どうやら魔王は俺と結婚したいらしい
90
あれから薄着の衣服を着たまま長く苦しい時間が進み夕方になった、この時間になると空が赤く染まる頃なのに空は鉛色に覆われた、雨が降ってるから夕日なんて見れる訳が無いか。
ぽつっぽつっーーと降り始めていた雨も強くなり店にいたお客はいなくなってしまった。
「もう店を閉めた方が良いんじゃない?」
ラキュが窓に手を当てながら外の様子を見ている、雨宿りの為に急いで家に帰る魔物達が見える……魔物も人間と同じで濡れるのが嫌なんだな。
「あぁ、客ももう来ないだろうし閉めようか」
これじゃ客も来ない……と言うか今日は早く店仕舞いしたいと思ってたから好都合だ、ラキュの言う通りこのまま閉めてしまおう。
「そうと決まれば閉店の準備しようか」
俺の方に振り向き休憩室から出ていく、って行動が速いな、ラキュの方も早く閉めたかたらしい……そりゃサラシと褌だもんな、早く服を着たいと思ってるんだろう。
よし……早く店仕舞い出来るように頑張ろう、少しでも早くラキュに服を着せてやるんだ、という訳で後を追うようにラキュに着いていき店を閉める準備をし始める、早く閉めないとややこしい事になりそうだからな。
「よし……掃除も済んだしもう閉めて良いんじゃない?」
パパンッと手を払うラキュ……サラシに褌姿で掃除する光景は何かシュールだった、そんなラキュを見つつ俺も店内を見渡す、うん……商品も片付けたし着たくもない衣装も衣装部屋に片付けた……あのまま片付けずに捨ててやりたいがそんな事をすれば俺の命が危うくなるので止めておいた。
「そうだな、じゃっ戸締まりして帰るか……って外雨だったな」
ふぅ……と一息ついて帰ろうと店を出ようとした時だ、傘なんて持ってきていない事に気が付いた……さっさと帰りたい……まぁ、俺の場合鎧を着ればなんの問題も無いんだがラキュはサラシに褌だからな、雨に打たれたら偉い事になってしまう。
「あぁ……それなら転移する魔法を使うから大丈夫だよ」
「そう言えばあったなそんな魔法」
転移する魔法、棺桶ワープだ……本当に便利だよなそれ、と言うかあの悲惨な状況でその魔法の事すっかり忘れてたな。
「じゃ早速それを使って貰えるか?」
「そうだね、それじゃ……あ」
ラキュが指を鳴らそうとした時だ、窓の方を見る……そして何かに気付いた様だ、何か苦笑しているが……まさかヴァームがきたのか? そう思って身構える……すると扉が勢い良く開かれた!
そこに現れたのは……黒い傘を持ったロアだった、いつものへそ出しの服を着ている……傘をさしているのにも関わらず少し服が濡れてしまっている、それほど雨が強いんだな……此処から見ても凄く降ってるもんな。
ぽたっぽたっーーと傘から雨水が滴り落ちる……あぁ、折角掃除したのに床が汚れてしまったじゃないか。
「シルク向かえに来たのじゃ、いやぁ……降ると思ったがここまでとはのぅ」
俺を見てにこっと笑った後雨空を見て苦笑する……本当だな、もう扉を開けた瞬間、ダァァッーー凄い音が鳴って勢い良く降っている……これ、後で雷落ちるんじゃないか?
「でも安心するのじゃ!わらわが向かえに来たぞっ、さぁ念願の相合い傘をするのじゃ」
と心配していると、らんらん嬉しそうに話してくる、こらっ! 傘を振るなよ……水飛沫が飛ぶだろう。
「そう言う事なら僕は邪魔だね……先に城に戻ってるよ」
「あっラキュよ待つのじゃ……行ってしまった」
ラキュはロアに視線を合わさずに棺桶を出してその中に入った、すると棺桶は霧の様に消え失せる……逃げる様に去って行ってしまった。
「何かあったのか?」
「んー……ちぃとな」
これは姉弟喧嘩と言う奴だな、色々あったんだろう、と……今はそれよりもこっちが問題か。
「話を戻すけど……」
「ん?」
ロアは傘をくるくる回しながら首を傾げる……傘を動かすな、もう床びしょびしょじゃないか! その事を言っても「くふふぅやってしまったのじゃ」と軽く返されてどう仕様も無くなる、此所は口を出さないで置こう。
「わざわざ向かえに来てくれたんだな」
「うむっ、雨が降った瞬間に直ぐに行動したのじゃ、くふふぅ憧れだったのじゃよ……シルクと一緒に相合い傘と言う物をするのが」
にっと白い歯見せてくるロア……その笑顔が明るすぎて何故か照れ臭くなってしまう、だから視線を反らす。
「そうか……」
「そうなのじゃ!」
元々行動力が有り過ぎるのは今までで嫌と言う程分かってるからな……全部俺を想っての事だよな?
「なら、その言葉に……あっ甘えさせて……貰おうかな?」
本来なら相合い傘なんて恥ずかし過ぎてするのは嫌なんだが……ロアを見ると決めたからには受け入れようじゃないか、照れながら言ったので頬が赤くなってしまった……ロアは見てないよな? 横目で見てみると目をキラキラさせていた、どうやらしっかり俺の表情を見ていたらしい。
「しっシルクがデレたのじゃ!」
「あっ阿呆……そんなんじゃない、ロアの親切を無駄にしたくなかったからだ……デレた訳じゃない」
傘を閉じて俺にぺたぁーとくっついてくるロア、そんな事をしてくると当然ロアは胸が大きいので俺の腕に当たってしまう、ほんと柔らかいよな……って! 何考えてるんだ俺は!
「くふふ……そう言う事にしておくのじゃ」
どうやらロアは納得してくれた様だ、俺を出口へと引っ張り扉を開く、うっ……本当に雨の勢いが凄いな。
「そう言えばシルク……」
「何だよ」
まじまじと俺を上から下まで見てくる……何だ、何か可笑しい所でもあるのか?
「何か汗臭いし濡れとらんか?」
「その事に関してはノーコメントだ」
そんな事を俺が言うと不思議そうな顔をするロア、「まぁ良いか……」そう言って傘を開き俺をその中に入れてくる。
「ではささっと帰るのじゃっ」
「待てよ、今鍵を閉めるから……よし戸締まり完了」
短パンのポケットから店の鍵を取りだしガチャリと閉める、それをした瞬間にロアに腕を引っ張られる。
「おっおい急に引っ張るなよ」
「くふふふ……すまぬ、早くこうしたかったのじゃ」
ぴとっと俺の身体に触れてくるロア、あっ歩き辛い上に何か恥ずかしい……。
「……」
だが此所は我慢だ、俺は少し考える、ここで何かをすべきだと、思って雨の城下町を相合い傘しながら考える……よし、まずこれをしてみるか。
「傘」
「ん、どうした?」
ロアは俺を見てくる、取り合えずこれはすべだろうと思った事を実行してみる、これもロアを見て答えを出す為だ。
「持つよ……」
そう言ってロアから傘を取る、こうして俺から距離を縮めれば何かしらの答えは出る筈だ。
「……あっありがとうなのじゃ」
顔を真っ赤にして感謝される、この調子でいけば答えは出る……出るんだよな?
それは突然の疑問だった、俺はロアを見て答えを出すつもりでいる、でもそれは見ているだけで何も行動していない……結果、何も進展しないのではないか……そんな答えが頭を過った。
「どうしたシルク?難しい顔をしておるな」
「いっいや……何でもない」
俺が険しい顔をしたのが気になったのか少し前に出て見てくる、咄嗟に誤魔化し「そうか……」とロアを納得させる。
……どうする? 急にこんな事を思ってしまった、見る以外にする事なんて……と、此処で俺は1つだけすべき行動を思い付いた、でもそれは無意識に避けていた事だ……他に方法が無いか深く思考して見る、だが他の方法なんて考え付かなかった……と言うか、答えを出すなら逃げちゃ駄目だよな? なら言わなくちゃ駄目だ、俺は意を決してロアを見る、すると? マークが出そうな位疑問を浮かべてくる。
「ロア……」
「なんじゃ?」
俺はその場に立ち止まり大きく息を吸って思っている事を打ち明けた。
「俺はロアの事を確実に意識し始めた……それは俺の好きな人とロアが重なっているからだ……」
「…………ふぇふぁ!?」
俺の突然の言葉に軽くジャンプして驚くロア、何か変な声が出たな。
「俺は何故そう思うのかどうしても答えを出したい」
「ちょっ……しっしるっシルク!?」
わたわたと騒がしく手をバタバタさせ顔が真っ赤になり慌てふためくロアを無視し続ける。
「だから廊下の魔法を解除してくれ、答えが出るまで俺は逃げないし隠れもしない……出来る限りロアを見ていたいんだ」
よし言えた……と此処でやっと気付く、あれ、今の告白見たいじゃないか? 急激に恥ずかしくなり顔が真っ赤になる俺……ろっロアと同じ表情になってしまった。
「あっあぅ……よっよもやそんな事をいっ言われる等思っても見なかったのじゃ」
毛先を指で摘まんで弄り始める……じぃと俺を見つめてくるロアは小声で「嬉しいのじゃ」と呟いた、そしてそのまま顔を近付けて来る、これ……キスする気だよな? そう察した俺は咄嗟に後ろに下がる……がしかし!
「逃げも隠れもしないのじゃろ?」
と言われてしまった……別にお前のハードなスキンシップを全て受け入れると言う意味で言ったんじゃ無いからな? と思いつつもそんな事言った手前抵抗なんて出来なかった、なので俺はロアを受け入れる事にした。
「くふふふ……」
そう笑いつつゆっくりと唇を合わせに来るロア、その距離が数ミリになった瞬間……ピカッ!と空が光った、咄嗟に俺とロアは上を見上げる、すると光の中に誰かの影が見えた……それは髪が長くてそれを1つに縛った女性のシルエット。
それが段々と近付き徐々にそれが何かを理解する、人だ、人が空から降ってきた……えっ? そっ空から人ぉぉ!? あまりの衝撃的な事実に声も出ない俺、すると急にロアが俺をお姫様抱っこしてくる、なっこんな時に何をしてるんだ!? とそう思った時だった、轟く雷鳴と共にその人は高らかに声を上げた。
「私のシルクから離れろぉぉぉっ!!」
ズドォォォンッと雷が落ちたかの様な衝撃が辺りに轟いた、なっなんか目の前に人が……おち……落ちて来たぞ? なのにも関わらずその人は無事だ……あれ?何かこの人知った顔だぞ? 拳を当てた地面はひび割れる、ひっ人って高い所から落ちたら無事では済まないよな?
こんなとんでもない事を成し遂げてしまう人なんて1人しか思い当たらない……ポニーテールが風でゆらゆら揺れて静かに佇むのは……俺の幼馴染みである、アヤネだった、えと……なっ何してるんだアヤネぇぇぇ!
「誰じゃお前?」
物凄い剣幕でアヤネを睨むロア……ゴロゴロと雷が鳴り響く、アヤネはゆっくりと立ち上がり地面に叩きつけた拳を払いながら言い放つ。
「私はアヤネ ブレイブ……シルクの幼馴染み……あれ?」
軽く自己紹介を済ませた後アヤネは小首を傾げる、どうやら俺の姿に疑問を感じたらしい。
「背が縮んでる……性別も変わってる……そっくりさん?」
「いや、本人だ」
思わずそんな突っ込みを入れると「ん?」と疑問を浮かべる……まぁ、悩んでしまうのは仕方ない、雨に濡れるアヤネは「多分……本人だよね、匂いはシルクのだったし」と呟いた後、1度こほんっと咳払いしビシッとロアに指差し再び言い放つ。
「性転換したシルクをこっちに渡して……」
なんか物凄い解釈をされてしまった、性転換と言うか薬でこうなったんだけどな。
「急に現れて図々しい奴じゃな……喧嘩でも売ってるつもりかえ?」
うっ……雷が鳴りはじめて酷い天気なのにこの場の空気がピリピリし始めたぞ? と言うかこの2人、今にもバトりそうな雰囲気なんだけど……そうなったら俺絶対に止められないからな? と言うか……なっなんだこれ? 何か急に色んな事が起きすぎて理解できないぞ? いっいや1つだけ分かった事がある、それは確実に何かしらの波乱が引き起こると言う事だ、さぁ……かつてない程の修羅場が今始まる! 
ぽつっぽつっーーと降り始めていた雨も強くなり店にいたお客はいなくなってしまった。
「もう店を閉めた方が良いんじゃない?」
ラキュが窓に手を当てながら外の様子を見ている、雨宿りの為に急いで家に帰る魔物達が見える……魔物も人間と同じで濡れるのが嫌なんだな。
「あぁ、客ももう来ないだろうし閉めようか」
これじゃ客も来ない……と言うか今日は早く店仕舞いしたいと思ってたから好都合だ、ラキュの言う通りこのまま閉めてしまおう。
「そうと決まれば閉店の準備しようか」
俺の方に振り向き休憩室から出ていく、って行動が速いな、ラキュの方も早く閉めたかたらしい……そりゃサラシと褌だもんな、早く服を着たいと思ってるんだろう。
よし……早く店仕舞い出来るように頑張ろう、少しでも早くラキュに服を着せてやるんだ、という訳で後を追うようにラキュに着いていき店を閉める準備をし始める、早く閉めないとややこしい事になりそうだからな。
「よし……掃除も済んだしもう閉めて良いんじゃない?」
パパンッと手を払うラキュ……サラシに褌姿で掃除する光景は何かシュールだった、そんなラキュを見つつ俺も店内を見渡す、うん……商品も片付けたし着たくもない衣装も衣装部屋に片付けた……あのまま片付けずに捨ててやりたいがそんな事をすれば俺の命が危うくなるので止めておいた。
「そうだな、じゃっ戸締まりして帰るか……って外雨だったな」
ふぅ……と一息ついて帰ろうと店を出ようとした時だ、傘なんて持ってきていない事に気が付いた……さっさと帰りたい……まぁ、俺の場合鎧を着ればなんの問題も無いんだがラキュはサラシに褌だからな、雨に打たれたら偉い事になってしまう。
「あぁ……それなら転移する魔法を使うから大丈夫だよ」
「そう言えばあったなそんな魔法」
転移する魔法、棺桶ワープだ……本当に便利だよなそれ、と言うかあの悲惨な状況でその魔法の事すっかり忘れてたな。
「じゃ早速それを使って貰えるか?」
「そうだね、それじゃ……あ」
ラキュが指を鳴らそうとした時だ、窓の方を見る……そして何かに気付いた様だ、何か苦笑しているが……まさかヴァームがきたのか? そう思って身構える……すると扉が勢い良く開かれた!
そこに現れたのは……黒い傘を持ったロアだった、いつものへそ出しの服を着ている……傘をさしているのにも関わらず少し服が濡れてしまっている、それほど雨が強いんだな……此処から見ても凄く降ってるもんな。
ぽたっぽたっーーと傘から雨水が滴り落ちる……あぁ、折角掃除したのに床が汚れてしまったじゃないか。
「シルク向かえに来たのじゃ、いやぁ……降ると思ったがここまでとはのぅ」
俺を見てにこっと笑った後雨空を見て苦笑する……本当だな、もう扉を開けた瞬間、ダァァッーー凄い音が鳴って勢い良く降っている……これ、後で雷落ちるんじゃないか?
「でも安心するのじゃ!わらわが向かえに来たぞっ、さぁ念願の相合い傘をするのじゃ」
と心配していると、らんらん嬉しそうに話してくる、こらっ! 傘を振るなよ……水飛沫が飛ぶだろう。
「そう言う事なら僕は邪魔だね……先に城に戻ってるよ」
「あっラキュよ待つのじゃ……行ってしまった」
ラキュはロアに視線を合わさずに棺桶を出してその中に入った、すると棺桶は霧の様に消え失せる……逃げる様に去って行ってしまった。
「何かあったのか?」
「んー……ちぃとな」
これは姉弟喧嘩と言う奴だな、色々あったんだろう、と……今はそれよりもこっちが問題か。
「話を戻すけど……」
「ん?」
ロアは傘をくるくる回しながら首を傾げる……傘を動かすな、もう床びしょびしょじゃないか! その事を言っても「くふふぅやってしまったのじゃ」と軽く返されてどう仕様も無くなる、此所は口を出さないで置こう。
「わざわざ向かえに来てくれたんだな」
「うむっ、雨が降った瞬間に直ぐに行動したのじゃ、くふふぅ憧れだったのじゃよ……シルクと一緒に相合い傘と言う物をするのが」
にっと白い歯見せてくるロア……その笑顔が明るすぎて何故か照れ臭くなってしまう、だから視線を反らす。
「そうか……」
「そうなのじゃ!」
元々行動力が有り過ぎるのは今までで嫌と言う程分かってるからな……全部俺を想っての事だよな?
「なら、その言葉に……あっ甘えさせて……貰おうかな?」
本来なら相合い傘なんて恥ずかし過ぎてするのは嫌なんだが……ロアを見ると決めたからには受け入れようじゃないか、照れながら言ったので頬が赤くなってしまった……ロアは見てないよな? 横目で見てみると目をキラキラさせていた、どうやらしっかり俺の表情を見ていたらしい。
「しっシルクがデレたのじゃ!」
「あっ阿呆……そんなんじゃない、ロアの親切を無駄にしたくなかったからだ……デレた訳じゃない」
傘を閉じて俺にぺたぁーとくっついてくるロア、そんな事をしてくると当然ロアは胸が大きいので俺の腕に当たってしまう、ほんと柔らかいよな……って! 何考えてるんだ俺は!
「くふふ……そう言う事にしておくのじゃ」
どうやらロアは納得してくれた様だ、俺を出口へと引っ張り扉を開く、うっ……本当に雨の勢いが凄いな。
「そう言えばシルク……」
「何だよ」
まじまじと俺を上から下まで見てくる……何だ、何か可笑しい所でもあるのか?
「何か汗臭いし濡れとらんか?」
「その事に関してはノーコメントだ」
そんな事を俺が言うと不思議そうな顔をするロア、「まぁ良いか……」そう言って傘を開き俺をその中に入れてくる。
「ではささっと帰るのじゃっ」
「待てよ、今鍵を閉めるから……よし戸締まり完了」
短パンのポケットから店の鍵を取りだしガチャリと閉める、それをした瞬間にロアに腕を引っ張られる。
「おっおい急に引っ張るなよ」
「くふふふ……すまぬ、早くこうしたかったのじゃ」
ぴとっと俺の身体に触れてくるロア、あっ歩き辛い上に何か恥ずかしい……。
「……」
だが此所は我慢だ、俺は少し考える、ここで何かをすべきだと、思って雨の城下町を相合い傘しながら考える……よし、まずこれをしてみるか。
「傘」
「ん、どうした?」
ロアは俺を見てくる、取り合えずこれはすべだろうと思った事を実行してみる、これもロアを見て答えを出す為だ。
「持つよ……」
そう言ってロアから傘を取る、こうして俺から距離を縮めれば何かしらの答えは出る筈だ。
「……あっありがとうなのじゃ」
顔を真っ赤にして感謝される、この調子でいけば答えは出る……出るんだよな?
それは突然の疑問だった、俺はロアを見て答えを出すつもりでいる、でもそれは見ているだけで何も行動していない……結果、何も進展しないのではないか……そんな答えが頭を過った。
「どうしたシルク?難しい顔をしておるな」
「いっいや……何でもない」
俺が険しい顔をしたのが気になったのか少し前に出て見てくる、咄嗟に誤魔化し「そうか……」とロアを納得させる。
……どうする? 急にこんな事を思ってしまった、見る以外にする事なんて……と、此処で俺は1つだけすべき行動を思い付いた、でもそれは無意識に避けていた事だ……他に方法が無いか深く思考して見る、だが他の方法なんて考え付かなかった……と言うか、答えを出すなら逃げちゃ駄目だよな? なら言わなくちゃ駄目だ、俺は意を決してロアを見る、すると? マークが出そうな位疑問を浮かべてくる。
「ロア……」
「なんじゃ?」
俺はその場に立ち止まり大きく息を吸って思っている事を打ち明けた。
「俺はロアの事を確実に意識し始めた……それは俺の好きな人とロアが重なっているからだ……」
「…………ふぇふぁ!?」
俺の突然の言葉に軽くジャンプして驚くロア、何か変な声が出たな。
「俺は何故そう思うのかどうしても答えを出したい」
「ちょっ……しっしるっシルク!?」
わたわたと騒がしく手をバタバタさせ顔が真っ赤になり慌てふためくロアを無視し続ける。
「だから廊下の魔法を解除してくれ、答えが出るまで俺は逃げないし隠れもしない……出来る限りロアを見ていたいんだ」
よし言えた……と此処でやっと気付く、あれ、今の告白見たいじゃないか? 急激に恥ずかしくなり顔が真っ赤になる俺……ろっロアと同じ表情になってしまった。
「あっあぅ……よっよもやそんな事をいっ言われる等思っても見なかったのじゃ」
毛先を指で摘まんで弄り始める……じぃと俺を見つめてくるロアは小声で「嬉しいのじゃ」と呟いた、そしてそのまま顔を近付けて来る、これ……キスする気だよな? そう察した俺は咄嗟に後ろに下がる……がしかし!
「逃げも隠れもしないのじゃろ?」
と言われてしまった……別にお前のハードなスキンシップを全て受け入れると言う意味で言ったんじゃ無いからな? と思いつつもそんな事言った手前抵抗なんて出来なかった、なので俺はロアを受け入れる事にした。
「くふふふ……」
そう笑いつつゆっくりと唇を合わせに来るロア、その距離が数ミリになった瞬間……ピカッ!と空が光った、咄嗟に俺とロアは上を見上げる、すると光の中に誰かの影が見えた……それは髪が長くてそれを1つに縛った女性のシルエット。
それが段々と近付き徐々にそれが何かを理解する、人だ、人が空から降ってきた……えっ? そっ空から人ぉぉ!? あまりの衝撃的な事実に声も出ない俺、すると急にロアが俺をお姫様抱っこしてくる、なっこんな時に何をしてるんだ!? とそう思った時だった、轟く雷鳴と共にその人は高らかに声を上げた。
「私のシルクから離れろぉぉぉっ!!」
ズドォォォンッと雷が落ちたかの様な衝撃が辺りに轟いた、なっなんか目の前に人が……おち……落ちて来たぞ? なのにも関わらずその人は無事だ……あれ?何かこの人知った顔だぞ? 拳を当てた地面はひび割れる、ひっ人って高い所から落ちたら無事では済まないよな?
こんなとんでもない事を成し遂げてしまう人なんて1人しか思い当たらない……ポニーテールが風でゆらゆら揺れて静かに佇むのは……俺の幼馴染みである、アヤネだった、えと……なっ何してるんだアヤネぇぇぇ!
「誰じゃお前?」
物凄い剣幕でアヤネを睨むロア……ゴロゴロと雷が鳴り響く、アヤネはゆっくりと立ち上がり地面に叩きつけた拳を払いながら言い放つ。
「私はアヤネ ブレイブ……シルクの幼馴染み……あれ?」
軽く自己紹介を済ませた後アヤネは小首を傾げる、どうやら俺の姿に疑問を感じたらしい。
「背が縮んでる……性別も変わってる……そっくりさん?」
「いや、本人だ」
思わずそんな突っ込みを入れると「ん?」と疑問を浮かべる……まぁ、悩んでしまうのは仕方ない、雨に濡れるアヤネは「多分……本人だよね、匂いはシルクのだったし」と呟いた後、1度こほんっと咳払いしビシッとロアに指差し再び言い放つ。
「性転換したシルクをこっちに渡して……」
なんか物凄い解釈をされてしまった、性転換と言うか薬でこうなったんだけどな。
「急に現れて図々しい奴じゃな……喧嘩でも売ってるつもりかえ?」
うっ……雷が鳴りはじめて酷い天気なのにこの場の空気がピリピリし始めたぞ? と言うかこの2人、今にもバトりそうな雰囲気なんだけど……そうなったら俺絶対に止められないからな? と言うか……なっなんだこれ? 何か急に色んな事が起きすぎて理解できないぞ? いっいや1つだけ分かった事がある、それは確実に何かしらの波乱が引き起こると言う事だ、さぁ……かつてない程の修羅場が今始まる! 
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