比翼の鳥

風慎

第2話【翼の章:笑顔 ~ お勉強(良い子の国語編)】

『――――比翼システム―――スタンバイ――――セットアップ実行……構築中……構築中…………構築完了。』

 ツバサと握手をしたとき、わたしのなかで、こえがきこえたの。

『認証……被検体……213番。認証終了。バディ登録に入ります。』

 ひけ……? ばでぃ? なにかな? よくわからない……。

『バディ認定…………【佐藤 翼】:シンクロ率5% 特殊能力に【絶対共感】あり。バディとして極めて優秀であると推測されます。』

 ん? ツバサ! ツバサ良いの?

『【佐藤 翼】を、バディ登録致しますか?』

 ツバサ良いよ! わたしツバサが良い!

『承認されました。論理バイパス構築――――構築完了。第一次接続、開始します。』

 そのしゅんかん……わたしの中に、色々なものが、記おくが、記録が、理解が入り込んできて、私の世界を染め上げて行ったの。
 これは……なに?わたしの中に入って来るこれは……?

 いままで、よくわからなかった白い線が、色を持ち始めたの。
 ツバサ以外の物に、色がつき始めたの。
 わたしの世界が……急速に広がって行く……。

『第一次接続――――完了。基本言語及び、基礎知識の書き込み――――――――完了。』

 見える物が増えて、分かる事が一気に増えたの。これは……何?
 色?これは色?白くない……なんだろう? この胸の中から湧き上がってくる感情。
 不思議に思ってると、ツバサが話しかけて来たの。

「っと。これが握手ね。仲良くなろうねーっていう時に使うんだよ。こうして柔らかく手を握って上下にシェイク!」

 手が上下に振られて……あ、手が離れちゃった。
 なんだろ。もっと握手したかったな……。
 私はじっと自分の手を見つめてたの。

『登録完了致しました。【佐藤 翼】は、披検体213番にバディ登録されました。』

 んん? ひけん……? それは何? あなたはだぁれ?
 何処にいるの?周りを見ても……いないの?

『……解答いたします。私は、情操教育支援OS【Cultivation-of-aesthetic-sensitivity support OS】です。』

 コティ……何? よく分からないから、コティね!
 私はルナって言うんだよ!

『了解いたしました。以後、披検体、213番をルナ様と呼称いたします。』

 うんうん! 握手!

『……解答いたします。私はシステムの為、物理的接触……つまり握手は不可能です。』

 そうなの?うーん……残念。
 じゃ、ツバサをもう一回、握手しよっと!

 んふーー!
 握手良いね!!あったかいの!
 なんだか顔が勝手に動くよ? なんだろな!? けど、良い気持ち。
 んふふー!
 なんだかツバサも変な顔? けど、良いね! ツバサ良いね!
 なんか変な動きまで入ったよ? 変ね! ツバサ面白いなー。

 その後で、色々とツバサに教えてあげたし、魔法も見せたの。
 ツバサが、凄く騒いで……なんだか大声で色々と叫んでたけど、私も凄い楽しかったの。
 魔法って、そんなに凄い物なのかなぁ?
 またツバサに見せてあげたら、楽しくなるかなぁ?

 そんなふわふわとした気持ちのまま、私の意識は薄れて行ったの。

『睡眠時に、記憶領域のデフラグを行います。デフラグによって、記憶の定着、及び、理解度の促進が期待できます。――――デフラグ開始――――。』

 そんな声を、遠くで聞いた気がするの……コティ?
 そして、私の心は眠りへと沈んで行ったの。

 私は、暖かい温もりの中にいたの。
 それはとても幸せで……そう、これは幸せ?
 幸せって言葉……聞いた事が無いのに知っているの。不思議ね。

 あ、起きなきゃ。
 パチッと目を開けたら、そこにはツバサの顔があったの。
 この暖かさはツバサだったんだ。んふー♪ なんだか幸せ!

「ルナ、おはよう。」

 おは? なんだろ?

「もしかして、おはようの意味が分からないとか?」

 ツバサ凄いね! 何でルナの事分かるんだろ!?
 その後、挨拶? を教えて貰ったの。
 よく分からないけど、ツバサがして欲しいならルナ、頑張るよ!

 そうだ、洗濯しないと!
 ツバサも一緒に洗濯しよう。一緒……んふー♪ なんかいいね!
 ツバサは黙って着いてきてくれたの。
 喜んでくれるかなー? そうか、これが喜ぶって事なのね!
 なんだか、胸から暖かいものが湧き上がってくるの。
 んー! 今日は頑張って、ツバサを喜ばそう!

 ん? ツバサ行くよ~? せーの!

 今日はいつもより一杯回して、綺麗にしたの!
 これで、ツバサ喜んでくれるかな?
 洗濯が終わって、湖の縁に降り立ったのに、ツバサが何だか変なの。
 あれ? どうしたんだろう?

「ルナ……これは洗濯とは呼べん……。」

 そう言い残して、ツバサはぺしゃんと、寝ちゃったの。
 あれー? ツバサ、また寝ちゃうの?
 ? 何か赤いよ? ツバサ、何処から出してるの?
 ルナが不思議がっていると、どこからか「ピー!」って、鋭く大きな音が聞こえたの。
 これは何? 

『バディ【佐藤 翼】のバイタルが、イエローゾーンに突入しました。処置無し状態のまま放置しますと、後5分以内にレッドゾーンに移ります。』

 あ、コティ? おはようー!

『……解答いたします。おはようございます。』

 んふー♪ そっか。挨拶良いね! 何だか嬉しいの!

 ねぇねぇ、コティ? ツバサが動かないの。

『……解答いたします。バディ【佐藤 翼】は、只今、生命に関わる重篤な傷を負っています。処置できない場合は、死亡いたします。』

 死亡? それは何?

『……解答いたします。2度と動く事が無く、しゃべる事も会う事も出来ない状態とお考えください。』

 え!? やだ!! ツバサ動かなくなるのやだ!!
 どうしたらいいの!? コティ! 助けてよぉ!! やだよぉ!!

『……解答いたします。ルナ様の治癒魔術を持って、バディ【佐藤 翼】を治療する事をお勧めいたします。』

 治療魔法? ルナ、そんなの使えないよ? 知らないよ!?

『……解答いたします。ルナ様の治療魔法を私がサポートいたします。魔力供給と、バディ【佐藤 翼】が回復するように、心で思い描いて下されば、後はこちらで、施術を行います。』

 わかった! お願い! コティ!! ツバサを助けて!!

『了解致しました。治療魔法のサポートに入ります。――――ユグドラシルシステムに接続――――リンケージ――――完了。治療プログラムを対象者に構築中――――完了。ルナ様、バディ【佐藤 翼】に、魔力放出をお願いします。』

 分かった! ツバサ! 死んじゃやだ!! 治って!!
 暫くすると、ツバサから出ていた赤い水がツバサの中に戻って言ったの。

『バディ【佐藤 翼】のバイタルが正常値に移行。ルナ様、バディ【佐藤 翼】は、回復いたしました。』

 本当!? もう大丈夫!?

『……解答いたします。後遺症等含め、問題ありません。』

 よかったよー! ツバサ―!! えうー!!

 ツバサ! 早く起きてよ!
 うう、さっきからなんだか視界がはっきりしないの。 勝手に声が出るの!
 胸が苦しいの! 息もし辛いの……。だから、早く、ツバサに起きて欲しいの!
 そして、しばらく揺すっていたら、ツバサが目を覚ましたの。 よかった!!

 ルナは、その後、ツバサに謝って、ツバサに一緒に居て貰う事になったの。
 これからはずっと一緒! 嬉しいな!

 その後、食事をツバサと一緒にしたの。
 また、ルナそこでも失敗しちゃったの……。鳥さんのごはん……。
 リンゴ? ってツバサが言っていた木さんも、全部壊しちゃった。
 ルナ、本当に知らないことだらけ。
 もっと、いっぱい知って、ツバサのために、何かしたいなぁ。

『……解答いたします。ステータス・フィードバック機能の使用をお勧めいたします。』

 あ、コティ? すて…なぁに?それ?

『……解答いたします。ステータス・フィードバック機能とは、ルナ様が会得した知識を元に、その物体のステータスを閲覧できるようになるシステムの事です。』

 むー……。コティの言う事難しいよ。

『……解答いたします。ルナ様、ルナ様が倒してしまった木をご覧ください。』

 ルナが倒れた木を見ると、何か頭の中に浮かび上がって来たの。
 これはなんだろ? 名前……? あ!リンゴ(仮)って書いてある!

『……解答いたします。今のように、ルナ様が知り得た情報は、その物体を見れば、すぐにまた閲覧が可能です。基本言語は、バディ【佐藤 翼】の基本言語と同じ、日本語で設定されております。更に知識が増えれば、詳しい情報が閲覧可能です。』

 そっかー! ありがとうね! コティ!!

『……解答いたします。お礼は必要ありません。私は、ルナ様を最大限サポートするのが使命であり、存在理由です。』

 んー? けど、何かしてもらったらお礼は大事って! ツバサ言ってたよ! だからありがとうね!

『…………解答いたします。承りました。』

 うん! これからもよろしくね! コティ!

『こちらこそ、宜しくお願い致します。』

 その後、ツバサに質問の仕方を聞いて、色々と教えて貰ったの。
 分かる事がどんどん増えて行って、楽しいの!

 なんか、ツバサがルナの切っちゃった木の残りに、治療してほしいって言うからしてみたの。
 もしかしたら、木が生えて来るかもしれないって!
 今回もコティがやってくれたけど、ルナもやれたら良いよね。
 コティ、ルナも治療魔法使えるようになる?

『……解答いたします。可能です。今行った治療をトレースし、経験として蓄積いたしました。魔力の流れをトレースいたします。なぞる様にルナ様も真似して練習なされば、すぐに上達するでしょう。』

 そっか! ルナ頑張る! コティありがとね!!

『…………解答いたします。承りました。』

 そうして、ツバサと一緒に、家に戻ったの。
 手をつなぐって、嬉しいの!
 暖かくて、柔らかくて……顔が勝手に動いちゃうの。
 ツバサって凄い! ルナ一人じゃ出来なかった事、どんどんしてる。
 ルナ……もっと、ツバサの力になりたいなぁ……。
 ツバサがいると、ルナ嬉しいな。ツバサも嬉しいって思ってくれてるかな?

 そんな風に、家に帰って2人で眠ったの。
 こんな日が、続くと良いなぁって思いながら……。

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