日常日記

ノベルバユーザー173744

テディベアを診る。【1123のお話】

先日、友人からメールが来た。

『刹那~写メに送ったテディベアなんだけど、アンティークっぽくって。手足は動くんだけど……うち、子供が小さいでしょ?送るね~あげる』

写メにはお鼻がつんとしているものの、素朴な印象のテディベアがキョトンとした顔をしていた。



友人はテディベアにそんなに詳しくはない。
私はある程度詳しいとはいえ、所詮しょせん付け焼き刃、大丈夫だろうか……と思いつつ届くのを待った。
箱の中に座っていたのは想像より軽いテディベアだった。
私の作る同じサイズのテディベアの半分の重さである。
しかし、古い物なので、恐る恐る抱き上げると布の状態などをチェックしていく。

布は多分と言うかボア生地、手のひらと足の裏はフェルト布だろう。
とても布はパサパサしているが、穴などもなく全体的に状態はいい。
誰が作ったかは解らない……会社で作ったのではなく、手作りらしい。

と言うのは……。

「あ、手足は動くけど糸だ……。このままだと切れるな……」

と呟く。
胴体と手足を繋ぐのが針金のようなものでもなく、糸なのだ。
このままだと朽ちて切れてしまう。それに首も少しぐらぐらしている。
でも、先程も軽いと言ったが綿ではなく、アンティークのように木毛と言って、木屑の長いものが詰められている。
しかし瞳はプラスティックなので、ヴィンテージである。
アンティークは100年以上のもの、ヴィンテージは古いものである。
多分、20年位ではないか。

「うーん……木毛は虫がいたら困るし、でも、固いけどこの軽さ、素敵だなぁ……」

固いと言っても触ると適度な反動が帰ってきて気持ちいい。
その為だっこをしつつ考える。
このままで行くか、それとも、手足が切れてしまうといけないので、一回木毛を全部出して、手足をジョイントで繋ぐべきか……。
瞳も差し込み式の物なので、ぐらぐらする前に接着剤で留めてしまおうか……。
でもそうするとオリジナルを……元の家族のテディベアを失ってしまうのではないか……。
この素朴なベアは多分海外の骨董市のものだと思う。
素朴さを残すか、しかし素朴さを選んでテディベアを壊してしまうことだけはしたくない……。

数日考えようとまずは他のテディベア用の洋服を着せて様子を見ることにしたのだった。

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