どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

73

俺は今非常に不味い状況になっている、もう自分自身で何度目だよ!と突っ込んでしまっている。

「ふむふむ……8歳児位の身長ですね、あと体重は……」

あの後、たっぷり抱っこされた後「身体検査するですよ!」と言って身長と体重を計られている、それだけなら良いか……と俺は一瞬と思った……だが経験上これだけで済む訳が無いと言うのは分かりきっている。
なので床に下ろされた瞬間ダッシュしたんだが……まぁそこはあれだ、いつも通り簡単に捕まってしまった。
今の俺の腰には縄が巻き付けられている……そんな状況に人の気も知らないで目の前で手帳に俺の身長やらを書いている、物凄い笑顔だ……人を幼児化させる薬を作る医学薬学力を持つ医者のメェ、そんかお前に言っておこう、技術を無駄使いするなよ!

「えひひひぃ……あぁ、ショタコンじゃないのに、この可愛さはすりすりせずにはいられないですよぉ」
「ぐっ! 顔を近付けてくるな!」

ペタペタと身体を触ってくる、そりゃぁ胸やら腹やら頭やら色々とだ、しかもその触り方が物凄くやらしい……お前本当に医者なんだよな?

「えひひひぃえひっ……あっ涎が出て来たです」
「きっ汚いっ!」

本当に涎を垂らすんじゃない、服についてたじゃないか!

「さてと…そろそろ服を脱がすですよ!」
「そろそろって何だよ、手をわきわきさせんなっ!」

俺を突き飛ばして床に倒した後、にじりよるメェ……だが俺は動じない、この状況では絶対に服は脱がす事は不可能だ。
何故なら、俺は今縄で縛られている! だから服を脱がせられないっ……と一瞬でもそんな甘い事を考えた俺を殴ってやりたい……不可能で終われば今まで苦労はしてないさ、俺は苦笑を浮かべ虚しく悲しい思いにふける、メェは俺の前で屈む……胸が強調されて偉い事になっている、あっあまり目線を向けないでおこう……って俺は何故倒れたままでいるんだ、悲しい事考えてる場合じゃないだろう!

「にひひのひぃ……またまたお薬投与するですよっ、今回はぶっかけるタイプのお薬ですよ!」

メェが白衣からフラスコを取り出した、その中には水……いや透明な薬だろう、それが入っていた……ほら見ろ! すぐ行動しないから変な薬を取り出したじゃないか! って……ぶっかけるタイプの薬って何だよ。

「一応聞くぞ、それはどんな薬だ?」
「都合良く服だけ溶かす薬ですっ、その名もフクトカースexですっ」

都合良く服だけ溶かす……か、ラムにも同じ事をされそうになったな……緊急回避を実行せねばっ今すぐに! 俺はごろころと転がりメェから逃げる! 無様な逃げ方だと笑えば良いさ……この手の事から逃げ切る事が出来るなら俺は恥を捨てる!

「おぉ……まるで転がる丸太みたいです」

転がる最中、メェがまじまじと見詰めてくる、中々上手い例えじゃないか、と呑気に思いながら扉の方へ向かう、持ってくれよ! 俺の三半規管!

「だがしかぁしっ無駄ぁなのですよ!」

なっ何かメェがするみたいだ……ならば転がるスピードを加速だ!

「秘技、落下点予測お薬投てきあたぁーくっ!」

メェが大きく振りかぶってフラスコを投げた! と言うか、なんて稚拙ちせつなネーミングセンスだ! 落下点予測とか言ってたから俺が逃げる先に合わせてフラスコを投げたんだろう、だがなメェよ……思惑が分かって引っ掛かる程俺は阿呆じゃないぞ? 回転を停止っ!そう思い力を込めて止めようとした、だが悲しいかな……世の中にはこんな言葉がある、人は急に止まれない……その言葉通り俺は止まれず見事にメェの思惑がはまってしまった、俺の身体にフラスコが当たると砕け散り中に入った薬が全身に掛かってしまう。

「ちっちくしょう……うぉぇっ目が回った」

そう呟いた時、俺はやっと止まれた、服がしゅわしゅわいってる……何か泡立ってるし変な匂いがする、結構良い匂いなのが腹立つ。

「きぃ君に教えて貰った『いちご』て言う果物の匂いをつけたです」
「その情報いらねぇよ……」

あぁ……もう下着だけになったじゃないか! あっ言っておくが履いてるのは男性下着だから色々とあれな事を思うなよ?

「さっさっさぁシルク君! メェの研究に役にたって下さいです!」
「おえっぷ……お断りだっ!」

目が回って吐き出しそうなのを我慢しつつそんな事を上げる、メェは素早く俺の所へやって来て抱えあげベットの所へ持っていき、ぽいっと投げ捨てられる。

「ぐっ……乱暴にするな、吐くぞ」
「あぁ……目を回したですか? にひひひ、弱っちぃ三半規管ですねぇ」

あぁ、こいつ……女性だけど殴りたくなってきた。

「ではぁ……いっつショタの身体をチェックなのですよ!」

そう言ってかの大泥棒の3代目を彷彿ほうふつとさせる様なジャンプをして俺に飛び掛かってくる。

「どっしーんっ!」
「いだっ!」

盛大にぶち当たってくるメェは俺をがっちりと抱き逃げないようにする、前はロアがやって来て助けてくれた……今回は来てくれないのか。
そう思った時だ! 扉が勢い良く開け放たれた、来てくれたのかロア……そう思って扉の方に目を向けた、だがそこに居たのは今の状況で絶対に来て欲しく無い奴だった。

「あらあら……随分と楽しい事をやっていますね」

そこに居たのは綺麗なメイド服を着たヴァーム……何時も見せている満面の笑みを浮かべている。

「ヴァっちゃんじゃないですか!」
「ふふふ……メェ、お早う御座います」

ぺこりと深々にお辞儀するヴァーム、なんてこった! 今の俺の姿はヴァームにとっては嬉しいに決まっている、ひっ冷や汗が止まらない……俺はヴァームの姿を見て軽く身震いする。

「ではメェさん、挨拶も済みましたし……始めましょうか」

頭を上げたヴァームは、くるりと回るその際ふわっと軽やかにスカートがなびいた、何なんだよこの状況……俺、今回は今まで以上に不味いかも知れない、いや……知れないじゃない! 今までで一番不味い……メェとヴァームの組合わせは最悪だ、あぁ! 神よ俺を助けてくれ! 絶望的な状況でそう思い乾いた笑みを浮かべる俺……もうどうにでもなってしまえ、はははっ…ははっ……はぁ。

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