どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

515

はぁ……はぁ……ひぃ……ふぅ……。
つっついた、やっとロアの部屋に着いたぞ。
息を乱す俺は、息を整える。

まずは落ち着こう、これから大事な事をするんだ、まず落ち着く事が先決だ。
だから時間を掛けて整える。

「よし……」

だいぶ落ち着いた、じゃぁ……入るか。
そう思ってドアノブに手を掛ける、が……心臓がバクバクしてきた。

ぐっ……急に緊張してきた! こんの小心者め! 落ち着け! 静かになれ!
トンットンッ、と胸を強く叩き落ち着かせ、「よしっ、行くぞ!」って呟き気合いをいれる。

そして、力を込めて扉を……開け放った!

バンッ!!
「ロアぁぁぁぁあぁぁぁっ!!!!」
「ぬぁぁぁあっ! なっなんじゃぁぁっ!!」

あ、しまった。
勢い余ってドアを強く開けすぎた、それに大声出してしまった。
おっ落ち着け、取り敢えず深呼吸して気持ちを落ち着かせて……何気ない感じでまずは話してみよう。

「やっやぁ……偶然だなロア。こんな所にいるなんて」
「え? あっうん……偶然、じゃな」

ぽかーんとしてこっちを見るロア、あっ……やっばいな、なんか何気無く話している感じがしない。

って、ん? ロア……手になんか持ってる。
あれは……縫いかけのマフラー? あ、もしかしてここでマフラー編んでたのか。

と、そんな事を考えるのは先だ。
とっ取り敢えず、ロアの隣に座ろう、話はそれからだ。

「…………」

あ、くそっ、うっ動きが、緊張しすぎて動きがギクシャクしてる! ロアに「なんじゃこいつ」って眼で見られてる。

だっだが、隣に座れたぞ。
あ……なんか驚かれたな、まっまぁそうか、いきなり座られたらな。
そりゃ驚くか、それに今の俺はかなり変に見られてるからな、怪しさマックスだろう。

「……どしたんじゃシルク、頭でも打ったかえ?」

だかはなのか、怪訝な顔をして、バッサリと言われてしまった。
なんて言われようだ、酷すぎる。
でもまぁ、仕方無いか。
実際俺でもそう思うからな。

「いや、打ってないぞ……俺は平気だ。ははははは」
「はっはぁ……それなら良いんじゃが」

……しまらねぇな。
これから告白するってのに、ロアを見てみろ、俺が変過ぎて目線を反らしたぞ。
で、小声でずっと「可笑しくなってしまったのじゃ」とか呟いてる。

こっこのままじゃいけない。
この流れで告白したら……なんかダメな気がする! でもどうする? 下手に話を反らしたら、またずるずると告白を引き伸ばす事になるかも知れない!

いや、そうならない様に俺が頑張れば良いんだ。
よしっ、取り敢えず何気無い話をして流れを掴み告白する! これで行こう……。

「なぁ、シルクよ」

おっと……出鼻を挫かれたが、これこれで良いか。
ロアが話し掛けてくれたのなら、それに合わせて答えれば良い、なにも難しい事は無い。

「なんだ?」

チラチラ俺を見てくるロア、俺はじぃっとロアを見て答える。
すると……。

「率直に聞くが……そのぉ、まっ前まで……そのぉ、あれじゃ、妙に元気が無かったがぁ……いっ今は元気だな。安心したのじゃ、ちょっと元気過ぎるがな。可笑しいくらい……」

……おぅ。
なんか答えにくい問い掛けがやってきた。
いやまて、落ち着け……ここで何も答えないのはダメだ。
普通に答えれば良いだろう、ロアが聞いてきた事は実際そうなんだからな。

あ、あとなロア。
小声で"可笑しいくらい"って言うの止めてくれ、普通に傷付く。

「あっあぁ。ちょっと色々あってな……今はなんとも無いぞ」
「そっそうか。良かった」

ふぅ……と息をはいて、髪の毛を掻き分けるロアは、指を弄る。

「あっあとな……」
「ん?」

お、まだ聞きたい事があるのか……。
だったら答えようじゃないか、バシッとな。

「 最近ずっと……元気なくて、わらわを避けているよな?」

うっ……胸がいたい。
くそっ、これ以上苦しませない為に来たのに、苦しめてどうするんだよ!

「今は、避けて無いだろ?」
「あ、まぁ……そう、じゃが」

曇った表情だな。
そりゃ、俺がしてきた行動を見てればな……そんな顔もしたくなるか。
……これは、キョドってビクビクして告白の機会を伺ってる場合じゃない。

一刻も早く言わないと……ロアの話を邪魔してもな。
そう思った俺は、その事を話そうとする。
が……その前にロアが話した。

「わっわらわの事……嫌いになっ……ひゃわぁぁぁぁぁぁっっ!?」

その瞬間、身体が無意識に動いた。
言わせない、それは言わせない。
だから、ずいっとロアの方に行って顔を近付けた。
また驚かせてしまうが関係ない、それは絶対に言わせてなるか。
ロアを覆う様な形で見下ろした、ただ優しい眼でロアを見て……俺はこう言った。

「ロア。いや、ナハトって言った方が良いか? 嫌いな訳無いだろ。むしろ大好きだ」

そう、嫌いな訳無いんだ。
ずっと側にいて気づけなかった奴が何いってんだ、そう思われるかもしれない。

だが……俺は、好きなんだよ。
そう優しく言った後……俺は、無意識にロアの唇に優しいキスをした。

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