二次元美少女と恋をしたいっ!←そんなことさせないですよ?

ハタケシロ

第94話 分娩台

「全く、霧咲先輩は冗談が過ぎますよ」

「えへへ。ごめんね?」

「霧咲の冗談が過ぎるのはそうだが、冗談が過ぎるのはそうだが、天舞も受け止めすぎだろ」

「陽向さんなんで2回も言ったんですか!?冗談冗談なんて!」

んなもん決まってるだろ?
大事なところだからだっての。

「もういいですっ!じゃあ出産しましょう!」

「ちょっと待て。じゃあっなんだ!?そして出産ってなんだ!?」

「知らないんですか?出産と言うのはですね?男性と女性が愛を育んだ果ての形あるもの、つまり赤ちゃんを産むってことですよ?」

「んなもんは知ってんだよぉおおお!俺が言いたいのはぁあ!!」

なんなのこいつは!!
後輩の前だろうが全然かまやしねぇ!!
そして、出産についてドヤ顔で語ってるのに若干イラッとしたぜ!

「しゅしゅしゅしゅ出産!?」

そしてまた天舞も目を回しながら混乱していた。



「そろそろ帰ろうぜ霧咲。ここに長居するわけにもいかないしさ」

「それもそうですね。可愛い後輩ちゃんの実家で長居するのは迷惑ですし、さらに産婦人科で陽向さんと居るなんて学校の人に知られたりしたら幸せですもんね!」

「うん。お前は何を言っているのかな?」

おかしい。
普通そこは俺なんかと居たら困るじゃないのか?
なんで幸せ!なんて表現に変わるんだよ!!

「陽向さんはなんかじゃないですよ?それに幸せに変わるなんてそんなの決まってるじゃないですか!私は陽向さんのことが大好きなんですから!」

「あーうん。ありがとう」

「なんでそこは素なんですかっ!もっと照れて下さいよ!!」

そんなドストーレートに言われたら智和あたりなら凄く嬉しいんだろうが、残念ながら3次元の美少女に言われたところで俺の心は揺るがないぜ!

まぁ、嬉しいには嬉しいけどな。

「(霧咲先輩、瀬尾先輩のこと好きなんだ……しかもこんなストレートに)」

「てかな?後輩の前ってのを忘れるな。暴走しすぎだぞ霧咲」

「後輩ちゃんの前だろうと関係ないですよ。私のこの気持ちに嘘偽りはないんですから。だから一緒にほて」

「よーしと、行くそするかー悪ぃな天舞。迷惑かけたな」

「あ、いえ、全然」

「酷いです陽向さん!」



帰り際、かしこまった様子で霧咲は、こんな一言を言い放ちやがった。

「あの、ルーちゃん?ちょっとお願い聞いてもらってもいい?」

「はい、なんですか?」

「あのね、ルーちゃんのううん、後輩ちゃんの前で頼むような事じゃないとおもうんだけど……」

珍しく言いにくそうにしている霧咲。
こんな霧咲は霧咲じゃない。
ていうかしおらしくて女の子みたいだ。まぁ、女の子なんだけども。
そして、霧咲は衝撃の言葉を言い放つ。

「分娩台に座ってもいいかな?」

「え?…………え!?」

分娩台?
分娩台と聞いて、俺は一瞬なんの事だが分からなかった。
分別?
分別って言えばゴミのことか?
そういや昔、ぼうジ〇ンプの〇魂の銀さんが、ジ〇ンプは読んだら心が熱くなるから燃えるゴミだとか言ってた気がするなー。
まぁ、たしかに俺の愛読しているぼう笑顔なプリキ〇アの同人誌とかも読んだら熱くなるというか元気になるというか……男だからしょうがないじゃない!!
だって男の子なんだもん!!

なーんて現実逃避or考えていたらさすがの俺でも分娩台が何なのか分かって来てしまった。
産婦人科にある座る目的で作られた椅子……いや、産婦人科だからこそ、必要とされる椅子。
てか、椅子なのかすら俺は知らねーけども!!
どんな状況であれ!3次元であれ!華の女子高生が言っていい言葉ではない気がする!!

今、霧咲が言った言葉を思いかえす。

「分娩台に座ってもいいかな?」

…………

……



いや、

ダメだろぉおおおおお!!!!
良いかもしれないが、ダメだろぉおおおお!!!

「霧咲先輩座りたいんですか?」

「うん。ちょっと憧れというか、夢なんだよね。ダメかな?」

珍しく、真剣な眼差しで懇願している霧咲。
憧れや夢というワードを聞いて、天舞も迷っている。
女の子の憧れとか夢って分娩台に座ることだというのを俺は今日生まれて初めて知ったぜ。
普通なら普通は知らんけど、ウェディングドレスを着たいとかだと思ってた。

「そうですね……ダメではないと思うんですけど……。なんでだろ霧咲先輩だとなんかちょっと怖い…」

最後の方は完全に独り言だったのだが、俺の鈍感系主人公とは真逆のよく聞こえる耳は、その声を聞き取った。

分かる。分かるぞ天舞。
怖いよな。霧咲だと何を考えているのか怖いよな……。
てか、こんな短期間で怖いと思われるなよ霧咲。

「まぁ、でも一応親に確認取ってみますね?」

「ありがとルーちゃん。よかったこれで……陽向さんと分娩台プレ……」

「許可なんか取らなくていいぞ天舞ぃいいい!」

「なんでですか!陽向さん!!」

その後、いくらか押し問答の後、時間が迫ってきたため強制的に出ることになった。



「座りたかったですよ!陽向さん!」

「邪な気持ちで座んじゃねーよ!!」

真剣だったからほんとに憧れとか夢だと思ってたのに、霧咲はやっぱり霧咲だ!

「悪いな天舞。迷惑かけた」

「ごめんねルーちゃん」

「いえいえ、痴話喧嘩とかじゃなくて良かったです」

「そのうち痴話喧嘩になるよ!」

「はっ。ならねーよ」

「鼻で笑わないで下さいよっ!」



「いやー天舞には迷惑かけたな。特に霧咲が」

「私は迷惑かけてないですよ?」

なんでそこでキョトンとしてられるんだよ。

「てか良かったのかこんな形で終わって」

「デートのことですか?大丈夫ですよ!これがらしいと言えばらしいですからね!」

「ま、霧咲が良いならいいけど」

(そういう所がずるいんですよ陽向さんは。そのさり気ない優しが)

「そーいや天舞が携帯にぶら下げてたキーホルダーどっかで見覚えがあるんだよなぁ」

「そうなんですか?」

「まぁ思い出せないんだけどさ」

半日とはいえ、霧咲と過した怒涛の半日は俺の脳に多大なダメージを与えたからな。
昔の記憶なんて覚えてねーぜ!

「じゃ思い出すためにこれからホテル行きましょう!」

「行かねーよ!」



「陽向さんとのデート楽しかったなぁ。デートじゃないようなデートだった気もするけど……。分娩台に座りたいって夢は本当ですよ陽向さん。いつか大好きな人の大好きな赤ちゃんを産みたいんですから。……陽向さんの赤ちゃんを…」

デートから帰った霧咲は、自室でこんな独り言を漏らしていた。

















「そのためにはまずホテルですね!」

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