どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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うっ……んん……っ!?
意識を失った俺はズキッ! と響くように感じる痛みで眼を覚ます。

「んん……っ。まだ、痛む……な」

アヤネに思いっきり鳩尾叩かれたからな。
きっとアザが出来たかも……。

「……ここ、どこだ?」

そんな事を気にしつつ、今いる場所に疑問を感じる。
部屋だ、俺、病室みたいなベットで寝てる……周りには誰もいない。

「確か、森にいた……よな?」

なのに室内にいる。
……あ、よくよく見ればここ、見覚えがあるぞ。
ここはあれだ、メェの医療部屋だ。

「と言う事は……俺、魔王城に帰って来た?」

つい、口に出してしまったが……そう言う事だろ。
そか、俺……帰って来たのか、多分アヤネに担がれ……いや、お姫様抱っこか? そう言う感じで運ばれたんだろう。

「よっ……つぅ」

もぞもぞ……。
身体をゆっくり動かして座る。
あ……いつの間にか服も着替えさせられてる。
これは……患者が着る服だな。

なんだ、着替えさせられた中ではまともな服だったな。
なんか……安心した、いやまて、しちゃいけないんじゃないか? いやだって、着替えさせたのアヤネだろうし、なんかされたかも知れない。

と、流石に運んできてもらって疑うのはダメだな。
ここは素直に感謝しよう。

……ガチャ

「ん?」

扉が空いた、そこから……ひょっこりとアヤネが現れた。

「あ、起きてる」
「あぁ……今さっき起きたんだ」
「そか」

とてとて、と近寄って俺をまじまじ見た後。

「シルクが着てた服、一応洗濯して貰ったよ。だから……あそこに置いてある服を着てね」

そんな事を言った。
あそこに置いてある服? 疑問を感じながらアヤネが指指す方を見る。

俺の隣のベットにそれは置いてあった。

「むーちゃんが着てって言ってた」
「おっおぅ……そうか」

きっ着ろ……か。
なるほどな、秋に着るには寒そうな緑色のレースの服をか。

「それ。着たらようせい? の羽根が出てくる魔法の服だって、凄いよね」
「すっ凄いな……」

確かに凄いけど、着たくない。

「妖精をイメージして作ったんだって、さっき聞いた」
「なっなるほど」

あいつはまたとんでも無いものをつくりやがって……。

「帰って来て、ロアやヴァームに何も言われなかったか?」

と、ここで一旦話を変えてみる。
いや、だって……詳しく追求なんてする事が無いからだ。

「言われた。ロアにすっごい怒られた。バカって言われた」

うん、それはなんか想像ついてしまう。
さど大声で地団駄を踏みながら言われたんだろう。

「むぅちゃんにはね、お帰りなさいって言われた」
「そうか」

こっちは凄く普通だ。
ヴァームもキツく言うのかと思った。

「あ。それとね……シルクをここまで運んだのは私。だから褒めて良いよ」
「……ありがと」
「えへへ。それほどでも……ある」

照れるアヤネは、ぐしぐしと頭を掻いた。

「そだ、今着てる服だけど……」
「あ、これか?」

と、ここで突然、ぽむっと手を叩くアヤネ。
何かを思い出したらしい……。
この服がどうかしたのか?

「それに着替えさせたのはメェちゃんだよ。なんかね、病人はこの服を着るです! って言ってた」
「そうなのか」
「うん、そうなの」

なんだ、てっきりロアかヴァームかアヤネかに着替えさせられたのかと思った。

「その時にね、なんかお薬使おうとしてたの」
「…………え?」

ちょっ、今聞き逃せない言葉が聞こえたんだが? 薬って言ったよな?

「でもね、寸でのとこで止めたよ。コラッ! って叱ったの。そしたらメェちゃん悲鳴あげてどっか行っちゃった」
「ナイスだアヤネ。良くやった!」

……よっ良かった。
今も言ったが、ナイスだアヤネ! また女になったりしたら……っ。
考えただけでも恐ろしい事が起きるに違いない。

改めて感謝する、ありがとうアヤネ! お陰で助かったぞ!

「えへへ。どういたしまして」

またまた照れて頭を掻く。
と、数秒程そうやった後……急に真剣な顔になった。
だから俺は驚いた、そして俺も真剣な顔になってしまう。

「ねぇ」
「ん?」

ドキドキしながら応えると、アヤネは指を弄りながらチラチラ俺を見ながら。

「森で私が言った事、もしそうしたかったら……私に言って」

こう言ってきた。
森で言った事? えと……それは……。

「いつでも、連れて帰るから……」

っ! それか。
"だったら……出ていかない? 私と……一緒に"
たしか、アヤネはこう言ってた。
え、でもあれは嘘なんじゃ? その事を言おうとした時、アヤネは足早に扉へと掛けていく。

「じゃね。また来るよ」

そう言い残して、アヤネは出ていってしまった。
その瞬間アヤネが言った言葉が何度も脳裏で再生される。

……出ていく、か。
そう言えば、暫くそんな事まったく考えていなかったな。
まぁそれは、俺がロアを見定める……そう決めたから考えなくなったからだと思う。

なにが見定めるだよ。
自分の好きな人が目の前にいたのに……偉そうな事言いやがって、アホが。

チッ……と舌打ちをした後、おれはまたベットに横になってしまう。
なぜそうしたのかは分からない、だがなんとなくそうしたかったのだ。

……ロア、ごめんな。
何度も思った言葉を繰り返しながら……俺は眠りについてしまった。

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