どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

476

時は大幅に過ぎシルクが15歳になった。
小さかった身体は成長し、髪も伸びた。
そして、より女の子らしくなり可愛さがました男の娘になっていた、ロアも同じく成長し、綺麗な女の子になっていた。

「ほぇぇ……」

だというのに、ロアはベットにだらしなく寝そべりながら魔鏡を見る。
見てる物は勿論、シルクの様子だ。

「可愛いのぅ……あぅぅ……」

すっごく脱力している、その理由は……。

「あれから、こっそり人間界に行こうとしても邪魔が入る……わらわは会いたいだけと言うのにぃ」

ばむばむっとベッドを叩き足をバタバタさせる。
あれから監視の目が強くなって下手に動けなくなってしまったのだ。
でも人間界の様子は確認できる、だから今も見ているのだが……そんなので我慢できる筈もない。

こっちは何年も気になる相手を魔鏡越しで見てるだけ。
それ以外、人間界に関わる事はしちゃダメと来た。

ロアは人間界に行きたくて行きたくて仕方無いのだ。
何年間も我慢し続けて、もう我慢の限界、いや……もう限界を越えていた。

しかし、行動に移そうとしたらヴァームが文字通り飛んで来るので出来ない。
それが歯痒い、ずっと見てるだけなんて辛すぎる……。

「はぁぁ。しなやかな髪、可愛らしい顔。その全てを近くで見たい……」

そう思いながら、ぽぉっと顔を紅くするロア。
見れば見るほど美しい、そう思ってしまう。
しかし、それは容姿だけに限った話では無い。

「行動も良いんじゃよなぁ」

そうなのだ、シルクの一挙一行動にも惹かれる物がある。
優しく微笑んだり、かと思えば怒ったり、冷たくしてると思えば、実は心配してたり……。

どんどんどんどんロアの心を揺らめかしていた。
だから尚更行きたい気持ちが強くなっている、しかしその事を父親に話しても「心配だからダメ」の一点張り、因みに母親に話してみたら「お父さんの許可を取りなさぁい」と言われたらしい。

父親の許可が取れないから母親に貰おうと思ったのに……上手く行かない。

「あぁぁ。なぁんか、胸がモヤモヤするのぅ。なんじゃろ……この気持ち」

ごろんっと寝返りをうって天井を見てみる。
ぼへぇ……ぽけぇ……ぼぉ……。

心ここにあらず、鏡を見るのそっちのけでずっと天井を見ている。
思えばロアは、毎日欠かさず魔鏡でシルクの姿を見ている。

ずぅっと見ている内に、ある感情が芽生えて来た。
そんな感情はロアは気付いてはいたが、それが何なのか分かっていない。

しかし、だ。
ふと唐突に、ポツリと呟いた。

「本で読んだ事がある。胸がモヤモヤ……熱くて苦しくてドキドキする感じ、これは……恋してる、と言う奴かの?」

それを言ったあと、黙りこくって暫くそのまま停止。
……そして何秒か経った後、急にロアの顔が真っ赤になり、ガバッ! と起き上がる。

「なっなにを言っとるんじゃわらわは! はずかしっ」

たった今気付いたが、恥ずかしい独り言を言ってしまった。
こんなの誰かに聞かれてたらと思うと……恥ずかし過ぎて震えてくる。

そんな恥ずかしさに襲われつつ、ロアは顔半分を手で覆い、じとっと熱い視線で魔鏡を見つめる。

「恋……のぅ。わらわが、恋……してしまったのか」

そうだと分かって初めて、一瞬だけ心のモヤモヤが晴れた。
だけど、直ぐにまたモヤモヤが襲ってくる。
なんでかは分かった、会いたいのだ、会って話をしたい、そして色々と知りたいのだ。

こっそり行った時は、近くで見れたが知り合ってはいない。

「うぅぅ……。わらわがこんなになるとは。おっ可笑しくなってしまったのじゃぁ」

こうなったのも全てはシルクを見てから、 真っ赤になって恥じらうロアは思う。
なんとしてでもシルクに会いたい。
だから、直ぐ様考えた。
今度は悪巧みではなく真剣に怒られない方法を……。

「頼み込むしかぁ……ないのぅ」

ポツリと呟いた後、ロアはベッドから降り部屋から出ていく。
良い方法が思い浮かんだらしい、真剣な眼をして歩いていくロア、向かう先は。

「父上は話せばきっと許してくれる筈じゃ……。いや、許してくれるまで言ってやる」

父の所。
真っ向から話をすると決めたのだ、凄い覚悟である……。

「わらわはどうしても会いたい、会って話がしたい。そうでなければ……真にどんな奴か分からんからな」

緊張しているのか、堅い足取り、表情もなんとなくカタい……。
そんな顔をバシッ! と叩いて気合いを入れる。

「じゃから、何としても許して貰わねば。最悪暴れてでも許して貰うのじゃ」

ちょろっと物騒な事を言いつつ、歩みを進める。
自分が今思ってる気持ちを伝えよう……そう心に何度も問いかけながら、ロアはやる気を奮い立たせた。

「……まぁあれじゃ。気合い入れていこうかの」

最後にそれだけいって、その後……ロアは父の部屋に着くまで一言も喋らなかった。

しかし、その真剣な眼は強く語っていた。
絶対に許しを貰ってやる! と。

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