どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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くふふ、くふふふふ……。
怪しく笑いながら魔法を使ってるロア。
いま使ってるのは、鍵を開ける魔法だ。
不法侵入だが、そんなのお構い無しに指先から怪しい淡い光を放ち鍵を解除している。

そうしてる内に、カチャリ……と音がなる。
どうやら解錠に成功したようだ。

「よぅし。開いたのじゃ」

ボソボソと呟いて、ゆっくりと窓を開ける。
ここで音を立ててはいけない、だから慎重にゆっくりと開ける。

キキィィ……。
と思った矢先、軋んだ音がなった! 不味いっ、そう思って直ぐ様屈んで隠れる。

しかし、なにも起きない。
不思議に思って、ちょこっと顔を出して確認してみる。

「……寝ておる」

音に気付かずに、すやすやと寝ている。
まぁ、小さな音だったから仕方ない。

「では、続けるかの……」

か細く息を吐いた後、再び行動を開始する。
またゆっくりと窓を開ける、充分に開いたら今度は窓に足を掛け部屋の中に侵入する。

あ、因にだが……きちんと靴は脱いでいる、不法侵入してるのに変な所だけ律儀だ。

「よぅし、侵入成功じゃ」

ほっと胸を撫で下ろし、窓を閉める。
そして、一応カーテンも閉めておく。

「で、では……行こうかのぅ」

そろりそろりと眠るシルクに近づいて行く。
決して音なんてたてないように慎重に……。
魔法を使えば良いんだが、そんな事、今のロアは考えられなかった。

「よし、近くまで来たぞ。あとは……」

だが、なんとか近付く事には成功した。
さて、これからどうするつもりだ? 観察と言っていたからこのまま見続ける……。

「では、ちょこっと触ろうかのぅ」

なんて事には当然ならず、ロアはあろうことか、ぺたんっとシルクのほっぺたに触れる。

「やっやらっこぃぃ……」

声を抑えて腰をくねくねしながら悶絶する。
そんな事をされてるのに、シルクは気付かないまま寝続ける。

「んっ……んん」
「ねっ、寝言! いま、寝言を言ったのじゃ」

ただの寝言にこの有り様である。
大声を上げない様に口に手を当ててはしゃぐ。 
もう顔なんてとろけきっている。

「くひゅっ、くひゅひゅ……」

そんでもって不気味な笑い声も出している。
ロアはもう、捕まっても文句は言えないと思う。

「……っ。んぅ?」

と、その時……シルクが小さく動いた。
その瞬間、身体をビクッ! と震わせて直ぐ様窓の方へと走っていき素早く開けて飛び出して行く。

凄まじい速業、そのお陰で気付かれる事はなかった。
だがしかしロアは焦った、そりゃもう物凄く焦った。

心臓なんてバックバク鳴ってる。

「あ、危なかった……のじゃぁ」

大分家から離れた後、立ち止まって、ぜぃ……ぜぃ……と息を切らす。

「きっ気付かれて……おらんよな?」

去るときに、うっすらと眼を開けていた気がする。
そのとき、自分の姿を見られたらと思うとヒヤヒヤする。

「くっ……まさか、起きてしまうとはのぅ。もう少し触ってたかったのじゃ」

あのむにむにで艶々の頬、触り心地が良いから、ずっと触っていたい……そう思っていたんだが、その願いは叶わなかった。

「今日はこれ位にしといた方が良いのぅ」

正直戻りたかったが、今戻るのは危険。
そう判断したロアは帰る事にした。
案外早く終わってしまった人間界旅行であった。

「ふんっふんふふんっ……」

慣れた手つきで魔方陣を描いていく。
描き終わったら、行きと同じように魔方陣の中に入って呪文を唱える。

さて、これでロアの秘密の人間界訪問は終わり。
後は魔界に戻って部屋に帰るだけ……。

「また、こっそり行こうかのぅ。くふふふふぅ」

また行くのか。
もうバレそうだから行かない、なんて考えは無く。
もう次はどうやって人間界に行こうかと考えている。

だが、それは仕方の無い事かもしれない。
今ロアは、実際にシルクを見て……更に惹かれたのだ。
だから何としても、また人間界に行くだろう。

今後のロアの動きが、ちょっぴり気になる所である。

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