どうやら魔王は俺と結婚したいらしい

わいず

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「で、何でお主は此所にいるんじゃ?ヴァームに連れていかれたのではないのかえ?」
「逃げてきたに決まってるだろ?」

思う存分ラキュを叩いたわらわは冷たい視線で睨む、今わらわとラキュは椅子に腰掛けて向かい合っている、さてラキュにはここに来た理由を聞かねばならん……その理由によってはわらわはまた鉄拳を飛ばさなければいけないのじゃ。
ラキュは着ている探偵服を正し頬を擦る……何か痛そうにしているが、わらわにはまっったく心当たりが無いのじゃ、きっと転んで怪我でもしたのじゃろう。

「逃げるのは大変だったよ……普通に逃げたんじゃまた捕まるから色々してきたんだよ?」

やれやれ本当大変だったよ、と小声で言った後ため息をつくラキュ……今度はお腹を擦っているのじゃ、表情が苦痛で歪んでいる……腹痛かの?早くトイレに行った方が良いのではないかえ?

「で、逃げる先を考えたんだけどさ……シルク君の所へ行こうと思ったんだよ、あっ! 別に仕返しに行こうとした訳じゃ無いんだよ?」

そう言いながら身ぶり手振りを加えながら話す、時折腰を押さえたり肩を押さえたりしてる……節々が痛いのか? そんな歳でも無いだろうに……大変じゃのぉ。

「ただ謝りにいこうと思ったんだよ、今回のは少しやり過ぎかなぁ? って思ってね……でも会うのが気まずくてさ」
「だからわらわの部屋に来たと?」

「その通りだよ」と頷きながら答えるラキュ……成る程、此所に来た理由は分かった、じゃがわらわはまだ聞きたい事がある。

「では何故布団を捲った? 寝ているとは思わなかったのかえ?」

それを聞くとラキュは「あぁ…」と呟き考える仕草を取る。

「えっと、それは姉上何時もならこの時間だと寝ないからさ……気になったんだ」
「それにしても布団を掛けて横になってたんじゃ、そっとしておいても良かったんじゃろう」

ラキュの言い分はごもっともだが言わせて貰うのじゃ、こいつには気遣いと言う物が足りん。

「そうなんだけどさ、布団がもごもご動いてるし、ベットの側には服が散乱してるし、あっ甘い声が聞こえたし……」
「ほぉ、だから気になって捲って見たと?」

わらわの言葉を聞いたラキュは、にこっと微笑む、曇りの無い輝かしい笑顔じゃ。

「そうなんだよ、誰だって気になるよね? そっそしたら姉上がオナ……」
「ラキュよ」

よし、大体理解した……わらわは立ち上がり右腕を軽く回す、そしてその場で小さく数回跳び準備運動をする。

「あっ姉上?」

笑顔のまま焦りを見せるラキュ……こいつは変な事を言っている、実在していなかった事をペラペラと喋っている……此処は姉として弟を助けてやらねばならん。

「歯を食いしばれ」
「ちょっ何で殴ろうとするのさ! あっあれは姉上があんな時間にオ」

おっとそれ以上は言わせない、わらわは右手を強く握り締め腕を振り上げる、そしてその腕をラキュの顔面に思い切り降り下ろした!

「がばふっ!」

鈍い打撃音と共にラキュがまた壁へと吹っ飛んで行く。

「おいラキュお前が見たのは夢じゃ、だからそんな事実は無かった……いな?」
「はっは……い……わかり…まし……た」

途切れ途切れに喋りながらラキュは力なく倒れる、短時間に2回も倒れるとはある意味忙しいやつじゃの。

「ではラキュ、何時までもそこで倒れてないでこっちに来んか、わらわの話し相手をしてくやれ」

それを聞いたラキュは横を向き「この暴力魔王……」と小さな声で呟く、まぁこれは聞き逃してやるとするのじゃ! 何度も弟を殴り飛ばす程わらわは荒くれておらんからな。

「分かったよ…」

暗い顔をしながら渋々立ち上がりわらわの方へやって来て椅子に座る、さてわらわも座るとしよう。

「で?話って何をするのさ」
「うーむ……何も思い付かぬからラキュが話題を降ってくやれ」
「会話を持ち掛けてそれなの?」

これで何度目のため息だろうか……ラキュは呆れながらも話題を考える、ラキュは憎まれ口を叩く割りには素直な所があるのじゃ、何時も素直にいれば良いのに……変な奴じゃ。

「ねぇ姉上、話題って何でも良いの?」
「んー……まぁ、それは話によるのぅ」

「そう……」と呟いた後、ラキュは真剣な目でわらわを見てくる、なっなんじゃ? いつに無く真剣な顔をして……変な物でも食べてしまったのかの? っと、それは鬼騎に失礼と言う物か……すまぬ。

「じゃぁさ……聞いて言いかな?」
「ん、何をじゃ?」

ラキュはわらわに指差して少し笑った表情を見せる……急に場がぴりぴりしてきおった、ラキュはわらわに何を聞くつもりなのじゃ?

「辛くない?」
「……ほえ?」

いっ意味が分からない……辛くないじゃと? わらわの体調はすこぶる良いのじゃが……そう言う事を聞いておるのか?

「ごめん……言葉が足らなかった」
「うっうむ、気にするでない」

じゃろうな……あれだと意味が分からないのじゃ、こほんっ! と咳払いした後ラキュは次の言葉を喋る。

「シルク君が気付くのを黙ってじっと待ってるのって……辛くない?」

その言葉を聞いた瞬間、わらわは一瞬固まってしまう、じゃが直ぐに笑みを浮かべて言い返す。

「成る程、聞きたいのはその事か……変に固くなりおって何事かと思ったのじゃ」
「だって気になるじゃないか……」

気になる……か。

「それは弟としてかえ?」
「姉上、真剣に聞いてるんだから茶化さないでよ」

くふふ、まさかラキュがこんな事を聞いて来るとはのぅ……ふむ、これは姉を心配する弟の心境と言う奴か?

「良いだろう答えを話してやるのじゃ、話に付き合って貰うぞ?」
「うん、納得するまで聞かせて貰うよ……」

わらわとラキュはお互いに笑みを浮かべて「くふふ……」と笑い合う、さぁ……わらわの今の気持ちを弟に話すとするかの。

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