ぬいぐるみ置いといてもらえるかねぇ?他の人のテントに行くつもりやったのに荷物になるけん」
「えぇ。大丈夫です。お預かりします」
と預かり、わかるように籠の中に置いておく。
しばらくして戻って荷物を受け取り、ニコニコと帰っていった。
あぁよかった。
そして、今度もおばあちゃん。
でもお会いしている顔だったので、確か常連さんだ。
「おはようございます。いらっしゃいませ」
「お姉ちゃん、久しぶりやねぇ。また可愛い子がおるねぇ。うちは、動物が可愛いんよ。で、前にお姉ちゃんのお店にきたけんねぇ、おるかなぁと思って」
「わぁ。ありがとうございます。新しい子もいるんですよ」
「本当やねぇ。それに、うちは、セーラームーンとかも大好きだったんよ」
「あっ!」
表に周り、立てていたクリアファイルのセットを見せる。
「実は、これ、解ります?」
「あっ!」
「これ四種類あるんですが、全部揃っているのです。それと、限定メモ帳も付いてます」
「ちょうだい!幾ら?千円くらい?」
「いえいえ、常連さんですし、300円でいいです」
「そんなんでええんかね」
いいも何も、小さいクリアファイルだったのでもったいなくて使えずにしまいこんでいたので、逆に欲しいと言われる方がありがたい。
「じゃぁ、これとこれと、これも買うわ」
と、900円分購入してくれた。
いつもなら売れないのに、こんなに買ってもらえるとは!
しかも、
「ちょっと知り合いがお店出す言うけん、見にいこう思うんよ。預かっとってくれん?」
「えぇ、良いですよ。分かるように置いておきますね」
「ありがとう。じゃぁいってこうわい」
「行ってらっしゃい」
オーナーが来ていないのにもうこんなに売れた!
嬉しくなり、お隣に行くと、四種類の柑橘のジュースが生ビールとかが入っているプラスチックのカップに半分が100円、一杯が200円と書いていた。
「何があるんですか?」
「はれひめと紅マドンナ、温州みかん、不知火……デコポンやね」
「……えっと、甘いのをお願いします」
と言うことで、はれひめになった。
飲んでみると、本当に甘く、これぞオレンジジュース!の味。
テントに戻り飲みながら、あ、と思い出す。
「着物を仕立て直しているお店で詰め放題!綺麗な端切れ無いかなぁ。友禅はないだろうけど大島とか欲しいなぁ」
とそわそわしているとオーナーが到着。
オーナーは自分のお店が忙しく抜けられなかったそうで、その上早めに戻る。
「おはようございます。どう?売れた?」
「はい。千円くらいです」
「凄いじゃないの」
私のしているフリマは友人や家族のいらないものを売って、売れた額は友人たちに渡す。
それに、売れなかったら寄付する。
出店料は半分もらう。
つまりは赤字が多い。
千円売れても出店料はこの朝市は前払い。
一年間で3000円。
でも、一回いくらと割ってみると、かなり出店料が抑えられる。
時々自分の作ったものも置いておく。それが売れると利益になる。
そして、オーナーは準備しながら、
「お店は見ておくから、見に行きたいところ行ってらっしゃい」
「本当ですか?ありがとうございます」
言いながらいそいそと出かける。
詰め放題のお店である。
「おはようございます〜!今日も詰め放題してますか?」
「あぁ、前のお姉ちゃんか」
「実は、前回譲ってもらった布で色々作っているんです。今回も素敵な布があったらと思って」
「はい、見てみて。大島も少しはあるはず」
「えっと、大島は……」
柄が多く、今回は迷う。
「これが大島で、これが紬」
「これは絞りですよね」
「あぁ、ここにもあった」
と出してもらいながら詰めて行く。
しかし、時間が迫っているのと、焦りもあって入らない。
「あぁ、この柄もはっきりしていて欲しいです。詰められるかなぁ」
「ひとまわり大きい袋あげるけん、詰めてお帰りや」
「えぇ?良いんですか?ありがとうございます!」
大きい袋にぎっしり持って、ホクホクと帰って行った。
「お帰り。凄いわね」
「そうなんです。嬉しいです」
すると、先ほどのおばあちゃんが戻って来て、
「お姉ちゃん。知り合いのお店でこれ買うて来たわい」
「わぁ。素敵ですね。飾るんですよね」
「そうそう。で、お揃いの布でコースター」
「可愛いですね」
とハンドメイドの作品を見る。
「お姉ちゃんのお店のものをもろて帰ろうと思ったんやけど、これは?」
「あぁ、これは懸賞で当たった、あのキャラクターのぬいぐるみです。CMにも出てますよね」
「これもえぇなぁ。それに、これは?」
私の今回数少ないハンドメイド作品である。
「あ、これは……」
「これももらおうわい。で、さっき選ばんかったこの子も」
と帰りは、1150円買ってくれた。
「ありがとうございます」
「こちらこそありがとう。宝物が増えたわ」
と言いながら帰って行くおばあちゃんに頭を下げた。
それからもいくつか売れて、3000円弱売れた。
その頃には、オーナーは仕事に戻ると言って帰っていき、自分はどうしようと思っていたら、
二軒隣のテントの方が袋を持って来てくれた。
「これ、余りで悪いけど食べてえや」
「ありがとうございます。えっとこれは?」
中身を見ると、こぶし大のサザエが四つ。
慌ててオーナーに電話をかけると、
「貴方がお食べなさいな」
「でも、オーナーが買いに行っているテントですよ?」
「良いの良いの。刹那さんは今日はいいことだらけね」
電話の向こうで、オーナーが笑っている。
「本当ですね。ありがとうございます。じゃぁいただきます」
片付けて帰ったら、慣れない手つきで料理して、サザエの炊き込みご飯を作った。
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