どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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シルクを探して随分経ったなぁと思う今日この頃……少し日が落ち始め薄暗くなった時、私は霧が濃い村にいた、言っちゃ悪いけどあまり栄えていない村だ、なんか寂れてるし家もオンボロだ、でもそんな村に旅商人さんがいた、好都合なのでお金を稼ぐために私は物を売る事にした。

「お嬢さん……本当に良いんだね?」
「うん構わない……」

此所に旅商人さんがいてくれて助かった、村の一角に野菜、雑貨といった商品を並べ店を構えている、どうやら客が物を持ってきたら換金可能なお店だったので好都合だ。
それにしてもシルクを探して暫く経つけど随分遠くまで来てしまったかも。

「ほっ本当に良いんだね?」
「うん、良いよ……」

でも徒歩だから初めの街からそんなに離れていないと思う……しかしこの村本当に霧が濃い、目を凝らさないと前が見えない位だ。

「本当に本っ当に良いんだね?」
「しつこい……」

さっきからこの太った商人は何なんだ? 売っても良いと言ってるのに……しつこく聞いて来ないでよ。

「いっいや……そうは言ってもねぇ」

商人は私が売りたい物を手に持ったまま、まじまじ見つめ呻く……何をそんなに気にしてるんだろう?

「これ、家紋が刻印されてるからねぇ……かなり大切な物じゃないのかい?」

あぁ……そう言う事か、私が売りたい物は剣と鎧だ、これは私が所持した物だけど……そろそろお金が欲しくなって来たので売る事にした、だってずっと猪や熊の肉を食べてたけど流石に飽きた……今私は野菜に餓えている、これを売れば買えるだろう……あと服とか色々買うつもり。

「気にしないで良い……」
「いや、そうは言うけどねぇ……」

まだ渋い顔の商人……あぁもう! イライラするなぁ……。

「早くしてよ!」
「わっ分かった!でっでもそんなに金は渡せないぞ? 俺は旅商人だからそんなに持っていないんだ」
「ん、だったら物々交換で良いよ……」

渋々だが商人の人はやっと分かってくれた、中々の高級品で旅商人ではお金には変えられないみたい……流石は家宝だ半端無い、それにしてもささっと売り買いすれば良いのに……なんでそんなに渋ったのかな?

「この服頂戴」

とまぁ、そんな事は胸の内にしまっておいて早速物々交換をスタートだ、鎧を脱げば薄着の黒い服とボトムス、これでも良いんだけど、そろそろ着替えたいので服を何着か買っておこう。

「まっまいど!」

此処は素早く対応してくれた商人……むぅ、この速さを最初に見たかったなぁ。

「じゃ、はい……」

商人との物々交換を済ませたときだ、あっ……お腹も空いてきたし野菜も買っておこうかと思い早速買おうとしたその時!

「っ!」

全身鎧の人が3人村を彷徨うろついてるのが見えた……あの鎧には見覚えがある、私の家の兵士の鎧だ!

「くっ!」

私は買った服を両手で掴みその人達から離れる、此処まで捜索の範囲を拡げているなんて……お父さんはどうしても私を家に連れ戻したいみたいだ。

「でも私は捕まらない……」

捕まってなるものか! 取り敢えず此処は村を離れよう……確か近くに森があった筈、隠れるのには丁度良い……そこに逃げ込もう!


「此処まで来れば安心……かな?」

走って森の奥までやって来た、もう森の中は真っ暗……私は夜目が聞くので大体周りが見える、だから大丈夫なんだけど……獣のうめき声が聞こえる、野菜も買えなかったし今日もご飯は野生のお肉か……あぅぅ、飽きたのになぁ。

「久し振りにシルクの特製の味が薄いスープが飲みたい」

あの微妙な味の薄さが癖になる……そう考えたら飲みたくなって来ちゃった。

「それとシルクの作った微妙に美味しい野菜炒めが食べたい……」

私は良くシルクの家に厄介になっている、家出してるからご飯が食べられない時が多いからだ、そこで食べた野菜炒めの味を思い出してしまった。
すると、ぐぅぅっーーとお腹が鳴った、はぁ……仕様がない今回も野生のお肉を食べよう……あっ! 

「剣が無いから……獣が狩れない!」

なんと言う事だ……こんな事全く気が付かなかった、私はどんな刃物でも獣を狩る自信はあるけど……流石に素手では無理だ。

「村には戻れない……どうしよう、困った」

……はっ! だから商人は渋っていたのか! 剣を売ると獣が狩れなくなって困るぞ!と言う事を暗示していたのか! だったらそう言えば良いのに……あの商人めぇ許すまじ。

「いや……怒ってる場合じゃない」

そうだ今は怒ってる場合ではない、どうしようか……お腹が空いたら何にも出来なくなってしまう。

「……こうなったら」

私はよーく考えた……その結果生まれた答えは……。

「寝る……お休みなさい」

動かずに就寝することだ、そのまま地べたにぐてぇと寝そべる……あぁ、大地の香りが心地良い、夜の森だから獣とか来る可能性があるけど……まぁ大丈夫、その時は気配で飛び起きて対処は出来る、だから寝る……安心して寝よう。

「こんな時、シルクなら家に連れてってくれるんだけど……」

寝付こうとした時、そんな事を考えてしまう、家出をし始めた時、外で寝ていたらシルクがやって来て「風邪引かれたら困るから家に来ないか?」と恥ずかしがりながら言ってくれた……とっても嬉しかった、その時シルクがベットを貸してくれて寝させて貰った……とっても良い香りだった、お礼にごろごろ寝返りをしまくって私の香りをたっぷり付けてあげた、シルク、喜んでくれたかな?

「……会いたい、会いたいよ」

目から涙が溢れてくる……もう、何処に行ったの? 本当に誘拐されちゃったの? シルクが誰かに取られちゃった? 嫌だ……そんなの絶対に駄目だ!

「寝てる場合じゃない!」

私は飛び起きた! いてもたっても居られなかったから……待っててシルク、私が必ず見付けてあげるからね! そう決心しながら夜の森の中を走って行く、最愛の人を探す為に……。

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