比翼の鳥
第27話:魔法陣
さて、あれから1カ月更にたった。
え?端折り過ぎだろうって?
けど、本当に平和な日々が続いているんだよね。まぁ、少し問題が起こって来てるんで、いずれ動き出さないといけないけど。
気候も相も変わらず、常春の状態。これ、もしかして、ずっとそうなんじゃないか?って言う位同じ気候だ。
時々雨も降るけど、そんなに激しくならないですぐに止んでしまうし、湿度が上がってジメジメするようなこともない。
そうそう、ルナの切り倒したリンゴ(仮)の木は、無事復活した。今や前の大きさを凌ぐ大木へと、成長している。
洞窟前の接ぎ木も順調で、この前、白い花をつけていたから、後1カ月もすれば、新たな実がなることだろう。
復活した木を見て、ルナはとても嬉しそうな、そして安堵した顔をしていた。俺も、あの時、怒りはしたのもの、半分は教育上やむなくと言った部分もある。だから、こうやって、自分の失敗を自分でとりもどして、乗り越えてくれたことには感動を覚えている。
さて、俺は魔法の改良を重ねていた。何故か?
それは、いずれ、近いうちに、一時的であるにせよ、この森を出て人里へ向かう必要があるからだ。
先月から内在化していた問題を、とりあえずは日本人お得意の棚上げで誤魔化していたのだが…どうにもならなくなってきたからだ。
ハッキリ言うと、衣類の問題だ。
ルナの服が限界を迎えた。ワンピースが何かの拍子に裂けたのだ。
それは、ルナの少し大きくなったお尻とか、大分存在感を増してきた胸とか色々な要因があるのは事実なんだろうが、破けたのは単純に耐用年数を超えた所に外部刺激と言う結果からだと思う。
仕方ないので、今は、裂けたワンピースの部分を巧く腰に巻いてロングスカート代わりに。上は、俺のYシャツをあてがう事で、凌いでいる…うん、正にギリギリ凌いでいる感じが非常に危うい。
しかも、ブラジャーに相当する下着が無いから、少し控えめだが弾力のあるものが揺れるのだ。
それはもう、元気にゆさゆさと…
駄目なんだよ。男だから、その位置の動くものに何故か目がむくんだ。俺の感情とは関係無く。
そして、特に、夜が駄目だ。俺はいつかやらかしそうで怖い。
なんでか、ワンピースのスカートを脱いでベッドへ入るのは、まぁ、着心地の面で納得が出来る。
ダボダボのYシャツ1枚にルナの肢体…もう駄目だろう…。この時点でもう瀕死だ。
そんな状態になってしまったので、俺は寝る時は一人で寝るようにした。ルナにも説得はした。理由も一応それとなく話した。
俺が恐い人になっちゃうからダメだぞー!的な感じでだが。
それでもなんで、俺のベッドに潜り込むかな…。しかもだ、前と違って、それなりに羞恥心を持っているらしいのだ。少し恥ずかしそうにしながら上目づかいで俺のベッドに潜り込んでくるわけだ…。最初は俺がその度に追い返していたのだが…最近、ルナは状態異常魔法を覚えたらしく、俺を強制的に寝させるか、痺れさせて動けなくして来るようになりやがったのだ。
強制同衾。もうその時点で俺のHPは空っぽです。
更に、ルナは寝ぼけると、俺の体をがっちりとホールドしてくるのだ。
睡眠魔法で眠らされている時はまだ良い。痺れている時が問題だ。
最近、身長が伸びたせいで、体つきも立派…ええ、それはもう、すこぶる立派になられまして。
こう、背中とか胸に抱きついて柔らかい体を押し付けてくるわけですよ。もう駄目です。色々。
もう、いっそ色々幸せすぎて、耐えるのが辛いんです。殺してくれって言いたくなる。
とにかく、俺の平穏な睡眠を守る為にも下着っていうかブラジャーは絶対必須。あれがあるのと無いのとだと、抱きつかれた時の感触が全然違う。あればそこまで意識しなくて済むのだ。最悪でも布きれでサラシ位は巻いて頂かないと、昼間の平穏が不味い。
そんな感じで俺は色々な欲望と、罪悪感と、少しの幸福感を何とかすべく、まずは衣服…特に下着を手に入れる必要があるのだ。
さて、人里へ降りると言っても、まずはこのあたりの状況を知らない事には動きようがない。
そこで、俺がここ1カ月注力してきたのが、感知魔法と、飛行魔法だ。
感知魔法は、文字通りどんなものが俺の周囲にあるかを知る魔法。これは案外簡単だった。魔力の流れの掴み方を参考に、より範囲を拡大し、余計な情報を取捨選択するだけだった。現在、俺の感知魔法で、村とおぼしき場所の特定は既に終わっている。
しかも、これを応用し、俺にしか読めない魔力マーカーを置く事で、任意の場所をマーキングできるようになったのは大きかった。これによって、俺はルナがいなくても、色々なところに出向くことができるようになったのだ。
飛行魔法は単純に移動手段だ。
と言うのも、こんな森の中をえっちらおっちら移動しようとか普通は思わない。
飛べるなら飛んで一直線に向かってしまった方が楽に決まってるのだ。
問題は、この森の制空権がどうなっているかっていう事だった。
結論から言えば、ワイバーン?っぽいなんかが制空権を握っているっぽい?。が、それほど強くないし、最高速度もそれほど速くない。よって、ちょっと早い飛行魔法があれば振り切れると言うのが俺の見解。
最悪振り切れなくても、根こそぎ壊滅させれば良いし。
とりあえず、浮く事は直ぐにできた。それに機動性を持たせるところで少し躓いたのだ。
進むだけならすぐに出来る。ただし、複雑な軌道制御と言うのが中々に厳しかった。
それを可能にしたのが、俺が偶然発見した魔法制御技術だった。
実は、今では俺とルナの魔法的な実力は拮抗している。
凄いだろ?前は手も足も出なかったのにだ。
それを可能としているのが、魔法陣だ。
これを発見した時は、「魔法陣キターー!!」と叫び、ルナに怪訝な目で見られたものだ。
これは、俺が如何にしてルナの境地に達するかと試行錯誤した結果なのだ。
簡単に言ってしまえば、俺が考えた事はこうだ。
ルナと俺との差は、魔法の処理能力の圧倒的な差…これにつきた。
俺が1やったときルナは100も200も処理を行う事が出来るのだ。
これはもう、努力云々の問題ではなかった。
魔力の強さについては、ルナの見解から、俺とルナの差はあまりないとの事だった。
ならば、如何にして処理速度を改善するか?これが目下の課題となったのだ。
その事に気が付いた当初から、俺は色々と試行錯誤を繰り返した。
しかし、やはり元々持ったスペックはそう簡単には埋まらず…と言うか埋まる気が欠片も起きず、早くも暗礁に乗り上げたのだった。やはり俺とルナでは持っている才能が違う…俺が魔法を使う限りはどうやっても越えられない壁だ。
そう思った時、ふと気が付いたのだ。
じゃあ、俺、詠唱しなければいいんじゃね?イメージ構築も、全部しなければいいんじゃない?って。
頭の構造が違うならそれは他の物にやらせればいいんだよね。そうだよね。
他の物って何?何かは分からんが、魔法を作る魔法を作れば良いんじゃないの!?
そうして、出来たのが魔法陣だ。
この魔法陣の技術、それはもう最高だった。正に笑いが止まらない程に。
これは簡単に言えば、プログラミングと同じ様な物だったのだ。
ある入力に対し、最適解を出すプログラム。しかも、もちろん、術者が改編可能。
応用次第で幾らでも、どんな魔法でも作れてしまう、正に神のプログラム言語だった。
俺は、この時ほど、元の世界で、IT系ブラック企業で(大げさでも何でもなく、胃に大穴開いて)血を吐きながら習得したプログラム技術を、学んで良かったと思った事は無い。っていうか、学んで良かったと思ったのがそもそも初めてだ。
早速使ってみたものの、またも壁にぶち当たる。
余りにも使いにくいのだ。柔軟性が無い。
例えば以前使ったフレイムランスを例にとると、
魔力 ⇒ 形態構築:槍 ⇒ 属性決定:炎 ⇒ 顕現範囲:魔力力場 ⇒ フレイムランス
といった具合に、1ステップ1ステップ処理を行わないといけないのだ。これでは、あまり意味が無い。
最初から最後まで書いておけば、それはそれで一つの魔法として発動するが、一回定義した魔法は向きも威力も形も変えられないのだ。
これでは全く役に立たない。そこで俺は、パラメーターを省略し、更に並列化した。
魔力 ⇒ 魔法陣:【呼:ランス】(形態:槍 属性:任意 顕現範囲:魔力力場 威力:魔力依存) ⇒○○ランス
これだけで、必要なイメージはフレイムランスを使いたいなら、炎一つになる。
更に( )内の処理は、並列で行われる。つまり、炎と決めた瞬間に全て終わっているのだ。
もちろん、水も、風も、雷も、ぶっちゃけ、光だろうが闇だろうが、なんでもランスになる。込めるイメージだけ間違わなければいい。
しかも、このランスを使って、更に別の魔法を作る事だって出来る。
例えば、この魔法が100本同時に出来る様な魔法を作ったとする。
あくまで喩だが、こんな感じでイメージすると分かり易いだろうか?
魔力 ⇒ 魔法陣:【呼:ガトリング】(継承:【呼:ランス】×100 属性:任意)
実際には魔法陣自体をいじるので、文字で書くわけでは無いのだが、イメージ的にはこれで、100本ランスが出て来る。
まぁ、位置や発射タイミングとか、色々調整の必要はあるのだが、決まった効果を望むのであれば、必要に応じて作成しておけば、魔力の続く限り、何本でもランスが打てる。
ただ、これでもまだ、使いにくい。
パラメーター自体をその魔法陣が持ってしまっているのが痛いのだ。
ならば、パラメーターもパターン化してしまえばいい。
そして、必要に応じてそのパターンを読みだす。
あらかじめ、共通パラメーターを作成しておく。
そして、そこをいじるだけで、魔法陣すべてのパラメーターを変更できるなら…手間は一気に少なくなる。
もっと良いやり方もありそうだから、これからも試行錯誤は必要そうだな。
そうして俺は、色々な魔法を作成していった。その中には、おいそれとぶっ放せないものも含まれている。正に対殲滅用魔方陣もノリで作ってしまった。
使う日が来ない事を祈る。いやマジで。
余談であるが、ルナはこの魔法陣を巧く使いこなせない。どうも俺のやっていることが複雑すぎるらしいのだ。
これは、自分でいじって、作成しないと駄目なので、ルナの利点をどうにも生かせないらしい。
それなら、自分で全部、イメージから生成までしてしまった方が本人は楽との事。なるほど…これは魔法に対する考え方の違いなんだろうな。
もしかしたら、魔法陣は何かに封じ込められるかもしれないし…そうしたら便利な物はルナに持たせよう。
まぁ、ともかく、この魔法陣のお蔭で、俺もルナと一進一退の攻防を繰り広げられるようになった。
これからも、慢心せずに、どんどん色々な魔法を開発していこうと思う。
え?端折り過ぎだろうって?
けど、本当に平和な日々が続いているんだよね。まぁ、少し問題が起こって来てるんで、いずれ動き出さないといけないけど。
気候も相も変わらず、常春の状態。これ、もしかして、ずっとそうなんじゃないか?って言う位同じ気候だ。
時々雨も降るけど、そんなに激しくならないですぐに止んでしまうし、湿度が上がってジメジメするようなこともない。
そうそう、ルナの切り倒したリンゴ(仮)の木は、無事復活した。今や前の大きさを凌ぐ大木へと、成長している。
洞窟前の接ぎ木も順調で、この前、白い花をつけていたから、後1カ月もすれば、新たな実がなることだろう。
復活した木を見て、ルナはとても嬉しそうな、そして安堵した顔をしていた。俺も、あの時、怒りはしたのもの、半分は教育上やむなくと言った部分もある。だから、こうやって、自分の失敗を自分でとりもどして、乗り越えてくれたことには感動を覚えている。
さて、俺は魔法の改良を重ねていた。何故か?
それは、いずれ、近いうちに、一時的であるにせよ、この森を出て人里へ向かう必要があるからだ。
先月から内在化していた問題を、とりあえずは日本人お得意の棚上げで誤魔化していたのだが…どうにもならなくなってきたからだ。
ハッキリ言うと、衣類の問題だ。
ルナの服が限界を迎えた。ワンピースが何かの拍子に裂けたのだ。
それは、ルナの少し大きくなったお尻とか、大分存在感を増してきた胸とか色々な要因があるのは事実なんだろうが、破けたのは単純に耐用年数を超えた所に外部刺激と言う結果からだと思う。
仕方ないので、今は、裂けたワンピースの部分を巧く腰に巻いてロングスカート代わりに。上は、俺のYシャツをあてがう事で、凌いでいる…うん、正にギリギリ凌いでいる感じが非常に危うい。
しかも、ブラジャーに相当する下着が無いから、少し控えめだが弾力のあるものが揺れるのだ。
それはもう、元気にゆさゆさと…
駄目なんだよ。男だから、その位置の動くものに何故か目がむくんだ。俺の感情とは関係無く。
そして、特に、夜が駄目だ。俺はいつかやらかしそうで怖い。
なんでか、ワンピースのスカートを脱いでベッドへ入るのは、まぁ、着心地の面で納得が出来る。
ダボダボのYシャツ1枚にルナの肢体…もう駄目だろう…。この時点でもう瀕死だ。
そんな状態になってしまったので、俺は寝る時は一人で寝るようにした。ルナにも説得はした。理由も一応それとなく話した。
俺が恐い人になっちゃうからダメだぞー!的な感じでだが。
それでもなんで、俺のベッドに潜り込むかな…。しかもだ、前と違って、それなりに羞恥心を持っているらしいのだ。少し恥ずかしそうにしながら上目づかいで俺のベッドに潜り込んでくるわけだ…。最初は俺がその度に追い返していたのだが…最近、ルナは状態異常魔法を覚えたらしく、俺を強制的に寝させるか、痺れさせて動けなくして来るようになりやがったのだ。
強制同衾。もうその時点で俺のHPは空っぽです。
更に、ルナは寝ぼけると、俺の体をがっちりとホールドしてくるのだ。
睡眠魔法で眠らされている時はまだ良い。痺れている時が問題だ。
最近、身長が伸びたせいで、体つきも立派…ええ、それはもう、すこぶる立派になられまして。
こう、背中とか胸に抱きついて柔らかい体を押し付けてくるわけですよ。もう駄目です。色々。
もう、いっそ色々幸せすぎて、耐えるのが辛いんです。殺してくれって言いたくなる。
とにかく、俺の平穏な睡眠を守る為にも下着っていうかブラジャーは絶対必須。あれがあるのと無いのとだと、抱きつかれた時の感触が全然違う。あればそこまで意識しなくて済むのだ。最悪でも布きれでサラシ位は巻いて頂かないと、昼間の平穏が不味い。
そんな感じで俺は色々な欲望と、罪悪感と、少しの幸福感を何とかすべく、まずは衣服…特に下着を手に入れる必要があるのだ。
さて、人里へ降りると言っても、まずはこのあたりの状況を知らない事には動きようがない。
そこで、俺がここ1カ月注力してきたのが、感知魔法と、飛行魔法だ。
感知魔法は、文字通りどんなものが俺の周囲にあるかを知る魔法。これは案外簡単だった。魔力の流れの掴み方を参考に、より範囲を拡大し、余計な情報を取捨選択するだけだった。現在、俺の感知魔法で、村とおぼしき場所の特定は既に終わっている。
しかも、これを応用し、俺にしか読めない魔力マーカーを置く事で、任意の場所をマーキングできるようになったのは大きかった。これによって、俺はルナがいなくても、色々なところに出向くことができるようになったのだ。
飛行魔法は単純に移動手段だ。
と言うのも、こんな森の中をえっちらおっちら移動しようとか普通は思わない。
飛べるなら飛んで一直線に向かってしまった方が楽に決まってるのだ。
問題は、この森の制空権がどうなっているかっていう事だった。
結論から言えば、ワイバーン?っぽいなんかが制空権を握っているっぽい?。が、それほど強くないし、最高速度もそれほど速くない。よって、ちょっと早い飛行魔法があれば振り切れると言うのが俺の見解。
最悪振り切れなくても、根こそぎ壊滅させれば良いし。
とりあえず、浮く事は直ぐにできた。それに機動性を持たせるところで少し躓いたのだ。
進むだけならすぐに出来る。ただし、複雑な軌道制御と言うのが中々に厳しかった。
それを可能にしたのが、俺が偶然発見した魔法制御技術だった。
実は、今では俺とルナの魔法的な実力は拮抗している。
凄いだろ?前は手も足も出なかったのにだ。
それを可能としているのが、魔法陣だ。
これを発見した時は、「魔法陣キターー!!」と叫び、ルナに怪訝な目で見られたものだ。
これは、俺が如何にしてルナの境地に達するかと試行錯誤した結果なのだ。
簡単に言ってしまえば、俺が考えた事はこうだ。
ルナと俺との差は、魔法の処理能力の圧倒的な差…これにつきた。
俺が1やったときルナは100も200も処理を行う事が出来るのだ。
これはもう、努力云々の問題ではなかった。
魔力の強さについては、ルナの見解から、俺とルナの差はあまりないとの事だった。
ならば、如何にして処理速度を改善するか?これが目下の課題となったのだ。
その事に気が付いた当初から、俺は色々と試行錯誤を繰り返した。
しかし、やはり元々持ったスペックはそう簡単には埋まらず…と言うか埋まる気が欠片も起きず、早くも暗礁に乗り上げたのだった。やはり俺とルナでは持っている才能が違う…俺が魔法を使う限りはどうやっても越えられない壁だ。
そう思った時、ふと気が付いたのだ。
じゃあ、俺、詠唱しなければいいんじゃね?イメージ構築も、全部しなければいいんじゃない?って。
頭の構造が違うならそれは他の物にやらせればいいんだよね。そうだよね。
他の物って何?何かは分からんが、魔法を作る魔法を作れば良いんじゃないの!?
そうして、出来たのが魔法陣だ。
この魔法陣の技術、それはもう最高だった。正に笑いが止まらない程に。
これは簡単に言えば、プログラミングと同じ様な物だったのだ。
ある入力に対し、最適解を出すプログラム。しかも、もちろん、術者が改編可能。
応用次第で幾らでも、どんな魔法でも作れてしまう、正に神のプログラム言語だった。
俺は、この時ほど、元の世界で、IT系ブラック企業で(大げさでも何でもなく、胃に大穴開いて)血を吐きながら習得したプログラム技術を、学んで良かったと思った事は無い。っていうか、学んで良かったと思ったのがそもそも初めてだ。
早速使ってみたものの、またも壁にぶち当たる。
余りにも使いにくいのだ。柔軟性が無い。
例えば以前使ったフレイムランスを例にとると、
魔力 ⇒ 形態構築:槍 ⇒ 属性決定:炎 ⇒ 顕現範囲:魔力力場 ⇒ フレイムランス
といった具合に、1ステップ1ステップ処理を行わないといけないのだ。これでは、あまり意味が無い。
最初から最後まで書いておけば、それはそれで一つの魔法として発動するが、一回定義した魔法は向きも威力も形も変えられないのだ。
これでは全く役に立たない。そこで俺は、パラメーターを省略し、更に並列化した。
魔力 ⇒ 魔法陣:【呼:ランス】(形態:槍 属性:任意 顕現範囲:魔力力場 威力:魔力依存) ⇒○○ランス
これだけで、必要なイメージはフレイムランスを使いたいなら、炎一つになる。
更に( )内の処理は、並列で行われる。つまり、炎と決めた瞬間に全て終わっているのだ。
もちろん、水も、風も、雷も、ぶっちゃけ、光だろうが闇だろうが、なんでもランスになる。込めるイメージだけ間違わなければいい。
しかも、このランスを使って、更に別の魔法を作る事だって出来る。
例えば、この魔法が100本同時に出来る様な魔法を作ったとする。
あくまで喩だが、こんな感じでイメージすると分かり易いだろうか?
魔力 ⇒ 魔法陣:【呼:ガトリング】(継承:【呼:ランス】×100 属性:任意)
実際には魔法陣自体をいじるので、文字で書くわけでは無いのだが、イメージ的にはこれで、100本ランスが出て来る。
まぁ、位置や発射タイミングとか、色々調整の必要はあるのだが、決まった効果を望むのであれば、必要に応じて作成しておけば、魔力の続く限り、何本でもランスが打てる。
ただ、これでもまだ、使いにくい。
パラメーター自体をその魔法陣が持ってしまっているのが痛いのだ。
ならば、パラメーターもパターン化してしまえばいい。
そして、必要に応じてそのパターンを読みだす。
あらかじめ、共通パラメーターを作成しておく。
そして、そこをいじるだけで、魔法陣すべてのパラメーターを変更できるなら…手間は一気に少なくなる。
もっと良いやり方もありそうだから、これからも試行錯誤は必要そうだな。
そうして俺は、色々な魔法を作成していった。その中には、おいそれとぶっ放せないものも含まれている。正に対殲滅用魔方陣もノリで作ってしまった。
使う日が来ない事を祈る。いやマジで。
余談であるが、ルナはこの魔法陣を巧く使いこなせない。どうも俺のやっていることが複雑すぎるらしいのだ。
これは、自分でいじって、作成しないと駄目なので、ルナの利点をどうにも生かせないらしい。
それなら、自分で全部、イメージから生成までしてしまった方が本人は楽との事。なるほど…これは魔法に対する考え方の違いなんだろうな。
もしかしたら、魔法陣は何かに封じ込められるかもしれないし…そうしたら便利な物はルナに持たせよう。
まぁ、ともかく、この魔法陣のお蔭で、俺もルナと一進一退の攻防を繰り広げられるようになった。
これからも、慢心せずに、どんどん色々な魔法を開発していこうと思う。
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