二次元美少女と恋をしたいっ!←そんなことさせないですよ?

ハタケシロ

第30話 いつもの日常……

年に一回行われる考査期間で部活停止中の全生徒を対象としたスポーツ大会も終わり、その後にやってきた地獄の四日間の考査も終わりを告げ、じめっとしていた気候もだんだんとカラッとしたものに変わり、夏の訪れを予感させていた。

俺にとっては気まずくもあり、楽しくもあった6月が過ぎ、季節は夏。夏休みまで後もう少しという7月に入っていた。

「なぁ暑くね?」

部室に来た時から思ってはいたけど、さほど気にしないようにしていた俺だが、ラノベを半分読んだところで、我慢出来ずに呟く。

「え?そうですか?」

俺の問に桃は涼しい顔で答える。
桃にとってはこれくらいの気温大したことじゃないらしい。限界にまでブラウスを巻くっているのは気のせいだろう。

あの日以来桃とは何日か気まずい雰囲気があった。でもそれはほんの何日かだけで、いつの間にかいつものような感じで話せれるようになっていた。だから今もこうして普通に会話ができている。

「暑がりですね陽向くんは」

「ならその、さっきからやってるフェイスシートで顔を拭くのやめろ。説得力がないぞ?」

「え、いや、その、これはあれですよ!あれ!」

「あれって?」

「どのシートが清涼感を得られるのか試してるんですよ!」

「そうなのか?」

見る限り、一種類しか桃は持ってないと思うんだけどな。つか、清涼感を得たいってつまりはあれだろ?暑いんだろ?無理すんなよ桃。顔だけは涼しい顔してるけどさフェイスシートのおかげで。

「なぁエアコンつけよ」

「ダメですよ!陽向さん!」

「うおっ!いきなりどうした霧咲」

エアコンのリモコンに手を伸ばしたところを霧咲に掴まれ、止められる。首筋には汗が垂れていた。

「エアコンなんてつけたら涼しくなるじゃないですか!」

「いや、涼しくなろうぜ。もしかしてエアコンとかの冷房はだめなのか?」

「全然平気ですけど?」

「じゃあつけようぜ」

「だめです!」

「いや、なんで」

「涼しくなるからですよ!」

やべー霧咲の言ってることが理解できねー。

「いや、霧咲だって暑いだろ?だからエアコンつけよ」

「全然平気ですけど?」

「嘘つけ!」

桃と同じくブラウスを限界にまで巻くって涼を得ようとしているじゃねーか!!それとな知ってるからな!桃とは違って足とかに清涼シートやってること!

「なぁ柏木も暑いよな?」

「………………」

「か、柏木?」

「………………」

おかしい。返事がない。いつもなら長いにしろ短いにしろ何らかの返答がある筈なのに……。もしかして嫌われたか?今のところ唯一のオタク友達である柏木に嫌われたら今期のアニメは誰と語ればいいんだ!!

俺何かしたか?思い当たるのは深夜に夏アニメそれぞれの第1話感想を話したくて電話したことと、俺が読み終えたラノベの感想を言いたくて深夜に電話したことと、ニーソと素足ならどっち?という議論をガチで朝まで近くの公園で論議したことくらいなんだが……あっそう言えばあの時制服を着た人(今度はお姉さんだった)に何してるの?って可愛らしくもあり威厳のある声で聞かれたっけ。でも俺が振り向いた瞬間脱兎の如く逃げたんだよな。なんだったんだあれは?

「ずいぶんと柏木さんと楽しんでいるようですね陽向くんは」

「おおふ」

ニコニコしながら言う桃を見ると笑っていた。うん。笑ってた。凄いえがおで。超怖い。影が差してあるよ。笑顔に。

「それと、見ず知らずの婦警さんを怖がらせないようにしてください」

「いや、そんなつもりはなかったんだけど」

つかやっぱりあの人は婦警さんだったのか。コスプレが趣味のレイヤーかな?とも思ったけど違うよなやっぱり。それとな桃さん。もう慣れたけど、慣れてしまったけど!人の心をナチュラルに読むなって!

「全く朝までって何をやってるんですか」

少々呆れ気味に言われる。まぁ桃にはまだ理解は難しいだろう。

「いや、何気なく語ってたらいつの間にか熱くなってさ。まさか、ニーソか素足かで話していたのに第三勢力の黒ストッキングが来襲して……そして気づいたら朝になってたという事だ」

「柏木さんだけじゃなく、私や霧咲さんとも遊んでくださいよ」

あれ?そういう問題なのか?

「いやだってまだお前らアニメ詳しく語れないじゃん?まだにわかじゃん?」

俺もにわかに毛が生えた程度だろうけど。

「お前らと違って柏木はベテランだからな。俺と話が合うのなんのって」

「わ、私だって今期のアニメは見てますよ!」

「今期のはな」

桃と霧咲はあの勉強会以来、自宅で何本かアニメを見ているらしい。最近じゃちょっとではあるが、俺ともオタクトークをできるようになっていた。桃と霧咲を俺と同じ土俵に立たせてくれるアニメの力は素晴らしいということが分かる。

「かっしー、ね、かっしー大丈夫?」

最近、柏木のことをかっしーとニックネームで呼んでいる霧咲がさっきから返事のない柏木を心配してか声をかけ寄り添う。余談だが霧咲は桃のこともニックネームで呼ぼうと考えてるらしい。

因みに柏木は霧咲からニックネームで呼ばれることを最初はものすんごく嫌がっていたが、途中から諦めたのか、気に入っのか受け入れるようになっていた。

「あ」

「「「あ?」」」

柏木の「あ」という発言に俺たちは声を揃えて聞き返す。

「あつ…………い……」

そして、絞り出すように柏木は言った。

あつい、暑いのか!柏木!
だからさっきからテーブルに突っ伏してたのか!
俺はてっきり夜更しでもしたせいで眠いから寝てるもんだと思った!

「陽向くん!窓を閉めて下さい!」

「おう!分かった!って閉める?」

「エアコンを使うので外に冷気を逃がさないためにですよ!」

「なるほどな!了解だ!」

桃の指示通り、俺は部室の窓いう窓を全部閉める。

そして、エアコンのスイッチ入れ、部室はさっきの暑さが嘘のようにひんやりとした心地のいい空間になった。



「ふぅ生き返る〜」

エアコンのおかげで、涼めたのか、コーラを二口ほど飲んだ柏木が気持ち良さそうに呟く。

そんな柏木を見て一安心した俺は、なんでさっきはエアコンをつけなかったのかを聞くことにした。

「つかなんでさっきはエアコンつけようとしなかったんだよ」

俺のこの問に桃と霧咲、とくに霧咲は真剣な表情になる。

え?そんなになんか重要な理由でもあったのか?

そして、なぜか流れる重苦しい雰囲気の中、霧咲が口を開き、答える。

「透けブラを陽向さんに見せるために……」

















ど~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~でもいい理由だった。




「お疲れしたー」

さーて帰って何するかな。
今日は三者面談で午前授業だから、帰ってもまだまだ時間があるぞー。

あっそうだ。久しぶりに中学校…街の見回りにでも行こうかな。最近は暑いから変な奴が出てくるだろうし。そうとなると、こうしちゃらんねーな中学生……街を守るガーディアンにならねばっ!


「待ってください!陽向さん!違うんです!これにはちゃんとした理由があるんです!」

「ええい!離せ!透けブラを見せようとするのに理由なんぞ聞いてられるか!何が悲しくて、辛くて、絶望して、3次元の布を見なくちないけねーんだ!」

「そこまで言わなくても!いいから見てください!」

「もはや行為に変わってんじゃねーか!理由はどうした!?理由は!!」

「いいじゃないですか陽向くん。見ても」

「大丈夫か桃!?暑さで頭がどうにかしたんじゃねーのか!?」

あの桃自ら霧咲みたいな発言をするなんて……今年の暑さは尋常じゃないみたいだ。



結局俺に透けブラを見せたかったのは3次元に目覚めて欲しいのと、俺がこの前ディスプレイに写っていた美少女に透けブラだ……ニヤ。と発言し、ニヤニヤしてたのを目撃したから、ならば見せてあげようと霧咲は暴走したらしい。

「つか、こういうのは桃が止めるだろ普通。何加担してんだよ」

「あはは。すいません」

「地味に柏木も参加してるし」

いつも超マニアックな、ブラウスの上からでも分かるアニメTシャツを来てるのに今日は着てないのが分かる。黒の布が透けて見える。

「瀬尾…………」

「………………?」

「…………えっち」

「!?!!??!!」

まさか柏木に言われるなんて……。

「まぁでもいいかもな」

(((おっ………………)))

「最近暑いし」

(((う~~~ん)))

シャツを着ないことで通気性が増して涼しいだろう。うん。地球温暖化対策にピッタリだ。

「ほんとに暑いよな最近。夏休み生きられっかな」

7月でこの暑さだと、このあとに待ち構える最大の楽しみ夏休みというなのバカンスが死の休暇になりそうだ。

「プール……いや、海にでも行きたいな」

水着姿の某中学生を見れるだろうし、涼めるし、うん。行きたくなってきた。

(((これは……アニメでもそういうシーンがあるから海に行こうパターン!!ワクワク)))

あっでもダメだな。積み本、積みゲー、アニメ視聴に街を守らなきゃ行けないから海に行ってる余裕なんてねーや。

「んん。部長?」

わざとらしい咳とともに、俺のことを久しぶりに部長と呼んだ桃が、どこか期待しながら声をかけてきた。

「ん?」

「夏休みは部活でどこかに……」

「いや、俺は家からアニメ関連の商品を買う意外と生活に必要なものを買う時以外は出ないようにするから夏休みはどこにも行かないぞ?でも桃たちがどこか行きたいんなら先生にでも相談してみればいいと思うぞ」

せっかく部として成り立ってんだ。うちの学校は規則がゆるゆるだから申請さえだしちゃえば合宿も遠征もし放題だからな。俺一人の都合でみんなが行きたいのに行けないのは困る。みんなには楽しんでもらいたい。

「いや、その、えーと」

言い淀む桃。
何がいいたいんだ?

「ちょっと待ってください!」

「うん。待って」

霧咲と柏木が会話に乱入する。

「「陽向さん(瀬尾)が部長!?」」

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