どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

93

「華麗に到着っ!」

ヘッグは軽快に立ち止まった後、俺とアヤネを脱衣室の前に立たせた。

「楽しかった……」

まるで遊園地のアトラクションを楽しんだかの様に喜ぶアヤネ、俺は色々と疲れてしまってため息を吐く、此所に着くまでヘッグは「はっはっはっ」と言いながら走ってたから煩かった……耳が痛い、これ暫く耳に残るだろうな。

「では、俺はおさらばするよっ」

そう言った後ヘッグは風の様に「はっはっはっ!」と言い続けながら去っていった、いつでもどこでも騒がしい奴だな……残された俺とアヤネ、その光景にぽかーんと口をあけて暫く見てしまう。

「入ろっか」
「あっあぁ……」

そう言ってアヤネは俺の手首を掴んで脱衣室へ入る、なんか流れで入ってしまったがこのままではアヤネとお風呂に入る事になってしまう。

「じゃ、脱ごっか」
「脱ごっかじゃ無い……俺がいるんだぞ?」

何の躊躇ちゅうちょも無く脱ぎ出すアヤネを止める、アヤネはじっと俺を見てくる、まるで不思議な物を見るかの様な視線だ。

「シルク、そろそろ聞きたいんだけど」
「皆まで言うな……聞きたい事はわかった」

まぁそう言う視線の理由は分かる……俺の身体の事だよな? 出来る事なら言いたく無かったが言うしかない、と言う訳で俺は簡潔に幼女になった経緯を話す。
うん……うん……と俺の話を聞いて時折頷いてくる、たまに「おぉ…」だとか「ほぉ…」だとか驚いた声を出す、本当に理解してるのか? と心配する受け答えだが問題ない、これがアヤネと言う人物だ、つまり分かってない様でちゃんと分かっているのだ。

「そんな事があったんだ」
「あぁ、嘘みたいな事と思うだろうが……まぁ証拠は目の前にあるからな」

「そだね」と呟き自分の髪の毛を弄りだすアヤネ、何故か頬を赤くしてチラチラと俺を見てくる。

「それ、明日に元に戻るの?」
「そうだ、効果は3日間だからな……丁度明日が3日経つ事になる」

いやぁ本当に長いと感じた3日間だった、明日でこの生き地獄ともおさらばだ。

「……ちっ」
「ん、何か言ったか?」

アヤネが何かを言った気がする……何て言ったんだ? 聞いて見たがアヤネは「何でも無い」と言って首を振った、何か言ったと思ったんだがな……まぁ良いか、気にしても仕方がないのでもう考えない事にしよう。
頷きながらそう納得する俺、その時アヤネが俺の服の裾を両手で掴んでくる。

「えいやっ」

そのまま上に上げて、すっぽんっと俺の服が脱げてしまう。

「……おい」
「ん?」

可愛らしく小首を傾げるアヤネ……こいつ、どさくさに紛れてやりやがった。

「何で急に脱がした?」
「女体化したシルクが見たかったから……あっ下も脱がすよ」

流れる様な動作で屈んで下も脱がしにかかるアヤネ、させてなるものか!と思って後退するが出来なかった、何故ならアヤネは既に俺のスカートを掴んでいたからだ。

「せいやっ」

やる気の無い掛け声ですっぽーんと下の方も脱がされた……可笑しいな、普通ならこんな事されたら、恥ずかしくて叫ぶのが当たり前だと思うんだが不思議とそんなに恥ずかしくない……分かった、これは俗に言うとあれだ……慣れだ。

「おぉ……ちっぱい&つるりん」

アヤネの言葉を聞いて下を向いてみる、見てみたら驚いた、何とアヤネはスカートと一緒にパンツまで脱がしていた。

「そんなに見るんじゃない……」

ずびしっとアヤネの頭にチョップを喰らわせる、すると「ひゃん……」と可愛らしいリアクションをとって、こてんと転けてしまう。

「乙女にチョップするなんて……シルクは罪人だ」
「いきなり服を脱がす奴の方が罪人だ」

俺の言葉を聞いた後直ぐに立ち上がって頬を膨らませて、じとーと睨んでくる。

「何だよ、そんなに睨む……ってお前何脱いでるんだ!」

俺が喋ってる間にアヤネは服を脱ぎ出した、白くてスレンダーな素肌を目にしてしまう、直ぐ様手で顔を覆いながら注意するがアヤネの行動は止まらない。

「此処は脱衣場……だから服を脱いでるの」

言い終わると同時にアヤネは衣服を全て脱いでしまった、少し筋肉質な腹筋……すらっとした腕、そして控えめな胸、アヤネの身体全体が露る。

「だからこれからする事は分かるよね?」

睨んだまま俺に近づいてくるアヤネ……それに合わせて後退するが逃げれる訳もなくアヤネに捕まってしまい抱っこされてしまう、そんな事をされれば当然アヤネの胸が目の前まで近付いてくると言う事になる、流石にそれには慣れていない俺は顔を真っ赤にさせ身体が硬直してしまう。

「なっなななっ……ちっ近い!」
「……この際だから近くで見て」

アヤネは俺の後頭部に触れ自分の胸の方に押し当てて来る……くっ! 理性が崩壊してしまう!

「やっやめろ、俺は男だぞ?」
「今は女の子だもん……だからこれは女同士のスキンシップ」

そんな理屈があるか! と心の中で突っ込む、俺を抱き抱えたままアヤネは風呂場へ足を踏み入れた。

「おぉ……おっきいお風呂だ」

目に写るのは豪華なお風呂、それに感心するアヤネ、俺は何度も見ているのでこの光景にも馴れた。

「さぁシルク……身体洗おっか」

俺の顎をくいっと上げてくるアヤネ、むふーっと興奮気味に鼻息を出す、あぁ……これは何度も経験したから分かる、だが相手はロアとは違ってアヤネだ、違う答えが出るかも知れない。

「わっ分かった……1人で洗えるから下ろしてくれ」

だから言ってみた、だけど答えは当然……。

「やだ」

だった……まぁね分かってたよ、そんな雰囲気はしていた、幼馴染みだからと信じていたがアヤネもロアと同じだった……こうして俺とアヤネのお風呂タイムは始まる、幼馴染みと一緒にお風呂なんて何処のラブコメだと突っ込んでやりたい気分だ、とそんな事を思いつつ、望んでいないアヤネとのお風呂の時間が始まる。 

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