どうやら魔王は俺と結婚したいらしい
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……それは姉上がまだ幼い時の事。
そして、まだ人間界に魔王城が現れていない時の話である。
◇
「ふっふぉぉぉ。人間の奴等……旨そうな物をくうておるのぅ。羨ましいのじゃ!」 
綺麗な大きな部屋に違和感の塊の様な大きな鏡に、褐色肌の少女がかぶりつく様に見ている。
その少女こそ……ロアである。
まだ胸は小振り、だがヘソだしの服は健在である。
「なぁ。ヴァーム、あれ! あれを食いたいのじゃ」
ロアは目を輝かし鏡に指指しながら言った。
その鏡には、男がステーキを食べている。
この男は、ロア達とは違い普通の人間。
その鏡には、そんな姿が写されている。
どういう事かと言うと……ロアがかじりつく様に見ているこの鏡。
なんと、人間界を覗ける魔法の鏡なのである!
「あらあら。また不可能な事を言いますねぇ」
うきうき顔で無邪気に話すロアに、困るメイド服を着た背の高い女。
頭には捻れた角、尻尾には緑の尻尾……そうこの女はヴァームだ。
「なぜ不可能なのじゃ! なんとかなるじゃろ、魔法を使って、ちょちょいと同じものを出せば良いのじゃ!」
「ロア様の魔法でどうにかならないのに、私がどうにか出来る筈ありませんよね?」
「ぐっ!」
さっきまで小さくぴょんぴょん跳び跳ねて、元気良く言ってたのに、ヴァームの一言で渋い顔をしてガクッと下を向いてしまった。
正論を突かれてしまったのだ。
「でっ出来ん事は無い……」
「あら。では、なぜそれをなさらないのです?」
そうヴァームに言われて「そっそれはじゃなぁ……」と呟いて目尻を下げる。
「父上に言われておるのじゃよ。人間界に行ってはならん……とな」
「まぁ。そうなのですか? 初耳です」
はぁぁぁ……と大きくため息を吐いて、ロアは不満げに口を膨らませる。
「相変わらずかったい事を言うもんじゃ。わらわ、色々食べたい物があると言うのに」
「あらあら、人間界に行きたい理由はそれですか?」
「当たり前じゃ! それしか理由は見当たらん」
なにをさも当然な事を聞くのやら……と言う視線を向けロアは不貞腐れる。
人間界に行きたい理由が、人間界の食べ物を食べたいから……魔物なのに理由がショボいが、ロアは大きく興味を引かれたのだ、だから行きたくなった、仕方の無い事なのである。
「因みに、なぜ人間界に行ってはならないのです? ロア様はまだ魔族にしては幼いですが、魔王の娘……お強いですよね? 万が一人間界に行って、何かあったとしても余裕で解決なさるのでわ?」
そんなヴァームの言葉に、ロアは「ふっ……」と笑って苦笑いする。
「まぁのぉ、わらわ強いし解決出来るよ? そう父上に言った。勿論力だけでなく、知恵を使うなり、金を使うなりして問題解決もするとも言った。しかしな? 父上はな、なんか心配だから行かせられん……とか言うじゃぞ!」
だんっ! と床を踏み鳴らして怒る。
……まぁ、ロアの父がそう言うのもわかる。
平然と金で解決するとか言う娘を、魔族にとって未開の地である人間界には行かせたく無い。
ヴァームも話を聞いてそれが分かった。
しかし、彼女は本音を口に出さない。
ただ笑って……。
「そうですか。よほどロア様の事が心配なのですね」
そう言った。
「余程心配なら、なんか心配とは言わんじゃろうが! なんかってなんじゃ! そのなんかを説明せんか、あんのくそ親父がぁぁぁっ!!」
ダンッ! ダンッ! と床を踏み鳴らしまくるロア。
怒りのボルテージはマックスである。
「ふふふ、まぁ落ち着いてくださいロア様。ロア様のお父様のお気持ちも察してあげてください。ロア様は基本、何も考えずに行動しますから心配なんですよ」
「え、おま……さらっと酷い事言っとらんか?」
「いえ、言ってませんよ?」
うふふふ、と笑うヴァームは口元に手を当てた。
……さらっと毒を吐くのはこの時から何も変わっていない。
「くっ……この従者、魔王の娘に悪口はきおったのじゃ。こんの偽乳ドラゴ……うぴゃぁぁぁ!!」
そして、例え小声であっても自分が気にしてる事を言われて、相手が従者でも関わらず鋭く素早い攻撃を仕掛けるのも変わっていない。
「なにか、仰いました?」
ドス黒いオーラを出してヴァームは微笑んだ。
ロアは震え上がり、素早く首を横に振った。
「なっななな、何も……言って、おっおらん」
「そうですか」
そう言ってヴァームは、一歩ロアに近づき顔をロアの耳元に持ってくる。
「次は、ありませんからね?」
「ひぃぃっ」
ロアは全力で後ろに下がった。
怖い、超怖い、わらわ従者なのにぃぃっ、と今思っている。
震え上がるロアを見たヴァームは「ふふふふ」と笑って鏡を見る。
「あら。見てくださいロア様。別の景色が写りましたよ」
「うっ……うむ」
ヴァームがそう言うので近づく、ただし……ゆっくりと。
さっき思いっきり脅されたから警戒は怠らない。
近付いた後は恐る恐る鏡を見る。
見た後、後ろから攻撃されるんじゃ? とか思ったが……そんな事は無かった。
「……っ! こっこの人間は……」
ただし、ロアにとっての……出会いはあったが。
そう、この瞬間……ロアは鏡越しに出会ったのだ。
一目見て、好きになってしまった人間……シルク ハーベストと言う男に。
そして、まだ人間界に魔王城が現れていない時の話である。
◇
「ふっふぉぉぉ。人間の奴等……旨そうな物をくうておるのぅ。羨ましいのじゃ!」 
綺麗な大きな部屋に違和感の塊の様な大きな鏡に、褐色肌の少女がかぶりつく様に見ている。
その少女こそ……ロアである。
まだ胸は小振り、だがヘソだしの服は健在である。
「なぁ。ヴァーム、あれ! あれを食いたいのじゃ」
ロアは目を輝かし鏡に指指しながら言った。
その鏡には、男がステーキを食べている。
この男は、ロア達とは違い普通の人間。
その鏡には、そんな姿が写されている。
どういう事かと言うと……ロアがかじりつく様に見ているこの鏡。
なんと、人間界を覗ける魔法の鏡なのである!
「あらあら。また不可能な事を言いますねぇ」
うきうき顔で無邪気に話すロアに、困るメイド服を着た背の高い女。
頭には捻れた角、尻尾には緑の尻尾……そうこの女はヴァームだ。
「なぜ不可能なのじゃ! なんとかなるじゃろ、魔法を使って、ちょちょいと同じものを出せば良いのじゃ!」
「ロア様の魔法でどうにかならないのに、私がどうにか出来る筈ありませんよね?」
「ぐっ!」
さっきまで小さくぴょんぴょん跳び跳ねて、元気良く言ってたのに、ヴァームの一言で渋い顔をしてガクッと下を向いてしまった。
正論を突かれてしまったのだ。
「でっ出来ん事は無い……」
「あら。では、なぜそれをなさらないのです?」
そうヴァームに言われて「そっそれはじゃなぁ……」と呟いて目尻を下げる。
「父上に言われておるのじゃよ。人間界に行ってはならん……とな」
「まぁ。そうなのですか? 初耳です」
はぁぁぁ……と大きくため息を吐いて、ロアは不満げに口を膨らませる。
「相変わらずかったい事を言うもんじゃ。わらわ、色々食べたい物があると言うのに」
「あらあら、人間界に行きたい理由はそれですか?」
「当たり前じゃ! それしか理由は見当たらん」
なにをさも当然な事を聞くのやら……と言う視線を向けロアは不貞腐れる。
人間界に行きたい理由が、人間界の食べ物を食べたいから……魔物なのに理由がショボいが、ロアは大きく興味を引かれたのだ、だから行きたくなった、仕方の無い事なのである。
「因みに、なぜ人間界に行ってはならないのです? ロア様はまだ魔族にしては幼いですが、魔王の娘……お強いですよね? 万が一人間界に行って、何かあったとしても余裕で解決なさるのでわ?」
そんなヴァームの言葉に、ロアは「ふっ……」と笑って苦笑いする。
「まぁのぉ、わらわ強いし解決出来るよ? そう父上に言った。勿論力だけでなく、知恵を使うなり、金を使うなりして問題解決もするとも言った。しかしな? 父上はな、なんか心配だから行かせられん……とか言うじゃぞ!」
だんっ! と床を踏み鳴らして怒る。
……まぁ、ロアの父がそう言うのもわかる。
平然と金で解決するとか言う娘を、魔族にとって未開の地である人間界には行かせたく無い。
ヴァームも話を聞いてそれが分かった。
しかし、彼女は本音を口に出さない。
ただ笑って……。
「そうですか。よほどロア様の事が心配なのですね」
そう言った。
「余程心配なら、なんか心配とは言わんじゃろうが! なんかってなんじゃ! そのなんかを説明せんか、あんのくそ親父がぁぁぁっ!!」
ダンッ! ダンッ! と床を踏み鳴らしまくるロア。
怒りのボルテージはマックスである。
「ふふふ、まぁ落ち着いてくださいロア様。ロア様のお父様のお気持ちも察してあげてください。ロア様は基本、何も考えずに行動しますから心配なんですよ」
「え、おま……さらっと酷い事言っとらんか?」
「いえ、言ってませんよ?」
うふふふ、と笑うヴァームは口元に手を当てた。
……さらっと毒を吐くのはこの時から何も変わっていない。
「くっ……この従者、魔王の娘に悪口はきおったのじゃ。こんの偽乳ドラゴ……うぴゃぁぁぁ!!」
そして、例え小声であっても自分が気にしてる事を言われて、相手が従者でも関わらず鋭く素早い攻撃を仕掛けるのも変わっていない。
「なにか、仰いました?」
ドス黒いオーラを出してヴァームは微笑んだ。
ロアは震え上がり、素早く首を横に振った。
「なっななな、何も……言って、おっおらん」
「そうですか」
そう言ってヴァームは、一歩ロアに近づき顔をロアの耳元に持ってくる。
「次は、ありませんからね?」
「ひぃぃっ」
ロアは全力で後ろに下がった。
怖い、超怖い、わらわ従者なのにぃぃっ、と今思っている。
震え上がるロアを見たヴァームは「ふふふふ」と笑って鏡を見る。
「あら。見てくださいロア様。別の景色が写りましたよ」
「うっ……うむ」
ヴァームがそう言うので近づく、ただし……ゆっくりと。
さっき思いっきり脅されたから警戒は怠らない。
近付いた後は恐る恐る鏡を見る。
見た後、後ろから攻撃されるんじゃ? とか思ったが……そんな事は無かった。
「……っ! こっこの人間は……」
ただし、ロアにとっての……出会いはあったが。
そう、この瞬間……ロアは鏡越しに出会ったのだ。
一目見て、好きになってしまった人間……シルク ハーベストと言う男に。
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