二次元美少女と恋をしたいっ!←そんなことさせないですよ?

ハタケシロ

IFストーリー柏木編

俺の通っている学校にはこんな噂が立っている。

1年E組のとある男子がヤンキー相手に無双して病院送りにしたとか、同じくC組の女子生徒がこれまた同じくヤンキー相手に無双して病院送りにしたとか。

こう噂がされてその2人の呼び名はいつしかこうなった。
東の瀬尾、西の柏木。

ちなみにだが、俺の通っている高校は北向きに建っている。

なんてことはどうでもいい。
どうして横綱みたいな呼び方をされているとか、それを友達に言ったらE組の瀬尾よりはかっこよくね?と言われ返したことはどうでもいいんだ!

俺は今、まさにやばい状況に立たされている。
いちにっさんと数えただけても百人はいるであろうヤンキーの大軍。
どうして俺はこんなことになってんだと考えてみる。

えーと?確か新作のアニメブルーレイをア〇メイトに予約しようとして、そのついでに新作が出たと噂される嫁のグッズを買いに行こうと思ってスマホをいじりながら近道&ショートカットと意気込んで狭い路地裏に入ったら金髪の見た目あからさめにヤンキーですと言いたそうなやつに肩がぶつかって、テメー何してんだ?と睨みつけられてアジトと呼ばれる倉庫に連れてこられたんだった。

なんだこれ!?
こんなドラマみたいな展開あるか!?普通!!

え、待って特に俺悪いことしてないよな?
だってぶつかった時も瞬殺で謝ったしな。
光の速度で、いやマジで。

なのにお前よく見れば東の瀬尾じゃね?とかなってなんやかんやで人が増えてってこうなった!
ほんっつつつとになんだこれ!?
助けてヤンクミ!もしくはオー〇マイト!!
俺もヒーロ課に入っておけばよかった。

「おっなんだ瀬尾。ケンカか?」

助けに来てくれたのはヤンクミでもオー〇マイトでもなくて。

「お前はこういう荒っぽいことホント好きだな柏木」

柏木が助けに来てくれた。



「お前さあんなボコボコにしなくてもよくねーか?」

「あれくらいやらないと反撃されるでしょ?」

ケンカを吹っかけられ、そのケンカを片付けた後、俺たちは通いなれたファミレスへと来ていた。
このファミレスは最初、顔が怖いという理由だけで店側から出入り禁止を食らったのだが、DQNに絡まれていたこのファミレスの店長を助けたところ、晴れて出入り禁止解除、ソフトドリンクバー無料という得なオプション付きで通えるようになった。
趣味に金を落としている分、いつでもやっていてソフトドリンクバー無料のこのファミレスはいつしか貴重な憩いの場になっていた。

「いやその前にお前も一応女の子なんだから荒っぽいのはやめよーぜ?」

「瀬尾にだけは言われたくない。というか、やったのはほとんど瀬尾。もうこういうことしないか?ボコッ返事が聞こえないぞ?ボコッってもう戦意を喪失している敵をボコるやつの言うことなんて私は聞けない」

だってそうしないとまた反撃とかなにやらされるからしょうがねーじゃん!

「それに私はデコピンしかしてない」

あー確かに、そーいや俺が滅多打ちにしてボッコボコにした倒れたやつのデコを軽くピンってしてたっけ?

「俺が悪いじゃんかよ!!」

「やっと気づいた?」

だってぇ!しょうがないじゃないですか!
襲われるのも?反撃されるのも?そのー怖いし?
だったら戦意無くなるまでボッコボコに滅多打ちにした方がよくね?ってなるじゃん?

「言い訳はいいから、次からは優しくしなよ?」

「はい……すみません」

ちくしょー!立場が逆転したぜ!!



「そー言えば柏木」

「なに?」

「今季のアニメはどうだ?」

「んー豊作かな。続きが気になっていたアニメの2期も何個かあるし、新作も面白い」

「だよな!」

俺と柏木が仲良くなったキッカケは、そう趣味だ。
それもアニメオタクという人によっては敬遠されがちの趣味。

あれはー入学式当日だったか、俺が予約し忘れて店頭販売のアニメグッズを買いに行ったとき、ラスト1個を柏木を奪い合ったのは。
あの時の俺は、グッズ欲しさに普段ならぜっっったいに話しかけないタイプの柏木を前に引かなかったなー。
足がけっこう痙攣していた気もするが。
その時からかーなんどか店で会うようになって、そこから話が合うんじゃないかってこうしてファミレスで話すようになったのは。

「瀬尾はなにが面白い?」

「俺か!?俺はだな可愛い嫁たちもとい、可愛い美少女たちが出てくる気持ちがピョンピョンしちゃうような」

「へー」

「まだ途中なんですけど!?」

今ではこうして仲良く話すような間柄だ。
そう、決して俺が柏木にからかわれているような間柄ではなく、対等な友達としての間柄だ。……と信じたい。

「ん、もうこんな時間か、じゃ帰るか」

楽しい時間は早く過ぎるというか、柏木とのアニメ談笑はいつも時間が経つのが早い。
レベルで言えば、朝寝坊仕掛けた時と一緒だ。
どうして朝ってあんなにも時間が経つのが早いんだろうな。世界はアニメと不思議で満ち溢れてるぜ!

時間は、夜10時を過ぎようとしていて、さっきから店長がチラチラ見始めてるし、一応女の子である柏木のためにも解散した方がいいだろう。

「それなんだけどさ瀬尾」

「どした?」

柏木はさも自然に、なぁコミケ行こうぜと言わんばかりのノリでこう言った。

「今日泊めてくれない?」

「は?」

「……お前はアニメとかラノベの主人公にはなれないな」

「ちょっと待てそれはどういう意味だ?」

どうして俺はため息をつかれなけらばいけないんだ!?
普通逆だろ?
俺はいつか魔法つかいになって、アニメやラノベの主人公に変身して二次元美少女たちとキャッキャウフフな生活を送ろうと決めているのに!!

「主人公ならここで何馬鹿なことを言ってんだ。とか言って恥じらうところだと思うけど?」

「それは、二次元で、なおかつ2次元美少女なら、の話だろ?3次元である柏木のどこに俺は恥じらいを持てって言うんだよ」

「これだから瀬尾は」

またため息をつきやがったこのやろー!!
はっ!!でも待て!確かため息を食べてた二次元美少女が居たはず!!よし、俺も食べよう!!……ジト目はやめて下さい柏木さん。ごめんなさい。

「で、どうなの?泊めてくれるの?」

「まぁ別にいいけどよ」

「そこは嘘でも動揺なりしないと」

「動揺する要素がねぇ。つか、だったら俺じゃなくて女友達に頼めばいいだろ?」

「知ってるでしょ?友達居ないって」

「…………」

気まづい!
サラリと言うなよ!
反応出来ねぇじゃねぇか!

「つ、つかなんで泊まりたいんだ?」

「話の変え方が下手くそ」

うるせぇ

「まぁちょっと事情があってさ。まぁ出来ればって感じだから無理にとは言わないけど」

柏木の好きなアニメや声優のことなら知ってる俺だが、柏木自身については何も知らないことがこの瞬間わかってしまった。
どんな事情で3次元にさらさら興味の無い俺とはいえ、男である俺の部屋に泊まりたいと言ってきたのかは全く分からなかった。
普通なら言わないはずだ泊めてくれ、なんて。
そこには少なからずなにか困り事があるという事、なのに俺は柏木がどんなことで困っているか検討すらつかない。
まぁ、でもどんな事情かはしらないが、ふだんクールビューティーで表情の変えない柏木が、少しだけ困った表情をされちゃあ見過ごすわけにはいかない。
嫁たちも困ってるやつらは無償で助けるし、俺も見習って助けるとしよう。泊めるだけだけど。

「いいよ。1泊くらい。ちょうど来客用の布団もあるし」

「ちょうどってどんなタイミングだよ」

べ、べつに高校生になったら毎日のように泊まりに来る友達が出来ると思ってワクワクして買ったわけじゃないんだからねっ!



「よいしょと」

「人のベットに寝っ転がるな」

「でも、人のベットだからこそやりたくならない?」

「まぁ、確かに」

友達の家に泊まりに行ったことがないから、体験したことないけどなぁ!

「……」

「……」

「アニメでも見るか?」

「そうだな、瀬尾」

なんだ?なんかしらないけど気まづいぞ?

柏木が初めて泊まりに来た夜は終始、胸の奥に違和感を感じた。

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